【EPUB有料連載リンク】第29回 読者が選ぶ蘭花賞と玉ネギ賞5−AppleTVに蘭花賞

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、昨年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

3月コラムから

読者が選ぶ蘭花賞と玉ネギ賞5−AppleTVに蘭花賞

●蘭花賞

 AppleTVに蘭の芽を。第2世代のAppleTVは私の希望をほぼすべて満たしています。ポテンシャルは非常に高いのですが、まだ完成してはいません。100万台以上売れたので、おもちゃではありません。ソフトウェアのちょっとした欠陥が修正されれば、トレンドの流れを変える製品になる可能性があります。一番遅れているのはコンテンツです。私はFoxNewsを定期契約で視聴できるようになって、野球とホッケーの試合を見られるようになったら、ケーブル・テレビは全部やめるつもりです。

Apple Trackpad-人間工学に関する蘭花賞

 これは今年、私にとってライフセーバーになっています。右側の腕と肩全体が、そこの姿勢と繰り返し同じ動きをするために神経痛になっています。トラックパッドで、肩や手首を動かさずに、私のシステムを完全にコントロールできます。体の不自由な人がエルゴノミクスの恩恵を受けるまれな例です。マウスより断然すぐれています(Apple(アップル)に本物のMac用人間工学キーボードがあればいいのに!)。

Verizon MiFi-玉ネギ賞。

 とてもよくできたハードウェアですが、Verizonのソフトウェアにはいくつか重大な問題があります。USBで充電している時はモバイル・ホット・スポットとして使えず、テザー・モデムとして使わなければなりません。つまり、充電しながらWi-Fiを使いたいなら、専用のA/Cアダプタを持ち歩かなければならないということです。

よろしく、

Doug

 私はもっと気前よくApple TV 2に対してAppleに蘭花賞を贈りたいと思う。今私がしなければならないのは、いつもテレビを見る部屋に高性能のEthernet Cat 5か6の線を引くことだ。混沌の館は古い家で、つまずかないように配線するのは言うほど簡単ではない。私はそれができたかもしれないが、このコラムの遅れぶりを見れば現実を理解してもらえると思う。

 私は、Appleのトラックパッドを使った経験がない。私は、Microsoft(マイクロソフト)のマウスでAppleのコンピューターをコントロールしている。

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

電子書籍と編集者

 先日、あるジャンルの作家たちが立ち上げたネットマガジンに関するパネルディスカッションを聞く機会がありました。作家たちが新しいサイトを立ち上げて、そのジャンルの作品を紹介していこうという試みです。パネリストはそのサイトの運営作家、編集者、評論家でした。

 そのサイトはまだできたばかりで、電子書籍を制作して販売するところまでは現時点では考えていないようです。そのジャンルの有名作家に短編を書いてもらい、公開を始めています。運営している作家たちがサイト運営の技術的な問題に苦労していることや、無料公開することへの抵抗などを語っていました。私がやってきたことによく似ているので、聞いていて身につまされる思いでした。

 このサイト運営を行っている作家の方たちが問題点の一つとして挙げたのが、編集作業です。寄稿作品の編集作業を作家たちが担当しているそうですが、あまりにも大変なので、運営作家の一人が「編集をやるなら、小説を書くのを止めなければならないと思った」と語っていました。

 私が翻訳を販売しているコラムの原著者パーネル氏の本業はSF作家です。数か月前のコラムに本の編集についてのトピックがありました。ミリオンセラーを出したパーネル氏が、編集者というのは単なる誤字、脱字のチェックにとどまらず、作品のプロットを提案したり、ストーリーに齟齬がないかチェックしたりする役割も果たしていると説明したうえで、「最終的な決断を作家が下してうまくいかなかった例は多い」と述べて、編集者の存在の重要性を説いていたのが印象的でした。

 この新しいサイトの運営作家の方たちは校閲だけでなく、一つの言葉の使い方にまでこだわって編集作業をしておられるようなので、大変だろうと思います。

 私がこの計画を考え始めた時、非常に悩んだことの一つが編集者がいない状態で、原稿を一人で完成させなければならないということです。細心の注意を払っても何かミスをすることはありますし、翻訳者として、これまでは編集者がいるのが当たり前で、安心して仕事をしていました。ある出版社が刊行した本だということは、編集者が関与して制作した、きちんとした商品という保証がなされることだと私は考えていました。今もそう考えています。個人の刊行物では信用してもらえないのではないかと不安でした。

 実は、私は編集者を雇うことはできないかと考えました。心当たりもありました。昔お世話になった方で、英文を読み、翻訳文の編集ができる編集者です。しかし、それをやろうとすると、かなり高額の報酬を支払わなければなりません。パーネル氏へ支払うロイヤリティまで出来高払いで了解していただいてしまった私には、払い続けることができません。結局これは断念しました。

 ディスカッションの後の会合で、私が一人で電子書籍を制作して販売しているというので、どういうやり方をしているか尋ねられました。校閲については校閲ソフトを買って使っています。個人でも買える安価なパッケージですが、Wordについている校閲機能よりも細かいチェックができると思います。

 翻訳文については、このコラムが出版社の雑誌に掲載されていた時は、量が多かったこともあって、かなり編集されて、削減されていました。しかしサイト掲載時には、納品した翻訳文がほぼそのまま掲載されていたため、今までとほぼ同じ品質のものを提供できると考えました。何人かに公開前に読んでもらうようにもしています。それでも私は今も編集者がいてくれればという思いがあります。

 欧米では今、著作者と編集者の関係が徐々に変わってきています。有名な作家が出版社を通さずに自己出版を始めたり、売れている自己出版の作家が自分で編集者を雇ったりするケースが出てきています。一方で、自己出版で成功した作家が、出版社と契約するケースも出現しました。編集とマーケティングを編集者・出版社に担当してもらって、自分は執筆だけに集中できるのが魅力のようです。

 日本でもこれからは、電子書籍、紙書籍を問わず、今までとは違う本の作り方が生まれてくるかもしれません。著作者自身が執筆だけでなく、いろいろなことを自分でやらなければならなくなる可能性もあります。それでも、商品として販売する以上、売り物に値する品質を保証する何らかの方法はこれからも必要だと思います。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト( http://www.sciencereadings.com/

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