多様化するウェブ雑誌のライターらが労組結成

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 雑誌が電子版に移行するにつれて、その従業員が割を食わないよう労働組合を作る動きがこのところ活発化している、とメディア/マーケティング業界のニュースサイト Digiday が報じている。

 今週だけでも、雑誌社ジフ・デイビスや、ニューヨーク・マガジンで従業員が労組結成に賛成票を投じ、ニュースウェブマガジンの Slate では、経営側が right-to-work(労組に属さなくても仕事を得られる労働者の権利)条項を雇用契約から削除するのを拒否したことに対し、ストを起こす決断をした。他にも Gizmodo メディアグループ、Vice、the Dodo といったサイトが雇用側と労組契約の話し合いをしているところだ。

 この団結の背景には、ウェブ広告が伸び悩み、同時に媒体で働く側の給料もなかなか昇給が叶わない厳しい事情がある。全体的にみれば労組に属するレポーターやライターの数はまだまだ少ないが、2016年から2017年にかけて6.0%から6.8%になったという米労働局の数字が出ている。

 経営側にとって、労組結成は「給料の底上げにはいいが、優秀なレポーターを優遇するのがむずかしくなる」という幹部もいる。従業員の労組がある媒体だと、投資先としても魅力が半減し、買収対象になりにくいと指摘するのは投資銀行のリード・フィリップ氏だ。

 この先、雑誌メディアがウェブ化に加えてニュースのビデオ映像化など、ビジネスモデルを多様化させようとするのであれば、これまでのように従業員をジャーナリストとして扱うのか、なんでもござれのコンテンツ制作者となってほしいのか、雇用者がビジョンを示し、労組と協力して変わっていくことが求められるようになるだろう、という。

参考リンク

Digiday の記事
https://digiday.com/media/rise-union-activity-clashing-digital-publishings-business-struggles/
ジャーナリズム校 Poynter の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。