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2026年5月3日~9日は「AdSenseのバックボタンハイジャック全画面広告廃止へ」「MetaのAI開発に大手出版社と著者が集団提訴」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
政治
違法サイト遮断でウェブトゥーン新規導入77%増 売上23%増へ波及〈ChosunBiz(2026年5月4日)〉
(韓国)文化体育観光部は著作権法改正に基づき11日から「違法サイト緊急遮断・接続遮断制度」を施行し、別途の審議手続きなしに違法サイトを即時遮断することにした。
海外での成功事例として、日本での今後の議論に引用されることになりそうです。ただ、事前手続きなしで即時遮断可能というのは、政治的に悪用されかねない、けっこう危うい制度な気がします。政権にとって「都合の悪い事実」が遮断されかねない。
ちなみに日本では2018年に、「緊急避難」に基づくサイトブロッキングが政府からISPに「要請(命令ではない)」され、事前に根回しされていたNTTグループが「やります」と宣言はしたけど結局ブロッキングは実施されなかった(実施される前にサイトが閉鎖された)という騒動がありました。
たまに「海賊版サイトに対するブロッキングが実施された」と勘違いしている方がいるので、そうではないとあらためて強調しておきます。児童性虐待記録物に対するブロッキングを援用しようとして猛反発され、その後の法改正に向けた動きにも失敗した(プロジェクトチームが「議論まとめ」を出せなかった)という事例です。
Publishers File Lawsuit Against Meta, Mark Zuckerberg(出版社たちがメタ社とマーク・ザッカーバーグを提訴)〈Publishers Weekly(2026年5月5日)〉
昨年6月に米地裁がAnthropicに対し「海賊版の書籍データをAI学習に利用したことはフェアユースではない」と判断した際、これは同じ学習用データセット「Books3」を使っていることを明かしている他社にも直撃する話だと予想していたとおりになりました。1年近く経っているので、思ったより遅かったくらい。
その代わりと言ってはなんですが、原告団はエルゼビア、センゲージ・ラーニング、アシェット、マクミラン、マグロウ・ヒルの大手5社+著者という大所帯になっています。また、AAPの声明には“an infinite substitution machine(無限代替機械)”という表現もあり、Anthropic判決の2日後に出たMetaに対する判決の「市場希釈化」理論がきっちり盛り込まれていることも伺えます。この裁判の行方は要注目です。
EU、AIを悪用した性的画像の生成禁止 年内にGrokなど対象〈日本経済新聞(2026年5月7日)〉
EUは対応が早い! でも法規制ってどうしても時間がかかる。なんかもうすでに、有料プランでもエロいのは出力が難しくなったという声が散見されます。法規制より先に、自主規制したみたい。しかしそれでも、法規制への流れを止めることはできなかった、と見るべきなのか。年末にこれが出たとき、虎の尾を踏んだ感がありましたもんね。
社会
「セーラームーンに似ている」 生成AIを使った化粧品の広告が物議 メーカーは謝罪と広告の撤去を発表〈ITmedia NEWS(2026年5月7日)〉
私自身は動画を観てないのですが、これは「アイデアレベルの模倣であり法的には問題なさそう」という見解をいくつか見ました。ウテナの発表にも「外部専門家を交えて法的な確認を重ねた」とあり、いわゆる定番の魔法少女モノだと想像しています(いまウェブ上に残っている動画は無断転載が強く疑われるため観ません)。たとえば「プリキュア」とか「魔法少女まどか☆マギカ」とか、最近だと「株式会社マジルミエ」など、いろいろバリエーションがありますよね。
ただ、仮に法的には問題なかったとしても燃える=マイナスイメージに繋がるから、対処せざるを得ないのでしょう。とくにこれは「広告」ですから。以前、弁護士・福井健策氏がファストコンテンツについて整理したコラムに書かれた四象限の右下「非侵害・燃えた」の事例です。AI生成であることがアピールされていたから、余計に燃えた、とも言えそう。しかしこうなると、生成AI出力の利用はリスク要因と考えたほうがいいのかも。
図書館、2000年以降に3割増 本離れでも地域の「ハブ施設」に〈日本経済新聞(2026年5月9日)〉
記事の本筋と違うところへの指摘で申し訳ないのですが、
一方、本離れは進んでいる。文化庁の「国語に関する世論調査」(対象は16歳以上)によれば、1カ月に1冊も本を読まない人の割合は23年度に62.6%に上った。読書の冊数は5年に一度調べており、18年度以前の過去3回は40%台だった。
あのさあ……何度でも言いますけど、文化庁はその調査の報告書にちゃんと「調査方法の変更のため、令和元(2019)年度以前の調査結果は参考値となり、比較には注意が必要。」って書いてますからね。単純比較するな! あと、その数字は「雑誌や漫画を除く」であって、雑誌や漫画を含めると「読む」率は78.5%ですからね。危機感煽るような数字だけ都合良く使うな!
経済
海外小説の文庫本が2000円を突破していたが本はこれからどうなるんでしょう…「文庫本でこれか…」「電子書籍だけとか増えるのか?」〈Togetter(2026年5月4日)〉
まず円安があり、戦争の影響で原材料費の高騰もあり、トラック新法施行に向けた運賃の適正化もあり、取次・書店も利益確保のため値上げを要請していたりと、紙版の価格はいま上がる要素しかありません。ただ、それに伴い電子版の値段も上がっちゃうのは、消費者感情としては納得できませんよね。
紙版と電子版それぞれの収益ではなく、合算で考えるというビジネス上の理屈はわかります。でも、いま電子コミック市場の成長が鈍化しているのは、この価格施策にも要因がある気がしています。まあ、紙版との価格差が大きくなりすぎると、ますます電子版に流れてしまうって懸念もわかるんですけどね。近い将来「紙版はコレクターズアイテム」になっちゃうんだろうなあ。
Beyond websites: People Inc grows digital revenue despite Google traffic collapse(ウェブサイトを超えて:グーグルのトラフィック激減にもかかわらず、ピープル社はデジタル収益を伸ばしている)〈Press Gazette(2026年5月6日)〉
検索されやすいけどAIに代替されやすい「エバーグリーン」なコンテンツ(ガイド記事など)から脱却し、独自取材に基づいた新鮮な情報の報道へ舵を切ったことが功を奏しているそうです。また、ウェブサイト上の広告収入以外を増やしている、と。私は2025年の展望記事「【雑誌】脱広告ビジネスモデル」で「脱広告、脱プラットフォームが、メディアの今後の重要課題になる」と書きましたが、その方向性に間違いはなかったようです。
技術
AIボットトラフィックが前年比300%急増、メディアの広告収益は最大70%減——Akamaiレポートが示すメディア業界への深刻な影響〈Media Innovation(2026年5月4日)〉
CloudflareがAIボット対策でPay-per-crawlを始めたのは認識していたのですが、AkamaiもTollBitやSkyfireと連携してPay-per-crawlを始めていたんですね。気づいてなかった。こういうデータを出すのも、Pay-per-crawlの宣伝のためだと思えば納得できます。
「広告収益は最大70%減」については……それこそ生成AIが普及する前から、Google検索のアルゴリズム変更でアクセス激減なんてのはよく起きていたことだったりしますよね。薄くて軽くて汎用性の高い情報ページへのアクセスは、SEOによってほんの一時期たまたま下駄を履かせてもらっていたと考えたほうがよさそうです。そんなの、いつまでも続かないでしょ。
そういえば先月、GA4のリアルタイムを見たらなぜか 404 not found のページに大量のアクセスが来ていることがたまたま確認でき、調べてみたらシンガポールからの来訪でした。記事番号が数字で、下書き保存と合わせて連番なので、公開記事の番号はけっこうスキップしているんですよね。そんなの構わず連番で総当たりしているボットでしょう。その前は中国蘭州からも同じようなアクセスがありました。
どちらも「エンゲージメント率」は極端に低いし、「アクティブユーザーあたりの平均エンゲージメント時間」が0秒だったりと、人間のアクセスではないことが予想できます。統計が極端にブレるんで迷惑。まあ、体感できるレベルでボットのアクセスが増えていることは間違いないです。ちなみにある日のアクセスログデータをGeminiに解析させたら、Meta-ExternalAgentがぶっちぎりのトップでした。
Google、戻るボタンをトリガーとしたAdSense全面広告を廃止。バックボタンハイジャックのスパムポリシーへの対応として〈海外SEO情報ブログ(2026年5月8日)〉
おお! 同じ社内でやってることは見て見ぬふりするか、屁理屈の抜け道で「これはセーフ」扱いしそうと予想したんですが、外れましたね。うれしい誤算だこれは。しかし、鈴木氏も書いているように、ペナルティー開始の6月15日ギリギリまで引っ張るところが……「迷惑なので今すぐやめてもらって構わないのですが」に強く同意。
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新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について
クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。
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雑記
文学フリマ東京42、HON.jp Booksブースにお立ち寄りいただきありがとうございました。南1-2ホールを回っている余裕がなかった……無念。今年は他地域にも出ようと思い大阪14と福岡12に申し込んだのですが、抽選になってしまいました。どうなるかな? 東京43は抽選なしで出店予定です。




















