【EPUB有料連載リンク】第6回 Francis Hamitの個人電子書籍出版レポート– ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

9月メールバッグ(パーネル氏が購読者からの投書にコメントするコーナー)より

Francis Hamitの個人電子書籍出版レポート

拝啓、Jerry。

 個人電子書籍出版についての最新レポートを送ります。我々Brass Cannon Books(訳注:作家Francis Hamitの個人電子書籍出版社)の戦略はこのように発展しています。我々は今、Kindleを一種のベータ・テスト用プラットフォームとして利用しています。Kindleソフトウェアは、PC、iPad、Androidその他のプラットフォームで利用できるようになったので、潜在的顧客の数を数百万人まで増やすことができます。私は、Amazonが主張するKindleの宣伝文句を信用していませんでしたが、新モデルの小売価格と信頼性によって、真のコンシューマ製品になったと思います。クリスマスごろには99.00ドルまで再値下げして、実店舗で売られるようになるでしょう。

 私のような個人出版社の場合、問題になるのがフォーマットです。私がSmashwords(訳注:米国の電子書籍出版サイト)を使うのを止めたのはそれが理由でした。ここは、簡単に電子書籍が作れると言っているのですが、時間がかかりすぎますし、私がやるには作業が難しすぎるのです。次に、本のカバーの問題がありました。Smashwordsで広く配布するには、カバーが必要です。Kindle本の場合は、必要ありません。本のカバーは重要なマーケティング・ツールですが、自分がアーティストでない場合、人を雇って作らせることになりますし、その金額に見合う価値がないこともあります。「The Shenandoah Spy」のカバーは2000ドル以上かかりました。実店舗の書店で売るためにデザインされたものです。表紙が見えるように陳列されたら、お客が本を手にとって見て、売れるかもしれないからです。顧客に本を手に取らせることができれば、売れたも同然です。この点については、ソーシャル・サイエンスの研究結果があります。電子書籍の場合、カバーが競争上有利に働くということはありません。しかし、他の人がカバーをつけていたら、自分もつけなければなりません。

 しかし、物理的な実体のない電子書籍の場合、このソーシャル・サイエンスの研究結果は当てはまるのでしょうか?誰にも分かりません。それに、印刷体のハードカバーや大型ペーパーバックでは有効なカバーのイメージは72dpiのサムネールになると見えなくなってしまいます。電子書籍の戦略はまったく違います。電子書籍のフォーマット用にデザインしなければなりません。それも、もっと低コストで。私は2004年から電子書籍出版しているので、電子書籍が飛ぶように売れるということはないと断言できます。私のタイトルを調べれば、昔の雑誌の記事を1本、あるいは数本まとめたものだと分かるでしょう。あなたが再出版したいと考えているような本です。希望はありますよ。あなたは私よりはるかに有名なので、私の電子書籍よりたくさん売れるでしょう。自分で、これはよく売るだろうと思ったタイトルもあるのです。ロック・スターとスタートレックに関する記事なのですが、他のものと同様、あまり売れません。

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

版権料に悩む

 パーネル氏のコラムには、月額数千ドルの翻訳版権料が支払われていました。

 25年ほど前、日本でも小型コンピューターの専門雑誌がいくつも創刊されました。インターネットがない時代、小型コンピューターに興味のある人は、皆そういう雑誌を買いました。広告も独占的にとれていました。

 今と同様、米国の動向は非常に注目されていたため、米国誌の記事を買って掲載するところが出てきて、奪い合いになっていました。

 私自身、ある媒体から受託していた記事翻訳の仕事の翻訳版権が別の出版社にとられてしまい、仕事を失ったことがありました。

 当初、これまでほどではなくても、月々一定の金額を支払わないと、掲載の許諾が得られないと考えていました。しかし、計算してみると、私の翻訳作業はタダ働きでも、今までの金額と、諸経費をカバーするだけでも、数百人単位の購読者が必要でした。思うように購読者が集まらなかった場合、個人でやる私の場合、支払いを続けられなくなる恐れがありました。預金通帳をにらみながら、考えていました。

 そのころ、もうiPadや電子書籍が話題になり始めていました。「デジタルコンテンツを買う」というトレンドが立ちあがって、定着するまで、しばらく持ちこたえられないだろうか・・・。

 一度「一定額を払います」と書いたメールの下書きを削除して、書きなおしました。

 「私が収納した購読料の10%を版権料として支払うのではいかがでしょうか?」

 10%と言う数字はもちろん、こういうやり方があるのかどうかすら分かりませんでしたが、
持ち出しにならないようにしなければ、続けていかれないと思いました。
 
 4月半ばになって、最後のコラムが送られてくる日が近づいていました。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト( http://bit.ly/bkQ2nN

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