【EPUB有料連載リンク】第4回 違法コピーで電子書籍を制作? — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

9月コラムより

違法コピーで電子書籍を制作?

 古い作品を電子化する上での大きな問題は、本の電子版を持っている人がほとんどいないことだ。それらをスキャンして編集するには高額の費用がかかる。恐ろしく高いわけではないが、かなりのコストだ。さらに、スキャナーで読み込むために、通常は印刷体の本を裁断しなければならない。何回かスキャンして比較すれば、印刷体と同じと判断できるコピーができる。もちろん、ハードコピーには必ずいくつか誤字があるだろう。だから、著者はKindleやiTunes用に変換する前に、最後のチェックをすべきだろう。修正したいという誘惑に駆られるかもしれない。私には分からない。しかし、著者が新しく前書きを書いた「改訂版」の方が、よく売れるのではないかと思う。

 Norman SpinradはAmazonとiTunesで出版できることを発見して、どのようにして自分の本のきれいなコピーが違法コピーサイトにあるのを見つけたか語っている。(訳注:Spinradは自分の本をKindle出版しようとして、電子化できずに困っていたところ、Webに違法コピーがあるのでそれを利用するよう教えられた。Webを検索したところ、無料の電子版のコピーを作って配布するのは著者と読者の両方にとって有益な公共奉仕と考える人々が、コピーを作っていた。彼はそれを使ってKindle本を作った)。Eric Flintは、著作権侵害者は有害である場合より、有用な場合が多いとよく言っていた。多くの著作者が反対した。しかし、これは違法コピーが役にたつ場合があることをはっきり示す一例だ。Normanの場合、違法コピーを作った人々は、印刷体の彼の本を読みたかったので、奉仕活動と思ってこんなことをした。そして、高品質のスキャンをするよう心がけた。違法コピーされた本の多くは、ひどい状態で、とても読めたものではない。

 一方、 Eric PobirsとPeter Glaskowskyは、私のフィクションといくつかのノンフィクションのきれいなコピーを一生懸命探してくれている。私はそれらを読んで、その間に、Kindleで出版できるものを探すつもりだ・・・

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

原著者と翻訳版権

 本や雑誌記事を翻訳して、販売する場合は、原著者の許諾を得て、翻訳版権料を支払わなければなりません。

 本の場合は、出版社が版権取得を代行するエージェントを利用することが多いようですが、雑誌の場合は、個々の出版社が直接、版権を所有している海外の出版社や著作者と契約する場合もあります。

 このコラムの場合、パーネル氏の個人サイトに掲載されていますが、版権契約がどのような形で結ばれているのか、私は知りませんでした。Webサイトへの掲載が終了しても、同氏の著作物を他の形で利用するなどの契約が続いていれば、私がコラムを引き継ぐことはできません。パーネル氏が代理人を持っている場合は、代理人との交渉になる可能性があります。そうなると、個人で交渉するのは、難しいように思えました。

 3月の半ば過ぎになって、2月コラムの翻訳原稿の締め切りが来ました。原稿を送る時に、担当の編集者の方に、このコラムを別な形で続けられないか考えていることを知らせて、版権契約などのご相談に伺いたいとお願いしました。

 編集者の方は、社内で確認をしてくださっていて、パーネル氏個人と契約していたが、それはここで終了するとのことでした。私が、私個人でパーネル氏から許諾を得て、版権料を支払って、有料制でコラムを継続したいと考えていることをお話ししたところ、了解してくださった上、「熱心な読者のいる良質のコラムなので、購読者を得られるのではないかと思う」とのご意見でした。さらに、4月半ばに最後の4月コラムの受領メールをパーネル氏に送る時に、私を紹介してくださるとのことでした。

 私がその時点で考えていたやり方や、購読料についてお話ししたところ、いろいろアドバイスをいただけて、ずっと一人で考えていたことが、少し形になってきたように思えました。

 私はこちらの出版社には20年もお世話になっていて、翻訳書も数冊ださせていただいています。大勢の編集者の方に、翻訳者として育てていただいたと思っています。雑誌休刊後もこのコラムが大切に守られてきた経緯もよく知っていました。パーネル氏の許可を得て、他の媒体を探すという選択肢もありましたが、申し訳なくてできませんでした。このことが、個人でやろうと考えた理由の一つでした。

 その日から4月半ばまでの半月ほど、パーネル氏への提案の内容、特に、購読料と版権料について、考え続けていました。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト( http://www.sciencereadings.com/

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