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マンガ家育成支援事業「トキワ荘プロジェクト」などを展開するNPO法人NEWVERYは6月29日、人材紹介事業「Graphium Career(グラフィウム・キャリア)」の開始を取引先向けに発表した。これはどんな事業なのか? 興味を持った筆者はNEWVERYへ連絡、COOの小崎和隆氏と、クリエイティブ事業部マンガユニット長の番野和敏氏に話を伺った。
小崎氏によると、この新事業はまだクローズドβで不特定多数を対象とした事業ではないため、公式サイトではお知らせを出していないという。ただ、とくに隠すようなことはないので、すべて記事にしていただいて構わないという許諾をいただいた。人材紹介事業「Graphium Career」と、前述の取引先向けメールにもまだ載っていない受託業務事業「Graphium Works(グラフィウム・ワークス)」について紹介しよう。
改めて「トキワ荘プロジェクト」とは?
本気でプロのマンガ家を目指す若者へ、都内を中心にシェアハウスを提供する事業。すでに10年以上取り組んでおり、シェアハウスの戸数は18棟で定員約120名。入居経験者は400名以上で、プロデビューは80名以上(2017年12月時点)。
主な出身者は、カメントツ氏、坂本拓氏、園田ゆり氏、中川学氏、西村ツチカ氏など。「あなたの才能に必要なのは、〆切です。」というキャッチコピーで、入居期間の目途を3年間としている点が特徴だ。
また、同プロジェクトでは、マンガ家教育プログラム「MANZEMI(マンゼミ)」で、ベテラン講師によるマンガネーム講座も展開するなど、プロのマンガ家になるための人材育成にも取り組んでいる。
ただ、プロのマンガ家としてデビューするには、だいたい3年くらいかかると小崎氏。デビュー後も、どこかで行き詰まるケースが多いという。連載1本目でいきなりヒットする人も少なく、ベテランならすぐに次の連載企画を営業できるが、そういったセルフマネジメントができる人もまだ少ないという。
人材紹介事業「Graphium Career」とは?
これまでの課題は、プロのマンガ家「以外」の道に気づいたときの、サポート手段がなかったこと。そして、プロデビュー後についても、なにもサポート手段が提供できていなかったことだという。
そこで、マンガ表現のスキルを持った人材を求めている企業に対し、トキワ荘プロジェクト居住者・MANZEMI受講生を紹介するのが人材紹介事業「Graphium Career」だ(有料職業紹介 許可番号:13-ユ-307890)。
トキワ荘プロジェクト・MANZEMIの運営を通じ、居住者・受講生の資質や能力を把握し、今後のキャリアを適時相談。サービスを申し込んだ転職候補者に、将来キャリアの相談や求人情報の紹介、選考プロセスのサポートを行う。
求人企業とは、求職者の紹介、選考プロセスの調整、条件交渉、入社日調整などを行う。企業に紹介できるのは、プロマンガ家としてチャレンジできるレベルの人材から、マンガ表現で学んだイラストレーションスキルを持つ人材(デザイン・ウェブ制作など)、マンガ制作の過程で学んだスキルや特性を生かしうる人材(編集・制作管理・知財管理・ライター・ゲームシナリオ制作など)、そして、チャレンジ系のマインドセットを持つ未経験人材だ。
受託業務事業「Graphium Works」とは?
小崎氏はもう1つの課題として、トキワ荘プロジェクトの居住者が生活のため、マンガとは関係のないアルバイトに時間を割いてしまう点を挙げた。プロマンガ家を目指しているのに、それ以外のことに時間を使ってしまうのがもったいないという。
現状でも、トキワ荘プロジェクトの公式サイト経由で、企業から業務依頼の問い合わせが来るという。そこで、トキワ荘プロジェクト居住者・MANZEMI受講生に制作業務を依頼し、編集・品質管理や制作プロセス管理などのディレクションを行うのが受託業務事業「Graphium Works」だ。
たとえば、マンガ要素を入れた広告記事制作や、広告目的のマンガ冊子制作。ビジネス書や社内報などのコミカライズ制作支援。ビジネスプレゼン資料へのイラスト・コミカライズ制作。ウェブ記事のイラスト制作などが想定されている。
業務委託元企業に対し、トキワ荘プロジェクト居住者・MANZEMI受講生から候補者を選抜して紹介、制作プロセスの調整や成果物の納品などを行う。内容に応じ、編集プロダクションとも連携して品質を担保。企画に応じて柔軟に対応可能だという。
小崎氏、番野氏ともに、どちらの新事業も主たる目的は「育成」であり、若者の成長支援であると繰り返し述べていたのが印象的であった。NEWVERYの新たな挑戦に期待したい。
参考リンク
トキワ荘プロジェクト:
http://tokiwa-so.net/
NPO法人NEWVERY: