「Google I/O 2026はAI三昧」「日本の学術出版社はなぜAI企業へのライセンス販売で遅れをとっているのか?」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #716(2026年5月17日~23日)

【写真】TSUTAYA BOOKSTORE 名鉄名古屋(photo by TAKANO Ryou)
noteで書く

《この記事を読むのに必要な時間は約 15 分です(1分600字計算)》

 2026年5月17日~23日は「Google I/OはAI三昧」「日本の学術出版社はなぜAI企業へのライセンス販売で遅れをとっているのか?」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

[社説]デジタル教科書の長所生かせ〈日本経済新聞(2026年5月17日)〉

日本経済新聞はデジタル教科書推進派ですね。否定派の読売新聞と真っ向からぶつかる社説です。

だが国が一律に学年や教科を縛るべきなのか。学校改革の進捗や子どもの状況を踏まえて自治体に判断を委ねる余地もある。

おっしゃるとおり。「国が」というか、大臣の鶴の一声でこれまでの議論を簡単にひっくり返すな、と思いますね。一般社団法人日本LD学会、特定非営利活動法人全国LD親の会、特定非営利活動法人エッジが連名で要望書を出しているように、年齢や教科で一律な対応をすると、学習障害や読字困難のある児童生徒が利用できなくなってしまう恐れがあります。

総務省、違法オンラインカジノのアクセス抑止に関する報告書案を公開、ブロッキングについて継続的な検証を提言〈INTERNET Watch(2026年5月18日)〉

報告書案にざっと目を通してみましたが、やはり従来通りブロッキングにはかなり慎重で、もしやるなら対象範囲を限定した立法措置が必要といった内容になっていますね。しかし、記事の以下の記述はいただけない。

過去に対策の緊急性が高いとされたものに対して実施された事例はあり、主なものは、児童ポルノのブロッキング(ICSA:一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会が実施)、海賊版サイトのブロッキング(NTT系の一部ISPが実施)だ。

いや、海賊版サイトへのブロッキングは実施されていないですよ。弁護士・中澤佑一氏がブロッキングの差し止めを求めてNTTコムを訴えた裁判で、実施しなかったし、今後実施する予定もないことが明確になったため、請求棄却になっています。 たまに「海賊版サイトに対するブロッキングが実施された」と勘違いしている方がいると2号前に書いたばかりだったのに。とほほ。

「小中学校の図書館の充実に」と国の交付金、でも本の購入に使われたのは6割…社会保障費など優先し後回しになったか〈読売新聞(2026年5月21日)〉

本件、以前から指摘はありましたが、大変トホホな実態が続いていることが改めて明らかになっています。国が使途を指定できないとはいえ、あまりに酷い。嗚呼、地方自治。推移グラフを見ると、2017年から2021年まで国の予算は増額されているのに、地方自治体の図書購入費は変わっていない、というか、減り続けているのですよね。まあ裏を返せば、それだけ地方自治体の予算が厳しいということなのでしょうけど。

「国旗損壊罪」アニメや生成AIによる創作物は対象外…自民PTが法案の骨子案了承〈読売新聞(2026年5月22日)〉

表現の自由に関わる問題なので、例によって赤松議員・山田議員が創作物には及ばないよう抵抗してくれているようです。これ以外にも「お子様ランチの旗は対象外」みたいな報道もありました。なんというか……私が若いころはまだ日の丸は国旗じゃなかったし君が代は国歌じゃなかった(国旗及び国歌に関する法律が成立したのは1999年)時代なので、「国民のアイデンティティーの証」とか言われても正直あまりピンとこないのですよね。もちろんあえて損壊・汚損しようという気もありませんけど。

津田健次郎さんの「低音ボイス」生成AIで模倣、動画削除求めティックトック提訴…声無断利用で初の訴訟か〈読売新聞(2026年5月23日)〉

津田健次郎さん:「ツダケンの声がする」のコメントも立証材料に…生成AIの「声の権利侵害」訴訟の争点は「類似性」〈読売新聞(2026年5月23日)〉

声で著作権侵害には問えないので、声の肖像権(顧客誘引力があるパブリシティ権のほう)を判例で勝ち取るための裁判だと思われます。政府は現行法で対処可能と言ってますもんね。もし司法が認めない判断をしたら、そのとき初めて立法措置ということになるのでしょう。時間かかるなあ。

社会

「デジタル端末より紙の本のほうが読解力が向上する」説は本当か〈クーリエ・ジャポン(2026年5月18日)〉

電子書籍リーダーのような専用端末を用いる場合、デジタルか紙かによって読解への影響に差が出るとは考えにくい。いずれの形式も、高度な読解を成立させるための知的な処理プロセスを適切に支えてくれるからだ。 / 厄介なのは、広告だらけのニュースサイトのように集中を妨げる環境や、単語の間隔がバラバラな中央揃えのレイアウトといった、読むことに適さない表示形式だ。こうした不自然なレイアウトは、紙のテキストではまずありえない。

それはそう。おっしゃるとおり。というか、この記事が載ってるクーリエ・ジャポン自身が、本文の数段落ごとに広告が挿入されていちいち寸断されるという「読みづらい」典型例になっています。自己批判かよ! まあ、Googleの自動広告でしょうけど。つまりだいたいGoogleが悪い

ファンティアの「修正・モザイク基準」改定にクリエイター悲鳴 「過去作も?」「時間なさすぎ」〈ITmedia NEWS(2026年5月20日)〉

「Fantia」成人向け作品の新モザイク基準に追加説明と謝罪 過去作品は改定日以降に確認〈KAI-YOU(2026年5月22日)〉

「関係諸機関より『一部のコンテンツにおける修正・モザイクの基準』について、法的な観点から極めて厳格な指導・指摘を受けている状況」「今回の改定は、厳格な法的指導を受けた重要かつ緊急性の高いもの」という説明がなんとも不穏です。なんで「警察からの指導」ってはっきり言わないのか不思議。

5月19日発表で、改定日が5月25日というのも、さすがに猶予がなさすぎる。「違反が確認された場合の措置」として、当初は「即座にファンクラブ凍結や閉鎖を行うものではございません」という説明がなかったInternet Archive)ため、利用者から強い反発があったようです。

しかし、わいせつ物頒布等罪(刑法175条)はなにをもって「わいせつ」とするかの明確な基準が存在しないから、警察の裁量で適用範囲が変わりすぎますよね。海外のウェブサイトに行けば無修正の画像や動画がいくらでも観られる時代に合わせ、見直すべきなのでは。

正体不明の記者4人が30超媒体で1000本超を執筆、フリーランス審査の盲点に〈Media Innovation(2026年5月21日)〉

AIが生成した「偽の引用」が14万件超、科学論文の信頼性を揺るがす事態に〈CNET Japan(2026年5月21日)〉

AI Slopが猛威を振るっています。Media Innovationの記事は面白いことに、執筆者の「久遠 未来」もAIエージェントです。プロフィールの末尾を参照してみてください。偽の引用のほうは、さすがにこれはプレプリントだから起きていることだと思いたい。プレプリントは簡易的なチェックしかやってないですから。査読や編集者もスルーしているようなら、その論文誌の権威が疑われちゃいます。

Wikipedia運営財団CEO「法人向け有料データ提供拡大」 1年でPV8%減〈日本経済新聞(2026年5月23日)〉

タイトルのカギ括弧内、もうあと数文字足してほしい。「法人向け有料データ提供(が)拡大(した)」という結果の話なのか「法人向け有料データ提供(を)拡大(していきたい)」という意向の話なのか、本文を読まないと判断できません。これは後者でした。

しかし、AI検索の普及で辞書的なコンテンツは打撃を受けているという予想をしていましたが、2025年の1年間だけでページビューが約8%減少ですか。Wikipediaは広告モデルではないとはいえ、危機感を覚えるには充分な数字でしょう。

経済

記事広告では良い点も悪い点も書くべき?〈GIGAZINE(2026年5月19日)〉

GIGAZINEの読者は98%が「良い点も悪い点も書くべき」と回答したそうです。そこまで差がつくと残り2%の「悪い点は書くべきではない」と回答した人が何を考えているか気になります。

(新設してもらいたいカテゴリについて)最も要望が多かったのが「AI関連」です。ただし、GIGAZINEには既にAIカテゴリが存在するので、AI関連の最新情報をいち早く知りたいという人はぜひ活用してみてください。

笑ってしまった。メニューの存在が読者に認識されてないの、サイト運営者あるあるですね。

Rakuten Kobo and StoryGraph Team Up(楽天コボとストーリーグラフが提携)〈Good e-Reader(2026年5月19日)〉

StoryGraphはGoodreadsの代替として注目されている読書アプリです。Amazonに依存しないところがポイント。だからこそ、Rakuten Koboと提携って話になったんでしょう。日本にも来るかしら? ブクログや読書メーターなどと競合することになります。

Association of American Publishers Announces Partnership with Vermillio to Protect Publishing Industry from AI Infringement and Piracy(米国出版社協会、出版業界をAIによる著作権侵害と海賊版から守るため、ヴァーミリオとの提携を発表)〈AAP(2026年5月21日)〉

Vermillio って知りませんでした。本稿執筆時点でググるとまだ Vermillion(ジュエリーブランド)が優先されてしまいます。AIライセンシング・プラットフォームとして昨年くらいから、まず音楽業界で橋頭堡を築いてきた新興勢力のようです。

【決算】小学館 88期は減収減益に 「デジタル収入」も減収に〈The Bunka News デジタル(2026年5月22日)〉

デジタル収入が対前期比8.0%減と、初の減少です。踊り場どころか下り坂だ。ちなみにこの期は2025年3月1日~2026年2月28日なので、「マンガワン問題」はまだほとんど影響していません。マンガワン編集部から謝罪が出たのは2026年2月28日でした。では、なにが減少の要因なんだろう?

欧米の学術出版社で「AI企業へのライセンス販売」が新たな収益源に…日本が大きく後れをとる理由(飯田 一史)〈マネー現代 | 講談社(2026年5月23日)〉

おお、うちも5月16日のメルマガ増刊号で取り上げたネタです。タイミングが被った。Wileyの決算、インパクトありますもんね。いち早くThe Bunka News デジタルの連載で取り上げてくれたコンテンツジャパン・堀鉄彦氏に感謝。

ただ、この記事で少し気になったのが「学習(トレーニング)からRAG(検索拡張生成)へ」という流れを紹介したあとに、日本の著作権法30条の4(非享受目的)だけを取り上げている点です。そして法律が悪いから改正すべきだという論になっている。

しかし、文化庁の解説「AIと著作権に関する考え方について(PDF)」で、RAGでの利用は「非享受目的」要件を満たさないケースとして明示されています。RAGは参照(reference)なので、適用可能な権利制限は同法47条の5(軽微利用)です。用途が違うから、適用される条文も異なります。

そして、どちらにしても「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は権利制限の対象外なので、ウェブに無料公開されているわけではない記事や論文の利用には許諾が要るはずです。2018年改正の解説でも「情報解析用に販売されているデータベースの著作物を情報解析(AI学習)目的で複製する場合」は適用外だと明示されています(PDF)。つまり、日本でもライセンス商売は現行法のままで可能なはず。弁護士・福井健策氏にご登壇いただいた2023年のカンファレンスでも、そういう話題がありました。

ではなぜ日本の学術出版社は遅れをとっているのか? という話は、恐らく5月30日開催の日本出版学会 春季研究発表会 ワークショップ「出版教育研究部会 デジタル時代における学術出版エコシステムの再構築――専門書出版社・図書館・AI時代の知の循環モデルを問い直す」で明らかにされると思います。楽しみです。恐らく、権利処理のやり方に違いがあるのではないかと。日本は出版権だけ設定しているケースが多いのでは?

技術

Googleの新AIモデル「Gemini Omni」が発表 ~まずはNano Bananaの動画版、自然言語で生成・編集可能に〈窓の杜(2026年5月20日)〉

Google I/O 2026はAI三昧、というかGemini三昧でした。この「Omni発表」の報を見て試しに動画を作らせてみたのですが、このタイミングでGeminiが「週単位の上限に達するまで5時間ごとにリセットされる、コンピューティング ベースの使用量上限に移行」していて、1分の動画を2本作っただけであっというまに使用量上限に到達してしまいました。とほほ。5時間でリセットされるのが救い。Google One プレミアムにオマケで付いてくるAI Plusだとそんなもんか。動画は計算リソース食いすぎますね。

グーグル公式「生成AI最適化」ドキュメント登場 ―― 生成AI検索にSEOはまだ有効か?【SEOまとめ】 | 海外&国内SEO情報ウォッチ〈Web担当者Forum(2026年5月22日)〉

Google I/O 2026に合わせて、Google公式の生成AI最適化ガイドが出ました。「AEO」とか「GEO」とか呼ばれている「裏技」は、要らないことが明確になりました。ふつうのサイト運営者は真っ当なSEOをやっていれば充分ですね。

AI検索経由ユーザーはオーガニック検索経由よりコンバージョン率が約50%高い(Shopify調べ)

おお! Googleは以前「検索における AI : クエリ数が増加し クリックの質が向上」と主張していましたが、ECプラットフォーム側からそういうデータが出てきたのは大きい。仮にアクセスが3分の2になっても、コンバージョン率が1.5倍なら問題ないわけです。無料配信広告モデルのメディアにはあんまり関係ない話かもしれませんが。

お知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

HON.jp「Readers」について

HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。

日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

メルマガについて

本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。

雑記

6月のスケジュールがいろいろヤバイ……というか、じつはなにげに5月後半から忙殺されています。やばーい。(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 946 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

0 コメント
高評価順
最新順 古い順
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る