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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。
いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。
業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部
11月コラムより
Microsoftの未来
Microsoftを分割?
Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)にこんな見出しがあった。「Microsoftの分社化はありえない」。そして11月16日にベルヴューで開かれた同社の株主総会での、挑戦的な顔つきのSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)の写真が掲載されていた。
Microsoftは収益性の高い企業だ。多額の配当はしないが、実際に儲けている。この会社を分社化したいなどと誰が考えるだろう?もちろん、司法省は数年前にそう考えた。しかし、それはBill Gates(ビル・ゲイツ)がワシントンのルールに従わなかったことが一因だった。Microsoftの反トラスト訴訟事件の前は、Microsoftのワシントン支所の仕事は、セールスとサービスに限られていた。ロビイストはいなかった。Microsoft は、政治家連中や米国の議会スタッフのために、無料の食事とアルコールを出す大きなイベントを開催しなかった。全米屈指の大企業の一つでありながら、ワシントンでは存在感がなかった。
反トラスト訴訟でそれが変わった。Microsoftは、今はワシントンで存在感を持っている。競合力もあるが、ロビー活動が、何よりも司法省の関心をそらすためのものだったと考える人もいる。
しかし、今度は株主が動き始めた。Wall Street Journalにこう書かれていた。「株主が怒っているのは、MicrosoftがWindows 7オペレーティング・システムが記録的な売り上げを達成したのに、株価を上げることができないため、ウォール街が同社を再調査しているからだ。Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のアナリストは先月、(Microsoftは)コンシューマー向けビジネスを分離すれば、隠れている価値を生かすことができるだろう、と指摘した」。
【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/ 】
EPUBで変わる本の未来
私がEPUBを初めて知ったのは、数か月前、このコラムの電子書籍関連のトピックでとりあげられた時でした。電子書籍のファイル・フォーマットという程度の認識しかなく、個人が制作できるなどとは思ってもいませんでした。
製作者の説明では、EPUBはHTMLに非常に似ているので、Web制作の知識があれば、きわめて簡単に作れるということでした。EPUBは本来、文章主体の本を作るためのもので、画像がたくさん入っていたり、リンクが多いものは、制作も煩雑で、EPUBには適さないということでした。写真を楽しみたければ、スライドショーなどの他の機能の方が適しているようです。iPadが登場して、その電子書籍ビューワ-であるiBooksがEPUB対応ということで、にわかに脚光を浴び始めたようでした。
こういったことを私はこの時初めて知りました。
たまたまこのコラムは雑誌掲載時から横書きで、画像はほとんどありません。製作者は最初、PDFをEPUBに変換するソフトが使えると考えたところ、うまく変換されないので、最初からSigilを使うことにしたという説明でした。
今はEPUB制作の解説書がいろいろ出ていますが、ほんの数か月前のこのころはあらゆることが手さぐりでした。私の手元にはまだiPadが届いていなかったので、動作確認もすべて製作者に任せることになりました。
サンプル版の表紙にはパーネル氏の写真が使われていましたが、有料版を作るときに、サイトのトップページを作るときに買った画像で新しく青い表紙を制作してくださいました。電子書籍を作る場合、表紙の画像が必要になります。商用利用できる画像を購入して、画像処理ソフトで表題などを入れて制作しなければなりません。このころはそこまで思い至りませんでしたが、後になって費用のことも含めて頭の痛い問題になりました。
個人でやるだけに不備だらけだったと思いますが、iPadで電子書籍を読めるなら、多くの人に体験してほしいと思いました。Appleストアで絵本を見たときは、書籍というよりもゲームに近いと思ったのですが、iPodで初めてこのコラムを読んだとき、これからは文章主体の本もこういった形で読まれるようになっていくのだと実感したからです。
私は今まで翻訳をするだけで、制作や販売のことなど全く考える必要がありませんでした。しかし、翻訳という私自身の仕事も含めて、本にまつわるすべてのこと、そしてその未来が大きく変わろうとしていると感じ始めていました。n
問合せ先:新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/