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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。
いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。
業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部
10月コラムより
自家用ジェット搭乗記
私は昔は航空機の計器に精通していた。その頃、B52やKC135などの複数エンジンの航空機の計器はどんどん複雑になっていて、各エンジンの回転速度計、油圧計、温度計、さらに数え切れないほどのダイヤルがあったが、正常範囲内にあれば気にする必要はなかった。航空機のコントロールパネルは恐ろしく複雑になった。あまりにも複雑なので、機器のレイアウト設計者はパイロットが正常な飛行を行うのに必要な計器に注意を払えるよう、高度計、上昇速度、姿勢表示器などの配置をじっくりと考えた。異常が生じた場合だけ必要になる計器に気をとられないようにするためだ。私は、二次計器の多くが自動化されて、一部は警告ランプになっているといるだろうと予想していた。現代の最先端の自動車のナビゲーション・スクリーンを見たことがあるので、当然最新の航空機にはもっと精巧な3Dナビゲーション・ディスプレイがあると思っていた。
実に意外だったのだが、メイン・コントロールパネルには計器がまったくなかった。一つもない。パネル・ディスプレイはコンピューターのスクリーンだ。実際には、複数のコンピューター・スクリーンがあって、操縦席に一つずつセントラル・ナビゲーションのスクリーンがあって、間に汎用ディスプレイがある。しかし、飛行機のセントラル・コンピュータが動作していない時は、通常の表示領域に計器は一つも見えない。ただのコンピューター・ディスプレイだ。最初に正面と中央の機器を見た時は、これまでと同じ計器に見えたのだが、それらはすべてコンピューターに表示されたシミュレーションだった。すべてそうなのだ。ずっと見ている必要のない温度、圧力、燃料レベルその他の情報と高度と姿勢の表示器がある。最初、私はこの飛行機の表示はコンピューターが生成しているのだと思った。
そうではないことが分かった。オートパイロット制御装置の下に機械的な姿勢表示ボールがある。安心した。これがないと、電力がなくなったら、道に迷ってしまう。機械的な対気速度と高度計もある。私が見慣れていたものとはちょっと違うが、確かにあった。機械的なバックアップは、邪魔にならない、目につかないところにある。使うことがないからだ。実際、どれもあまり使わない。最近の航空機の飛行は、フライト・コンピューターに数字を打ち込むことが主体で、機械はあまり使わなくなっている。私はだんだん分かってきた。
古い機械的な機器類は、ディスプレイの真ん中ではなく、邪魔にならないところに設置されている。実際には必要ないからだ。コンピューターが表示する高度と姿勢の情報を見て、利用する方が簡単だ。その方が便利だろう。昔の三角気圧高度計は間違えやすいと悪評が高かった。そして多くの航空機設計技師は万一に備えて、別の(つまり余計な)機器も用意していた。
【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/ 】
編集者の存在
この計画を考え始めたころ、私が不安に思ったことの一つが、編集者がいない状態でコンテンツを作るということでした。
販売する電子書籍版も、いわゆる出版社が刊行したものではありません。本を購入する場合、どこの出版社の刊行物であるかは大きな判断基準です。品質保証と言ってもよいでしょう。有償提供する場合、どこまで信頼を得られるのかは重要な問題だと思いました。
このコラムは、出版社に納品した原稿がほぼそのままWebサイトに掲載されていたので、私のサイトに移っても、翻訳の品質的にはほぼ同じものが提供できます。しかし、続けている間に、問題が生じたり、修正が必要なことが起こっても、プロの編集者の判断を仰いだり、アドバイスを受けることはできません。
少なくとも私は、雑誌にしても、本にしても、Webサイトにしても、内容の編集や制作、営業面にはほとんど関与しませんでした。それらはすべて出版社が担当していました。
電子書籍の場合、コンテンツの作成だけでなく、制作、販売、販促、プロモーションの方法が今までの印刷体の本とは全く違います。今まで出版社が担当していた業務が、費用の負担を含めて著者に移行することもあるかもしれません。さらに、個人の場合、それをすべて一人でやらなければなりません。今後、電子書籍出版をサポートするさまざまなサービスが出てくると思われます。企画、制作、販促を別々の会社が担当する形が現れるかもしれません。
私は、今は、商品としての電子書籍の企画から販売まで一貫してプロデュースできる編集者のもとで、翻訳だけに注力できる環境が理想だと考えていますが、これからは著述者自身が、企画/営業にも取り組まなければならないかもしれません。n
問合せ先:新・混沌の館にて」サイト( http://www.sciencereadings.com/