グラフィック・ノベルがマン・ブッカー賞候補作になったことからこのジャンルに注目が集まる

 アメリカを含む世界英語圏の小説に贈られるイギリスの文学賞、ブッカー賞候補作(ロングリストと呼ばれる一次通過作品)に、初のグラフィック・ノベル「Sabrina」がノミネートされたことから、このジャンルに注目が集まっているとウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

 7月に発表されたノミネート13作品に含まれていたのだが、増刷が間に合わなかったこともあり、今月半ばまで出荷予定がずれ込んでいる。ニック・ドゥナソによる「サブリナ」は殺された女性と、彼女の死を否定するメディア・キャンペーンというあらすじ。版権担当者は既に海外の出版社からの問い合わせが200件を超えていると言い、特に韓国では20社が翻訳版を争っているという。

 他にも「ダンジョンズ&ドラゴンズ」というゲームをプレイする親子を描いたグラフィック・ノベル「The Adventure Zone」がニューヨーク・タイムズのベストセラー入りを果たすなど、このところグラフィック・ノベルの話題作に事欠かない。

 ランダムハウス・グラフィックという児童書/YA向けのグラフィック・ノベルのインプリントで出版ディレクターを務めるジーナ・ガリアーノは「これまでにないほど今注目されているジャンルで、大人向けグラフィック・ノベル市場が一変しそう」と語る。

 NPDブックスキャンによると、昨年は大きなヒット作が出なかったこともあって2017年の総売り上げ部数は113万部とやや落ち込んだが、児童書/YAのカテゴリーでは2016年の580万部から720万部と伸びているという。この秋も「アンネ・フランクの日記」やハーパー・リーの『アラバマ物語』のグラフィック・ノベル版の刊行が予定されている。

関連リンク

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事(有料)
https://www.wsj.com/articles/graphic-novels-get-new-respect-1533387601

投稿者: 大原ケイ

NPO法人日本独立作家同盟 理事。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。