「集英社、ジャンプBOOKストア!などを統合」「東京2020五輪、国立国会図書館保存ページも非公開に」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #528(2022年6月26日~7月2日)

原書房
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 2022年6月26日~7月2日は「集英社、ジャンプBOOKストア!などを統合」「東京2020五輪、国立国会図書館保存ページも非公開に」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

文化審議会著作権分科会(第64回)(第22期第1回)〈文化庁(2022年6月27日)〉

 傍聴しました。政府方針「知的財産推進計画2022」から著作権関連の抜粋解説のあと、委員27名全員が1人数分ずつ所感を述べていきました。業界団体の代表委員が我田引水なポジショントークをするのは珍しくないのですが、田村善之さん(東京大学大学院法学政治学研究科教授)が「海賊版対策でそろそろブロッキングも検討すべき」という趣旨の発言をしたのは驚きました。かなり慎重な言い回しではありましたが、海賊版だということが明白な場合、とか、結果的に権利侵害へ加担しているCDNへの対策、といった文脈でした。恐らく今後の国際小委員会で議論されることになると思われます。

 田村さんは、「MIAU祭2014」で登壇された際の「日本の著作権制度は寛容的利用(Tolerated Use)によって事実上のオプトイン方式になっている」という意見や、thinkTPPIPでの非親告罪化への反対意見、ダウンロード違法範囲拡大検討時の反対意見など、これまでは権利強化の動きに慎重あるいは反対する立場を示すほうが多かった印象があります。

 また、田村さんは総務省「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」の委員でもあるのですが、これまで私が傍聴していた範囲では、ブロッキングについて「検討すべき」といった意見を述べたことはなかったはず。今回の文化審議会著作権分科会は、諸事情で声だけ聞いていたので、もしかしたら別の方の発言を聞き間違えたのかも……と自分の耳を疑い始めています。議事録が出たら再確認したい。

「広告」だと明示を アフィリエイトに指針〈AdverTimes(アドタイ) by 宣伝会議(2022年6月29日)〉

 消費者庁「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の改正。アフィリエイトで不当表示があった場合、規制対象となるのは広告主であることの再確認や、純粋な第三者としての感想と区別するため「広告」と表示することが「望ましい」といった内容です。まあ、既報通りです。

 パブリックコメントに「事業者の参考としての性質であり、必ずこの通りにしなければならないわけではないことを確認したい」という質問があり、「御理解のとおりです」と回答があったのが印象的でした。まだ義務ではない、と。ただ、いずれ規制強化されることは目に見えてますので、早めに対応しておいたほうがいいと思いますけどね。

 ちなみに、HON.jp News Blogはすでに対応済みです()。そもそもアフィリエイトはあまり積極的にやってなかったので、件数が少なかったですし。ただ、個人ブログはそれなりに件数があったので、さすがに手作業で「広告」表示をするのは無理だと判断。データベース一括置換でコードを削除できるものは対処しました。置換じゃ難しいやつは……リンク切れにするしかないかも。

ネット中傷対策開示の仕組み「速やかに」 総務省に有識者会議が提案〈朝日新聞デジタル(2022年6月30日)〉

 こちらは総務省「プラットフォームサービスに関する研究会」の第二次とりまとめ。透明性・アカウンタビリティ確保に向けた施策が、ヤフーとLINEは進んでいるけど、Google、Meta(Facebook)、Twitterは遅れているのを踏まえ、「総務省は、行動規範の策定及び遵守の求めや法的枠組みの導入等の行政からの一定の関与について、速やかに具体化することが必要」と提言しています。

 #525でも触れたように、構成員の方がとくにMeta社の言い分について「責任のある数字を公表したいから、何も公表できないということは納得できない」とけっこう怒ってらっしゃったので、まあ、予想通りの展開ではあります。法的強制力を伴っていない「要請」には限界がありますよね。

未登記の海外IT大手7社に罰則 Twitterなどは登記検討〈日本経済新聞(2022年7月1日)〉

 こちらは先週(#527)ピックアップした件の続報。登記の意思を示している31社には、Twitter、Google、Microsoftが含まれているようです。ただ、日経の取材に対し、GoogleとMeta(Facebook)が未回答というのが気になります。あと、電気通信事業の廃止を届け出た2社ってどこだろう?

社会

国立国会図書館による五輪組織委サイトの保存・公開ストップ、そのままきょう閉鎖へ – 藤澤直樹(上智大学文学部新聞学科4年)、奥山俊宏(同教授)〈論座 – 朝日新聞社の言論サイト(2022年6月30日)〉

 国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)で、「Tokyo 2020 : 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」のページに「本資料は発信者からの申出により公開を停止しています。」という記述が。なんと、昨年暮れごろから非公開になっていたそうです。WARPは、民間のウェブサイトは発信者の許諾が得られたもの限定で収集していますから、当初は許諾していたのを後から取り下げたことになります。なんてことしやがりますか。

 これ、納本制度審議会でも以前からちょくちょく話題になってますし(投稿サイトが消える~という文脈ですが)、そろそろ国立国会図書館法(第25条の4)の改正議論をすべきなのかもしれません。インターネット資料のうちオンライン資料(図書又は逐次刊行物に相当するもの)は来年からようやく制度収集が始まりますが、民間のウェブサイトは対象外なのですよね。なお、Internet Archive の Wayback Machine には、東京2020の記録もしっかり残っています。さすがだ。

経済

「ジャンプBOOKストア!」「りぼマガ」「マワシヨミジャンプ」が終了へ 「ジャンプ+」や「ゼブラック」へ移行〈ねとらぼ(2022年6月27日)〉

 集英社はマンガ系サービスがいささか乱立気味でしたが、いよいよ集約に向けて動き始めました。終了するサービスで購入済みのコンテンツは、11月30日までに手続きをすればすべて引き継がれます。まあ、版元直営で引き継ぎをやらなかったら大変な騒ぎになるでしょうから、これくらいはやって当たり前でしょう。他社への引き継ぎではないですからね。

 さて、これらのサービスは集英社の自社開発ではなく、システムを提供している企業が存在しています。改めて調べてみたところ、今回終了する「ジャンプBOOKストア!」「りぼマガ(旧マーガレットBOOKストア!)」「マワシヨミジャンプ」はいずれも、株式会社ACCESSが提供している「PUBLUS」でした。同社が「中心」と位置づけている「少年ジャンプ+」は残ります。

 ただし「少年ジャンプ+」のウェブ版は、株式会社はてなが提供しています。また、もう1つの受け皿「ゼブラック」は、Link-Uがシステム提供しています。裏でなにが起きているかは知りませんが、とりあえず表に見えている事実はそういう状況です。少なくとも、単純な集約ではなさそう。現時点での記録として残しておきます。

Webtoonって最近よく聞くけど、なんでこんなに話題なの?〈コミックナタリー(2022年6月28日)〉

 最近、ウェブトゥーンが話題になっても、なぜか「comico」についてはあまり触れられない印象がありました。しかしこの座談会は、日本版comicoの立ち上げに従事した方が参加しているからか、comicoについてもしっかり語られています。ただ、いまウェブトゥーン業界では「comico出身の方々がすごく活躍してい」るそうですが、それってcomicoがまいた種を他社が収穫することになるわけですよね。座談会に参加している日本版comicoの立ち上げに従事した方も、いまはcomico出身の方ですし。諸行無常の響きあり。

ジャンプ+、来年以降の新連載はすべて英訳 世界同時連載で世界規模のヒット生み出す狙い〈ORICON NEWS(2022年6月29日)〉

 本件、反応を見ていると、まるで「これから初めて日本語と英語で世界同時配信する」かのように受け取っている方が多いです。が、本文を読めばわかるように「人気作の最新話」は従来も同時配信していました2019年当時のIMARTレポートを読むと、より明確になるかも。「MANGA Plus」に配信している『SPY×FAMILY』が、「第1話の連載開始から、アニメ化を待たずに海外ファンに評価されるという前代未聞のケース」という記述があります(2ページ目)。

 「MANGA Plus」が日本からは閲覧できないので、従来はどの作品が未配信だったか確認ができないのですが、「来年以降の新連載はすべて」という言い回しが意味するのは、既存の連載で英語版未配信のものは、今後も配信予定がないということでしょう。英訳の体制をいきなりどーんと増やすわけではなく、新連載が増えるごとに徐々に体制強化していく、ということなのかな、と。

 2019年当時の取材メモに、週刊本誌連載のすべてが「MANGA Plus」への配信対象になっていないのは、「表現の問題」「性的な表現が世界に受け入れられるか」を懸念、という記述が残っていました。ただ、当時からすでに「いままでは海外のライセンシーにまかせていた部分を直接編集部でやっている」「集英社でも編集者へ教育をして、危ない表現をネーム段階で指摘できるような体制を整えつつある」と言ってた記録が残っています。つまり今回の「少年ジャンプ+」の「来年以降の新連載はすべて英訳」については、そういうグローバル対応でのノウハウや体制も整った、ということを意味するのでしょう。強い。

技術

漫画アプリ広告で検証 スマホとPCで主人公の好みは変わる?〈日経クロストレンド(2022年6月30日)〉

 面白い調査。デバイスの違いで、表示される対象に対する心理的距離が変化するそうです。「デバイスの違いが消費者反応に及ぼす影響」という論文で、J-STAGEに誰でも閲覧可能な形で掲載されていました。スマートフォンは、心理的距離が近い広告のほうが、購入率も高くなるとのこと。つまりこれ、PC向けとモバイル向けではクリエイティブを変えたほうが良い、ということになりますよね。広告担当者、これからますます大変だ。

「バズる」見出しで拡散が2.4倍に…ニュース4,410本の分析から判明した方法とは?〈新聞紙学的(2022年7月1日)〉

 米英Facebook投稿の分析。コンテンツの見出し(OGPのことでしょうか)での強調表現はプラス効果があったけど、投稿のテキストに用いるとマイナス効果、など、いろいろ興味深いです。誇張や煽りでバズらせる技はバズフィードのような新興バイラルメディアが得意としていたけど、老舗メディアもそういう手法を取り入れるようになっていった、と。日本でも似たような傾向がありますよね。

 ただ、こういう分析結果って、アルゴリズムにかなり大きく左右されると思うんですよね。Google検索の結果でも、大型アップデートで表示順位が大きく変わるなんてことが年に何回もあるわけで。Facebookみたいにパーソナライズされていると、客観的な分析が難しそう。データが2017年11月27日から12月3日までの1週間と、ちょっと古いのも気になります

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雑記

 まさか9日連続で猛暑日になるとは……統計史上最長記録だそうです。茹だってしまいそう。ただ、これを書いている日曜日は久々の曇天で、少しは出歩く気になれました。気分は晴れませんが。戦争反対!(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
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