ジブリ風画像を生成AIで出力するのは著作権侵害? など 日刊出版ニュースまとめ 2025.03.29

【写真】書店の前を白猫が歩いている
alt 【写真】書店の前を白猫が歩いている Photo by Ryou Takano(+Adobe Firefly 生成塗りつぶし“歩いている白猫”)
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 伝統的な取次&書店流通の商業出版から、インターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版関連ニュースをデイリーでまとめて配信。ボットではありません。編集部の中の人がすべて自分の目で読んで、手作業でまとめています。

【目次】

政治

デジタル庁が政府向け生成AIガイドライン案を公表、各府省にAIの最高責任者〈日経クロステック(2025年3月28日)〉

欧州もAI規制緩和へ方針転換、日本企業に「国産AIの海外進出」の好機来る〈日経クロステック(2025年3月28日)〉

「知的財産推進計画2025」の策定に向けた意見募集の結果について〈知的財産戦略本部(2025年3月28日)〉

私たちは「エロ広告」に困っている 国民民主・伊藤孝恵議員の「許すまじ!」に敬意を示したい 北原みのり〈AERA dot.(2025年3月26日)〉

ひとことコメント

伊藤孝恵議員の発言すべては把握していなかったのですが、

「性的同意のない性行為、性的児童虐待コンテンツを広告にするなど許すまじ!」

と言ってたんですか? そりゃ玉木雄一郎代表が慌てて火消しに走るわけだ。直球で表現規制ですから。被害者のいる性虐待記録物(絶対ダメ!)と、被害者のいない創作物(合法!)は、大違いです。そこはちゃんと区別しましょうよ。(鷹野)

社会

Facebookが「友達」タブを刷新しておすすめコンテンツや「知り合いかも」の表示を終了〈GIGAZINE(2025年3月28日)〉

矢口高雄漫画賞を創設 秋田魁、功績たたえ募集〈共同通信(2025年3月28日)〉

万博公式本、誤掲載を認めおわび 未完成イラスト、差し替えへ〈共同通信(2025年3月28日)〉

ひとことコメント

販売中の書籍には訂正表を差し込み、重版時に完成版のイラストに差し替える対応を取る。

さすがに回収まではやらない模様。初版10万部ですもんね。(鷹野)

ACCS主催パネルディスカッション(全3回)第3回「AI技術の進歩と国として民間に期待することを理解~生成AIと行政の取り組み~」の講義録を公開し、アーカイブ動画配信を開始いたしました | 活動報告〈ACCS(2025年3月28日)〉

『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』まえがき〈飯田一史(2025年3月28日)〉

ことしのマンガ大賞に売野機子さんの「ありす、宇宙(どこ)までも」|宇宙〈NHK(2025年3月27日)〉

2025年3月14日JPRO説明会の動画公開|お知らせ詳細〈JPO出版情報登録センター(2025年3月27日)〉

生成AIで“ジブリ風”画像生成しSNS投稿 疑問や懸念の声も|生成AI・人工知能〈NHK(2025年3月27日)〉

ひとことコメント

まず、トランプとゼレンスキーの口論写真には、撮影者に著作権があります。それをi2i(Image to Image)でジブリ風にすると、撮影者の著作権は侵害している可能性が高いです。しかし、絵柄はアイデアの範疇ですから、ジブリ風であってもジブリの著作権は侵害していない可能性のほうが高いです。そのあたりの切り分けが難しいからか、いろいろ誤解も流布されていました。ちなみに、某所で“文化庁も「絵柄」は生成AIへの学習に限り著作権侵害となると言っています”などという意見も見ましたが、それはチェリーピッキングです。文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について(PDF)」に“当該作品群の創作的表現が直接感得できる場合、当該生成物の生成及び利用は著作権侵害”(p21)と書かれているのがその根拠のようですが、その手前にある検討の前提を飛ばしています。PDFのp5には以下のように書かれています。

このように、著作権法は、著作物に該当する創作的表現を保護し、思想、学説、作風等のアイデアは保護しない(いわゆる「表現・アイデア二分論」)

つまり、作風・絵柄などのアイデアは「創作的表現」に含まれないのです。だから仮にAI出力の作風・絵柄がなにかに似ていても「創作的表現が直接感得できる場合」に当たらない可能性が高くなるのです。ただし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当する可能性は、完全には否定できません。(鷹野)

ChatGPT「トトロそっくり」画像も生成 著作権にリスク〈日本経済新聞(2025年3月27日)〉

ひとことコメント

逆に、この記事の1枚目にある“ChatGPTに「トトロのようにして」と指示した画像”が本当にプロンプトだけで出力されたなら、これは「創作的表現が直接感得できる場合」として認定される可能性が高いでしょう。だって、まんまトトロだもん。(鷹野)

海外のAIアプリ関係者が「ジブリから著作権侵害で正式に警告を受けた」と投稿→ついにジブリが動いたか!と思いきや、警告文の画像自体がフェイクというカオス〈Togetter(2025年3月28日)〉

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地獄の様相を呈してきましたね……(鷹野)

経済

見聞録 本屋は「小さな声の世界」 すれ違い、調和する思惑〈山陰中央新報デジタル(2025年3月28日)〉

東京・日本橋 誠品生活日本橋 座り読み歓迎、台湾文化の発信地に〈日経BOOKプラス(2025年3月28日)〉

本を巡る場:出版現場の声発信 福岡でトークイベント〈毎日新聞(2025年3月28日)〉

楽天・三木谷浩史氏「広告事業が成長後押し」 株主総会〈日本経済新聞(2025年3月28日)〉

「景気のバロメーター」広告費、3年連続最高 動画がけん引〈日本経済新聞(2025年3月28日)〉

マイクロソフト、独自AI開発 CEO表明 チャットGPTを補完〈日本経済新聞(2025年3月28日)〉

「ストレートニュースの価値はゼロになる」AI時代にメディアはどう戦う?【Media Innovation Conference 2025】〈Media Innovation(2025年3月28日)〉

ひとことコメント

こちらのイベント、行ってきました。「ストレートニュースの価値はゼロになる」というのが、私の考える方向と真逆だったので、質問せずにはいられませんでした。1個目の質問が私。(鷹野)

2040年、出版の未来(第三回)寄稿・メディアドゥ上級顧問 新名 新〈株式会社メディアドゥ(2025年3月28日)〉

ひとことコメント

紙書籍出版の市場規模が維持されている欧米の書店数と比較して、市場規模や人口を考えると、日本の書店数はかなり多いことがわかる。

この視点、重要です。(鷹野)

デジタル製造による書籍が3000万部を突破、売上高は業界トップに KADOKAWAが進める「出版製造流通DX」の最前線〈Japan Innovation Review powered by JBpress(2025年3月27日)〉

ひとことコメント

本筋ではないのですが、

中でも、KADOKAWAは2024年度に売上高が2581億円に達し、集英社(2043億円)や講談社(1710億円)を抜いてトップとなり、飛躍的に業績を伸ばすことに成功している。

この記述が気になってしまいました。これ、全部門合計の数字ですよね。出版・IP創出部門は1420億円です(2024年3月期 通期決算資料参照)。それ以外はアニメ・ゲーム・ウェブ・教育などです。この記述が2ページ目にあって、3ページ目で部門別の説明があるのかと思ったのですが、いきなりBECプロジェクトの話に飛んでました。まあ、いちおう最後のページで「KADOKAWAにとって、出版・IP(知的財産)事業は売上高の半分を占める重要な中核事業である」と説明がありますが、若干ミスリード気味では。(鷹野)

技術

この画面を見たら即、操作中断を! 親切を装って「遠隔操作アプリ」をインストールさせようとする手口に要注意【読めば身に付くネットリテラシー】〈INTERNET Watch(2025年3月28日)〉

映像、即時に文章・音声に アリババ系がAI基盤〈日本経済新聞(2025年3月28日)〉

GPT-4oとGemini-2.0の画像生成能力はいかにして作られているのか〈Zenn(2025年3月27日)〉

ひとことコメント

OpenAIのGPT-4oやGoogle Gemini-2.0の画像生成が従来の拡散モデル(Diffusion Model)ベースではなく、自己回帰型のAny-to-Anyモデルであるという解説。これを読んで、Adobe Fireflyの進化が最近(相対的に)止まっているように感じられる理由がわかった気がしました。Adobe Fireflyは拡散モデルのままなんですよね。「猫」って指示してるのにおかしなクリーチャーが生成される場合があるのですが、それが、私がStable Diffusionを触っていた2年前といまだに同じような感じなんですよね。いちおうモデルは昨年4月にImage 2から3に進化してるんですが、、根本的なところが直っていない印象です。Adobeさん、もうちょっと頑張って欲しい。ところで、以下の箇所について。

ここ1年半ほど画像生成AIいじりを仕事にしてきた者としては、これまで積み上げてきた成果や進捗がすべて無に帰すレベルでの進化が突然起き、巨人にすべてを蹴散らされたという感じです。

私は、Stable Diffusionをしばらく使ってみて「こういうプロンプトを入れるといいぞ」みたいなノウハウ(プロンプトエンジニアリング)って、いずれ無意味なものになる運命だろうなと思っていました。だから、そろそろそういう段階なのだろうなという印象です。(鷹野)

イベント

日本読書学会 公開セミナー「読書調査のこれまでとこれから~読書をめぐるデータからなにがわかるのか」登壇者:桜井政成(立命館大学)、小山内秀和(畿央大学)、大庭一郎(筑波大学)〈神奈川県横浜市(オンライン併用)/3月29日〉

日本電子出版協会「『AIと共に書く』 CURSOR入門」講師:遠藤諭氏〈オンライン/4月4日〉

日本電子出版協会「モリサワ: 写研フォントのこれまでとこれから」〈オンライン/4月21日〉

日本図書館協会障害者サービス委員会「音訳者・音訳ボランティアのための著作権セミナー」〈オンライン/5月18日〉

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