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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。
いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、昨年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。
業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部
1月コラムから
CESで得た結論
私は、二つの総合的な結論を得てCESから戻った。一つの結論は読者よりも私にとって興味深いものだ。
第1の結論は、誰もがプレスになったら、誰もプレスではなくなる。
ショーのスタッフは、それを十分理解している。その理屈は、5000人のブロガーがWebであれこれ発信する方が、数百人の技術関連プレスとあと数百人のメディア関係者だけにプレスバッジを配布するよりも有効だというものだ。ブロガーは批判的なことは言わない。ブロガーは何かブログに書くものを探していて、それが発信される。そして、それこそがショーのPR担当者の狙いだ。書くことが欲しければ、探しださなければならない。
これはよいことなのかもしれない。それは、誰もが躍起にならなければならないということだ。そうしなければ、我々は書くことを手に入れることができない。私は、CESに関するよい記事がいくつかあったと思っている。その多くは昔ながらの、地道で熱心な努力によるものだ。もちろん、それは私が書くような記事ではない。私は経験に基づいて、考察的で、情報に富んでいて、解説的な記事を書く。こういった記事はなかなか読むことができない。なぜなら、展示スタッフの時間はすべて、身分証を持っている無数のプレスのために費やされていて、それらのプレスの多くはショーに来るのは生まれて初めてだ。
確かに、あらゆるものが前よりよくなっていると指摘しておく。展示場にいるスタッフは、ほぼ全員以前より優秀で、仕事も良好にこなしているように見える。家電製品(コンピューターとカメラは急速に家電製品化している)はより速く、より小さく、より消費電力が減少している。どれも以前よりすっきりとして、扱いやすくなっている。ばかげたコンセプトの製品もあるが、今後可能になると主張していることを、実際にできるという点ではよい製品だ。昔、我々が驚異的だと思ったことが、今は当たり前で、それはすべてちゃんと動く。このことは、カメラ、テレビ、モニター、メモリー、ディスクドライブ、携帯電話、ポケット・コンピューター、タブレット、ラップトップ、さらにネットブックのように時代遅れになったものにおいてさえ、真実だ。すべてちゃんと動く。どれも十分によい。このことが私を第2の結論ヘと導いた。つまり、
あらゆるものが十分によくなったら、もっとよいものを探すのは骨が折れる。そしてもっとよいというのは、思い付きとか好みで判断されることが多い。
【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/ 】
電子書籍のイベント
10月に入って、少し落ち着いてきたころ、ある電子書籍関連の団体を知りました。私と同じようなことをしている人がいるかもしれないと思って、問い合わせてみました。
茶話会があるというので参加して、iPadでコラムを見せたところ、技術者の方々もいて、パーネル氏のこともご存じでした。
11月に電子書籍のフリーマーケットを開催するので、コラムの抜粋版を作って販売したらどうかと提案してくださいました。前回同じようなフリーマーケットを開催した時は100円ぐらいの電子書籍はよく売れたということでした。
作家や漫画家や写真家などの作品をEPUBにして対面販売するということでした。その場で電子書籍が受け取れるのではなく、購入者にアドレスを登録してもらって、サーバーから送信するということでした。
過去のコラムから電子書籍関連のトピックを中心に抜粋して、EPUBファイルを作りました。EPUBを作るためのマニュアルが送られてきましたが、私はすでに作っていたので、それをサーバーに入れられないかテストしてもらったところ、そのまま使えることになりました。この頃はまだ自分でEPUBを作るというのは珍しかったようです。見本誌やビラを作ると効果的だと言われたので、抜粋集をプリントして紙版を作りました。簡単なチラシも用意して、価格は100円にしました。
当日は、意外なことに、特殊な主題の電子書籍であるにもかかわらず、直接チラシを渡した人や、質問をされて私が答えた人はけっこう買ってくださいました。紙版を見て面白かったから買いますという方もいました。
私は、電子書籍はオンラインで売るものと頭から決め込んでいました。しかし、読み物を探している人が訪れる書店の実店舗や図書館などで、電子書籍端末に入れた実物や紙版を見せたり、書店員や司書が説明をして紹介できたら、販売面でも効果があるのではないかと思いました。これだけたくさん電子書籍があると、読者がその中から読みたい本を探すのも大変ですが、本の作り手、特に個人が自分の本を広く知ってもらうのも、非常に難しいことです。
どんなに良い本でも、知ってもらえなければ、買ってもらえません。逆に、興味に合う本を見つけた場合は、迷うことなく購入されるように思います。これはこのコラムを販売していて最近感じることです。n
問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/