イギリスの出版業界の人種・地方出身者のダイバーシティーはまだまだというアンケート結果

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 イギリスの出版社は人種雑多なロンドンに集中しているのにもかかわらず、出版社に勤めるBAME(Black, Asian and Minority Ethnicの略)の割合は11%で、ロンドン市の40%には及ばない状態であると英ガーディアン紙が伝えている。

 42団体6432人に対するアンケートを集計したところ、「だいぶ改善されてきた」とはいうものの、人種のダイバーシティーや、ロンドンでの一極集中で地方出身者がおざなりにされている状況が浮かび上がった。2017年に出版社1000社に対して行われた別の調査でも、従業者の90%が白人という数字がある。

 18世紀のヨークシャー地方を舞台にした小説でウォルター・スコット賞を受賞した小説家ベン・マイヤーは、地方格差が残る限り英文学が「どうしても中産階級とその上の人たちのものになってしまう」という。貧しい労働者階級出身を自称するケリー・ハドソンも「ここは小さい島国とはいえ、そこに確かに存在する多様性や繁雑性、そして深みを持ったイギリス文学というものを享受できていないのかもしれない」という。

 そんな中でも、北部のインディペンデント出版社が協力する Northern Fiction Alliance を立ち上げたり、ブルームズベリー社の編集者がわざわざマイヤーに会いにヨークシャーを訪れたりと変化が感じられるという。

 今回の調査では、トップの管理職では女性が54%、LGBTを公言している人も8.2%(全国平均2%)を占めていることがわかった。(ちなみにアンケート回答者の3分の2が女性)。イギリス出版社協会(Publishers Association)は2022年までにBAME従業者の割合を15%まで高めることをターゲットに設定した。

参考リンク

英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2019/jan/16/publishers-failing-to-improve-racial-and-regional-diversity-survey-finds
英Publishers Associationの行動計画白書

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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