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先週は「巨大IT企業を対象とした著作権保護強化改革案が欧州議会で可決」「海賊版対策検討会議の中間まとめ案に再び議論が紛糾」などが話題に。2018年9月10日~16日分です。
NPO法人 本の学校 出版産業シンポジウム 2018 in 東京 ~神保町で 本の“いま”を 語ろう~〈特定非営利活動法人本の学校(2018年9月11日)〉
神保町ブックフェスティバル期間中の10月28日に開催。第1分科会は“これからの書籍流通を考える──書籍専門取次の機能と可能性”、第2分科会は“新書編集の現在、過去、未来”、第3分科会は“本屋を開業する”、第4分科会は“「雑誌作り授業」で見えてきた読者育成の重要性”、特別フォーラムは“「著者」と「本」と「読者」にとって、必要なこと、必要ではないこと”です。取材に伺おうと思います。参加申込みは本の学校公式サイトから。
文系研究者向け出版支援サービス「アスパラ」と、理系研究者向け出版支援サービス「近代科学社DIGITAL」が展開開始〈hon.jp DayWatch(2018年9月12日)〉
近代科学社DIGITALのプレスリリースが出たときに記事を書きそびれてしまったので、アスパラのプレスリリースが出たのに合わせて一緒に紹介。根っこはどちらもインプレスR&Dの「NextPublishing」です。
私のゴールは世界中の言語でCSSを使えるようにすること EPUB3で縦書きを実現した、fantasai(エリカ・エテマッド)に聞く〈Advanced Publishing Laboratory(2018年9月12日?)〉
2013年のインタビューが5年越しで公開。W3CのCSSワーキンググループの中心的メンバーの1人であるエリカ・エテマッド氏(ハンドルネーム:ファンタサイ)のおかげで、EPUB 3で日本語縦書きが規定できたという逸話があります。そんな彼女も登壇する予定のAPLシンポジウム「伝統を未来へ、組版の国際化」は9月19日開催ですが、すでに満席御礼になっています。早めに申し込んでおいてよかった……。
iOS 12は18日提供開始。AR機能や高速アプリ起動、ポートレート撮影進化〈AV Watch(2018年9月13日)〉
新型iPhone発表のニュースに隠れてしまってますが、iOS 12へのアップデートでは「iBooks」が「Apple Books」に変わるという、出版関連にはわりと大きな動きがあります。ティザーサイトが公開された際の記事はこちら。「ストア」の変更が主です。
欧州議会、ネット上の著作権保護強化 IT大手から使用料〈日本経済新聞(2018年9月13日)〉
EU著作権保護強化、「20年までの施行目指す」 改革案責任者に聞く〈日本経済新聞(2018年9月13日)〉
著作権保護強化の改革案が欧州議会で可決。とはいえターゲットは「IT巨大企業」で、Wikipediaや中小企業のサービスを除外した「オンライン上のコンテンツ共有サービス提供者」のみ。要するに、GoogleやFacebookやAppleやAmazonなどのアメリカ企業を狙い撃ちにした上で、それ以外へ影響が波及しないようだいぶ配慮された形へ落ち着いたようです。
宍戸教授「ブロッキングの議論が不十分だと明記すべき」 中間まとめ案に反発続出、平行線のまま最終局面に〈弁護士ドットコム(2018年9月13日)〉
合憲性巡り紛糾 「ブロッキングありき」の事務局案〈読売新聞(2018年9月14日)〉
「ブロッキングの章は削除すべき」海賊版対策巡り応酬〈日本経済新聞(2018年9月14日)〉
中間まとめ素案、ざっと流し読みしてみましたが、反対派の主張するブロッキングを法制化する際の制度設計(第3章)に「紙幅が大きく割かれている」という印象は受けませんでした。というか、法制化には超えなきゃいけないハードルがたくさんあるから、これくらいは割かないとむしろダメじゃなかろうか、と。私は、きちっと法整備した上でのブロッキングには反対ではない(他の対策と比べると「静止画ダウンロードの違法化」のほうがはるかに筋が悪いと思っている)ため、そういう印象を受けたのかもしれません。それにしても、読売新聞はこれまで著作権保護強化の動きには賛意を示すケースが多かったように思うのですが、なぜかブロッキングに関しては反対寄りのスタンスなのが不思議。なぜだろう?
「ニコニコ書籍」が「BOOK☆WALKER」へ統合、ユーザーがこれまで購入した作品はすべてそのまま移行〈hon.jp DayWatch(2018年9月14日)〉
2017年9月に「ニコニコ書籍」アプリの中身が「BOOK☆WALKER」と同じものになったとき、いずれ統合するのだろうと多くの人が予想していたことでしょう。それから1年越しです。もともと異なる企業で、異なるサービスとして開発され運営がスタートしたものを、グループ外出版社の作品も含めこういう形で統合するには、システム面のみならず、さまざまなハードルをクリアする必要があったと思われます。まずは、お疲れさまでした。
「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」――漫画編集者の意見に賛否 「出版のシステム自体に問題があるのでは」〈ねとらぼ(2018年9月15日)〉
私がこのツイートを初めて見た時点で既に「補足です」以下のツイートが追加されていたため、理解できなくはない、という感想でした。紙が売れなければ、リスクを減らすために部数を減らすという判断をせざるを得ないし、紙を出さなければリスクは極小化できます。最近、某月刊漫画誌で立て続けに、恐らく打ち切りになったであろう作品の最終巻が「電子版のみとなります」と告知されていて、非常にシビアだなと感じていたところでした。
ちなみにこのツイート、8月末時点ですでに結構大きな話題になっていたはずなのですが、ネットでバズったネタに敏感なねとらぼ編集部が、なぜ半月遅れで記事化したのかが少し気になります。
浦沢直樹、11年ぶりにスピリッツで新連載!10月開幕、電子版でも読める〈コミックナタリー(2018年9月15日)〉
これまで電子版が一切配信されてなかった浦沢直樹氏の新作が、ついにビッグコミックスピリッツ電子版でも配信されることに。2014年のインタビューでは、電子化しない理由について「画面の小さいスマホで読んで欲しくない」「(見開きが)キープできない媒体では、見て欲しくない」などと語っていたのですが、心変わりはなにがきっかけだったのでしょうか? これを機に過去作まで電子化してくれたらいいのですが。なお、あずまきよひこ氏の『よつばと!』も「電撃大王」電子版には載っていますが、単行本電子版は出ていません。電子雑誌に掲載されたからといって、単行本の電子版は出ない可能性も充分にあります。
市場規模は12兆円! デジタル・非デジタルの「両輪」で成長続けるコンテンツ産業〈SankeiBiz(2018年9月16日)〉
9月1日に発売された「デジタルコンテンツ白書2018」について。「デジタル」と言いながら、紙の新聞・雑誌・書籍やライブ市場など非デジタル分野についてもまとめられている白書です。出版関連は「静止画・テキスト」というまとめかたになっているのがユニーク。
絶版本も買える。必要なときだけ製本するアマゾンの「プリント・オン・デマンド」の仕組み〈PC Watch(2018年9月13日)〉
アマゾン市川フルフィルメントセンターにある、Amazon PODの印刷・製本設備がメディア向けに公開されたようで、他メディアでもいくつか記事が出ていました。私も取材したかった。次はお声がけください。日本で販売している300万点のうち9割が洋書ということは、日本語書籍はまだ30万点。在庫リスクがない、絶版にならない(出版義務を果たしていることになる)というメリットがあるのに、なかなかコンテンツが増えていかないのが現状のようです。売上構成比で、76%がオリジナル商品というのも興味深いところ。