JPRO出版情報登録センターの現状とこれから ~ 書誌情報の一元化と3つのQでマーケットインの出版へ

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 一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)は9月17日、JPRO出版情報登録センターの説明会「JPRO MORE ―― 出版社・取次会社・書店・図書館をつなぐ『今』と『未来図』」を開催した。第1部では来年3月リリース予定のB向け情報提供ツール「Books PRO」(仮称)などについて、第2部では10月1日以降の電子出版物情報登録新方式について、それぞれ説明が行われた。

業界統一フォーマットで川上から川下まで

基本書誌情報登録数
[写真クリックで拡大]2019年1月に書協とのデータベース統合が行われている
 昨年4月からJPROの第2フェーズが稼働し、現在では約1300社が利用、約237万点の書誌情報が登録されている。近刊情報登録率も、目標の70%を突破した。現状、登録率が低いのは、ムックや新刊注文扱いの書籍だという。

 JPROのデータベースは2019年1月に日本書籍出版協会の「Books.or.jp」と統合され、3月には「出版書誌データベース」(通称:Pub DB)として一般公開が開始された(Pub DB オープン時の記事はこちら)。

 Pub DB ではタイトル・書影・内容紹介・目次・著者紹介など、JPRO登録の詳細項目を掲出しているほか、オンライン書店の購入ページへ誘導を図ったり、「電子版あり」の情報表示などが行われている。

Pub DB は来年3月に「Books」へと名称変更予定
[写真クリックで拡大]Pub DB は来年3月に「Books」へと名称変更予定
 Pub DB は、来年3月にはバージョンアップが予定されており、オンデマンド版の有無、オーディオブックの有無、そして、試し読みも可能になるという。また、名称も従来の Pub DB から「Books」へと変更される予定とのことだ。

書籍のプロへ向けた情報の「見える化」

 また、来年3月から提供予定の「Books PRO」は、書店や図書館といった書籍のプロへ向けて情報の「見える化」を図ることを目指している。最大半年先までの近刊情報と、既刊の情報も提供すること、また、重版情報やプロモーション情報も提供し、情報の一元化と情報格差の解消を図っていくという。

Books PRO(仮称)商品詳細ページのイメージ
[写真クリックで拡大]Books PRO(仮称)商品詳細ページのイメージ
 現状、Pub DB における発売30日前の書影登録状況は、4分の1程度とのこと。脱 NO Photo を図るため、「Books PRO」では完成版の書影ではなくても登録が可能となり、書店・図書館向け限定の「サンプル書影」や組み見本が閲覧できる「ちょいみせ」(仮称)が提供される。プロセスの見える化を図ることによって興味を惹き、購買意欲をかきたて、「マーケットイン」へと繋げていく狙いだ。

 将来的に「Books PRO」は、「s-book」「Webまるこ」「Web Hot Line」「Bookインタラクティブ」「TONETS-V」「NOCS7」といった注文サイトや近刊予約との連携も検討されている。書店や図書館に活用してもらうためのシステムなので、どんどん意見をいただきたいとのことだ。

3つのQをマーケットインへの入り口に

3つのQ
[写真クリックで拡大]3つのQ
 また、出版社に対しては、以下の“3つのQ”をお願いしたいという。

  • More Quickly
  • More Quality
  • More Quantity

 つまり、より早い登録、より質の高い情報、そして、より多くの点数を登録して欲しい、ということだ。一般的に、情報には量・質・鮮度の三要素が重要だと言われているが、パネルディスカッションに登壇した三省堂書店の亀井崇雄氏によると、いちばん重要なのは速報性だという。不確実な情報でも、タイトルと著者名だけでも、少しでも早く情報が欲しいと繰り返し強調していた。

 ダイヤモンド社の井上直氏によると、厳しい情勢下でも雑誌を売り伸ばしている書店は、出版社から事前に特集情報などを入手し販促に役立てているという。出版社からのFAXが毎日100枚から150枚くらい届くが、売れている店はこれを丹念に見て販促に活かしているそうだ。今後はそういった情報が Books PRO で提供されることになり、FAX依存からの脱却が図られることになるのだろう。

パネルディスカッションの様子 原書房の成瀬雅人氏は中小出版社の立場として、これは大手のためだけの仕組みではない、中小でも大手と拮抗した情報を出していけるのだと語った。ただ、今回の説明で、営業の人間は「これはやらなければダメだ」と理解できても、編集の人間に理解してもらうのはなかなか難しいという現状もあるのだという。いまでも「本を作るのと書誌情報を作るのとどっちが大切なんだ!」と言い合いになったりするそうだ。

 三省堂書店亀井氏は、いまいちばん困っているのは人の確保だという。採用と教育研修に大きく時間を割かれ、販促の時間が奪われているそうだ。書店にはいまでも膨大な情報が届いており、むしろあまりに多すぎるため、これが必要だという情報にリーチできておらず、必要な情報を検索・アクセスするスキルも不足しているという。

 また、どの本を予約注文するかの参考にするため、ついついアマゾンのランキング情報を参考にしてしまい、書店の立場としてどうなのか? と思うこともあるという。現状、むしろ情報ソースはありすぎて困っているので、「Books PRO」に一元化できると嬉しいと、期待を語った。

電子出版物の書誌も、より登録しやすく

これまでの電子出版物登録方法
[写真クリックで拡大]これまでの電子出版物登録方法
 いっぽう電子出版物の書誌は、登録済みが約21万点と、まだ紙の10分の1程度に留まっている。もっとも、論文「日本における電子書籍化の現状:国立国会図書館所蔵資料を対象とした電子書籍化率の調査」(安形輝、上田修一)によると、2017年に出版された書籍の電子化率でさえ36.8%(※2017年12月から2018年4月にかけての調査)であることを思うと、それなりには登録されているようにも感じる。

 電子出版物の書誌を登録するメリットとしては、電子出版権の公示利用が挙げられている。が、こちらも登録数は約5万点と伸び悩んでいる。ブローカー対策や、海賊版対策への援用が期待されることから、現時点で登録されているのは大手出版社のコミックが中心になっているようだ。

 また、Pub DB でも一般ユーザー向けに「電子版あり」と表示されるメリットもあるが、現時点で電子版単独ページはまだ用意されていない。将来的には用意される見込みだが、直近では、紙に比べるとメリットがわかりづらいのも事実だ。実際のところ、出版社にとっては入稿フォーマットが新たにひとつ増えただけだった、という反省点が挙げられていた。

今後は電子取次の書誌情報からJPROに自動送信される
[写真クリックで拡大]今後は電子取次の書誌情報からJPROに自動送信される
 そこで今後は、出版社の承認に基づき、電子取次に販売委託している電子出版物の書誌情報から、JPROの登録に必要な項目が自動で送信されるようになる。底本ISBNによってデータの紐付けも自動的に行われる。価格変更などの情報修正も、自動反映される。

 また、2020年1月1日からの登録料は、従来の500円から200円に値下げされる。料金は底本ISBNごとに計算されるため、分冊版など電子版が複数ある場合も1件となる。電子出版物だけの登録は無料だが、出版権情報を追加設定する場合は有料となる。さらに、10月1日から12月31日までは、登録無料キャンペーンが行われる。既刊で未登録のものや、期間中に発行される電子出版物は、登録料が無料となる。

 なお、紙の出版権者と電子の出版権者が異なる場合、紐付けをするかどうかは登録者の意向次第とのことだ。つまり、両者の関係が良好なら紐付けられ、そうでない場合は紐付けが行われない、という形となる。単行本と文庫版が別の出版社になる場合と似たような対応が予想されるだろう。

参考リンク

JPRO出版情報登録センター
https://jpro2.jpo.or.jp/

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About 鷹野凌 293 Articles
HON.jp News Blog 編集長。NPO法人HON.jp 理事長。明星大学/二松學舍大学/実践女子短期大学の講師で、デジタル編集論/表象メディア演習/デジタル出版論/デジタル出版演習を担当。出版学会員/デジタルアーカイブ学会員。主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)

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