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2021年6月6日~12日は「消費者庁、アフィリエイト広告に関する検討会を開始」「授業目的公衆送信補償金、今年度は国負担へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。
【目次】
政治
図書館蔵書、メール送信可 「便利に」「販売減」〈日本経済新聞(2021年6月8日)〉
改正著作権法について、会員限定部分にある有斐閣・江草貞治社長のコメントは重要な視点だと思ったのでピックアップ。居住地に関係なくメール送信サービスが利用できるとなると、従来は図書館向けに売れていた本が売れなくなるのでは、という指摘です。それは充分あり得る事態だと考えます。それを補うのが、補償金の役割でしょう。
「補償金」今年度は国負担 オンライン授業で小説・記事配信〈朝日新聞デジタル(2021年6月8日)〉
こちらは図書館より先行事例の、授業目的公衆送信補償金制度についての動き。まさか国庫負担という方向になるとは。大歓迎。今年度だけでなく、ずっと国で負担してくれてもいいのよ?
「アフィリエイト広告」ウソや誇大宣伝 被害防止へ検討会 | IT・ネット〈NHKニュース(2021年6月10日)〉
アフィリエイト広告等に関する検討会が始まったというニュース。消費者庁による資料はこちら(↓)。「広告主による表示物の管理が行き届きにくいという特性や、アフィリエイターが成果報酬を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすいという特性」が指摘されています。
ちなみに、あびるやすみつさんの『本気で稼ぐための「アフィリエイト」の真実とノウハウ』(秀和システム)では、第1章「アフィリエイトの周りでカモる人たち」、第2章「悪事を働く広告主!」、第3章「深刻なASPの問題」、第4章「悪事を働くアフィリエイター!」と、そういう問題点が最初のほうの章でガッツリ指摘されていました。2010年の出版ですから、もう10年以上前から指摘されていた問題点、とも言えます。あれ、紙は品切重版未定か(↓)。
米下院、巨大IT規制法案を発表 超党派議員が提出〈共同通信(2021年6月12日)〉
自社サービスの優遇禁止とか、自社商品のためのサードパーティーのデータ活用禁止とか、他のプラットフォームでの決済を止めることの禁止など、巨大IT企業を狙い撃ちにした法案が提出されています。もし通ったらかなり広範な影響が出そうですが、どうなるか。
社会
【更新】バッハ会長を「はらぺこあおむし」に… 毎日新聞の風刺画を出版社が批判「センスのなさを露呈」〈BuzzFeed News(2021年6月9日)〉
IOCバッハ会長の似顔絵のあおむしが、「放映権」というリンゴをむさぼり食うという風刺漫画に対し、偕成社が公式サイトで「強い違和感」「不勉強」「センスの無さを露呈」「猛省を求めたい」という声明を発表。これに対し毎日新聞は「ご指摘を真摯に受け止め」ますと回答しています。素直。
これに対し、弁護士ドットコムが「著作権侵害の可能性」という意見を紹介しています(↓)。ここで著作権を持ち出すのは、筋が悪いと思うのですけどね。偕成社は、著作権については触れず「表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえに」という、ある意味「うまい」批判をしているのに。
仏の若者向け「文化クーポン」、日本の漫画に使途集中〈日本経済新聞(2021年6月12日)〉
フランス在住の18歳全員に、300ユーロのデジタルクーポンが配布。利用額の84%が約70万冊の書籍購入に充てられ、「半数を大きく上回る割合」を日本のマンガが占めているとのことです。約4万円ですから、巻数の多いマンガを買うにはちょうどいいかも。日本で同額の図書カードNEXTが配布されたら、どうなるだろう? やっぱりマンガが買われる気がする……。
経済
マンガは“無限”の時代へ プラットフォーム最適化の向こう側にたどり着いた“タテ読み”という新標準:小寺信良のIT大作戦〈ITmedia NEWS(2021年6月7日)〉
タテ読み推しの本論以外のところで、ちょっと「あれ?」と思ってしまった記事。2ページ目で『怪獣8号』について触れ、「最新話の公開1週間で200万ビュー超えを続けており、1話30円で単純計算しても、毎週6000万円を売り上げることになる」としているのですが、「少年ジャンプ+」のオリジナル連載作品は全話初回無料なのですよね。仮定の経済規模の話なのでしょうか?
ヤフー、2020年度に約1億7000万件の広告素材を非承認に–「最上級」「No.1」はNG〈CNET Japan(2021年6月8日)〉
今年で3回目、毎年恒例になってきた「広告サービス品質に関する透明性レポート」。良い取り組みなので今後も続けて欲しいし、他の広告プラットフォームもぜひ追随して欲しいと思います。「No.1」表示って、根拠レスではダメなんですよね。実にわかりやすい景品表示法違反なのだけど、後を絶たないという。
漫画村異聞――海賊版の前向きの解決 / 田中辰雄 / 計量経済学〈SYNODOS -シノドス-(2021年6月10日)〉
漫画村前後の市場を比較することで、実損額がどれくらいだったか? を推定する前半の論考は非常に興味深い。ただ、それ以外の部分についてはいくつか疑問点があります。まず、竹宮恵子『風と木の詩』の性表現が「国連で問題視されたことがある」という記述。2016年のBBCニュースの記事(↓)を典拠にしています。
ただ、このBBCニュースの記事って、国連特別報告者ブーア=ブキッキオ氏が日本を「バーチャルな子供を性的搾取する表現の主要製造国」と呼んだことが、男性向け性表現のみならず、『風と木の詩』のような女性向け少年愛表現も含まれてしまう、という問題提起だと思うのですよね。国連で『風と木の詩』が名指しで問題視されたわけではない、という認識です。
また、後半の「定額配信サービス」推しの本論が、若干荒っぽい。日本の電子コミック市場推計では、定額配信とアラカルト販売は区別されていないので、たとえば「ブックパス読み放題」や「Kindle Unlimited」のような横断型の定額配信サービスも含んだ数字になっているのですよね。規模が不明なのは確かですが、間違いなくゼロではない。既に存在しているものを、無いかのように扱ってしまっているように思います。
米中の巨大IT企業にやられるのを不安視するのはわかりますが、それをいちばん警戒しているのは作品の供給元である出版社だと思うのです。自社にとって不利となる条件なら、供給しないという選択肢もあるわけですよね。出版社自身が直販する「少年ジャンプ+」や「コミックDAYS」や「BOOK☆WALKER マンガ・雑誌 読み放題」なども、既にあるわけですし。
音楽・映像・ゲームについても、定額配信サービスの隆盛というよりむしろ、基本無料のフリーミアムモデルが成功しているということではないかと思うのです。そういう意味では、コミックも同じ成功モデルを同じように辿っていると思うのですが。
オタクの聖地「とらのあな」で進む“事業変革”の正体 | 広告企画〈ダイヤモンド・オンライン(2021年6月11日)〉
広告企画ですが、興味深い記事なのでピックアップ。コロナ禍で同人誌即売会が休止や縮小している中、「とらのあな」でも店舗売上は減少しているけど、オンライン事業の成長がカバーしているとのこと。過去1年で流通総額200億円突破はお見事。しかも、そういう方針転換が実はコロナ禍前に行われていたという。タイミングがすごい。
富士山マガジンサービスとTRC、電子図書館「LibrariE & TRC-DL」における電子雑誌配信サービスを2022年4月に開始予定〈株式会社富士山マガジンサービスのプレスリリース(2021年6月11日)〉
図書館流通センターは3月に、CCCから富士山マガジンサービスの株式の一部を取得、同時に業務提携契約も締結しています。今回のこのリリースもその延長上。他社サービスでは「dマガジン for Biz」が、図書館向けにも提供事例がありますが、今後どうなるか。
技術
スクエニがNFTシール「資産性ミリオンアーサー」ティザーサイト公開、LINE Blockchain採用しLINEが二次流通市場を構築〈TechCrunch Japan(2021年6月9日)〉
サービス開始はまだこれからですが、注視しておきたい動き。ティザーサイトには「シールの背景やホログラムなどが1枚1枚少しずつ異なっており、世界で1枚、あなただけのNFTデジタルシールが手に入ります」「これらのアセットは、LINE BITMAX WalletのNFTマーケットで流通・売買することが可能」といった記述があります。書店で配布されている特典ペーパーになら、すぐ応用できそう。
イベントのお知らせ
落合早苗氏「『なかったことにしたくない』から、次の一歩へ」
6月19日(土)15時ごろからオンライン配信。14時からの通常総会が終わり次第開始するため、多少時間が前後する可能性があります。一般の方も YouTube Live にて視聴できます。詳細はこちらのお知らせをご覧ください。
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