「漫画村首謀者に実刑判決」「LINEマンガのバックエンド、ebookjapanと共通化へ」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #475(2021年5月30日~6月5日)

角川武蔵野ミュージアム 外観

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 2021年5月30日~6月5日は「漫画村首謀者に実刑判決」「LINEマンガのバックエンド、ebookjapanと共通化へ」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。

【目次】

政治

「漫画村」運営者の男に有罪判決 福岡地裁〈朝日新聞デジタル(2021年6月2日)〉

 海賊版サイト「漫画村」の運営者とされ、著作権法違反(公衆送信権の侵害など)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の罪に問われた住所不定、無職星野路実(ろみ)被告(29)に対し、福岡地裁(神原浩裁判長…

「漫画村」有罪の後に控えるのは「巨額の損害賠償」か、福井健策に聞く「判決の意義」〈弁護士ドットコム(2021年6月2日)〉

海賊版サイト「漫画村」の運営者だったとされる星野路実(ろみ)被告人が、著作権法違反と組織犯罪処罰法違反の罪に問われた事件。福岡地裁は6月2日、懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円(求刑懲役4年6カ...

 執行猶予無しの懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円という判決。著作権法違反(公衆送信権侵害)だけでなく、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)も認められました。これと民事の損害賠償は別なので、まだ「巨額の損害賠償」が待ち受けていることになります。まずはひと段落。

 次の課題は、ストリーミング型海賊版サイトということになるでしょう。ベトナムには発信者情報開示制度が整備されていないため、「海賊版天国」になってしまっているというニュース解説がありました(↓)。

人気漫画などをインターネット上で無断公開する「海賊版サイト」が海外に拠点を移している。「漫画村」の摘発以降、台頭してきたのが「ベトナム系」と呼ばれる海外組織だ。昨年の被害額は約2100億円と過去最悪の見込みだが、発信者の追跡が難しいことなどから、捜査当局による運営者などの摘発はゼロだった。専門家は「深刻化する権利侵害を防ぐには、国レベルでの対策が急務」と指摘する。画面上に黒を基調とするシンプル

社会

オーストラリア図書館協会(ALIA)、公共図書館の分館が少額の年間使用料を支払うことで出版社がオンラインの読み聞かせでの絵本の利用を許可する取組(試行)に係る最初の四半期の報告書を公表〈カレントアウェアネス・ポータル(2021年5月31日)〉

 #458でピックアップした、読み聞かせ動画の事前許諾スキーム。参加館が年間150オーストラリアドル(約1万2700円)を支払うことで、自館のソーシャルメディアに読み聞かせ動画を投稿できるというもの。今回の試行は半年間限定で、最初の四半期の結果が公表されたというニュースになります。

 参加した分館は約3分の1の115。5万オーストラリアドル(約423万円)が著作権者や出版者に分配され、参加館からも好意的な意見が寄せられているそうです。コロナ禍で「読み聞かせ動画」にニーズがあることは明らかになっているので、日本でも同じような展開ができればいいのに、と思います。

本屋を失った街に三省堂書店が現れた日―北海道の留萌ブックセンター(上)〈nippon.com(2021年5月31日)〉

人口2万5千人の留萌市から本屋が消えたのは2010年12月。それから7カ月後、人口30万人以上でないと出店しないルールを持つ三省堂書店が出店した。それはどうしてだったのか。

人口2万人の街で10万冊の書店が成り立つ理由―北海道の留萌ブックセンター(下)〈nippon.com(2021年6月1日)〉

人口減と出版不況。ふたつの「負」を打ち返すように10年続いてきた北海道留萌市の留萌ブックセンター。売り上げが予算を割ったことはない。地域の人と書店員の思いを重ね合って続いてきた10年の物語。

 2010年12月に最後の書店が倒産、その後、市民の誘致により三省堂書店が開業した留萌ブックセンターへの密着取材記事です。市民が誘致のため発足した「三省堂書店を留萌に呼び隊」が、最終的にはなんと8000人の入会申込みを集め、その後も「応援し隊」としてボランティアでお店を支えているそうです。限りなく非営利に近い事業形態と言っていいでしょう。

 というか、ここまで市民が手を貸しているなら、非営利法人にしちゃったほうが税制優遇や助成制度などの面で良いような気も。書店ゼロ自治体に市民の共助で非営利書店を展開するというのは、人口減少期の日本の地方におけるやり方の一つとして「アリ」ではないかと思います。

 そのいっぽうで、ローソンが新ブランド「LAWSON マチの本屋さん」の展開を始めたというニュースも(↓)。書店併設コンビニといえば以前は「スリーエフ」が展開していて、仕事で車での移動が多かったころはよくお世話になりました。スリーエフは2016年にローソンと資本業務提携し、その後、ローソンへ転換。書店併設コンビニ路線は、ローソンが継承する形になっています。

ローソンは、日本出版販売と連携し、新ブランド「LAWSON マチの本屋さん」を立ち上げる。第1弾の店舗として、6月3日に、ローソン単独で運営する書店併設型の「ローソン狭山南入曽店」(埼玉県狭山市)をリニューアルオープンする。

住民は全員“漫画家”志望! 令和版「トキワ荘」に赤松健氏「賃料の安さと環境が重要」〈ABEMA TIMES(2021年6月5日)〉

ここは東京・日野市にある集合住宅「多摩トキワソウ団地」。部屋に住んでいるのは、なんと全員“漫画家”だ。 元々団地だったこの住宅。今月1日に発表してから、翌日には全29室中28室が埋まったという。建物内にはワーキングスペースがあり、グループで漫画制作も可能。キッチンやランドリー、シャワーブースといっ…

 漫画家志望者向けシェアハウス事業の「トキワ荘プロジェクト」が、団地へ新展開。日野市の団地をリノベーションする事業「りえんと多摩平」内で提供されるサービスとのこと。発表直後にほぼ埋まって、増室も決まったそうです。東京近郊にはこういう高度経済成長期に建てられた団地がたくさんありますし、漫画家以外のクリエイター志望者にも展開できそう。今後がさらに楽しみです。

経済

インドのアマゾンではショッピングページで新聞や雑誌記事を読める〈TechCrunch Japan(2021年5月29日)〉

インドでスーパーアプリになりたいという思いが募るAmazonは、このショッピングサービスでのユーザーの滞在時間がなるべく長くするために、「特集記事」という新しいサービスのテストを行っている。

 インド向けのショッピングアプリ上に「Featured Articles」(特集記事)という機能をローンチ。記事は地元メディアや雑誌のものですが、一部にはアマゾン独占のものもあるそうです。

 このニュースで思い出したのが、2016年8月「楽天マガジン」発表時の記者会見。「(将来的には)ただ雑誌が読めるというだけではなく、雑誌記事から楽天市場での買い物や、楽天トラベルなど楽天の他サービスへ連携する仕掛け」を用意したいと言ってたんですよね(↓)。

楽天株式会社が月額380円(税別)の雑誌読み放題サービス「楽天マガジン」を発表しました。先行する「dマガジン」や「Kindle Unlimited」に対抗する形です。現地に来ていますので、可能な限りライブで更新します。

 インドのアマゾンとは誘導する目的や方向が違いますけど、記事情報を買い物へ活用という大枠では同じ。ただ、「実現できていない」点は大きな違い。誌面のレプリカを配信するだけでない、面白い展開を考えているなと、当時は期待していたのですが。

LINEマンガとebookjapan、バックエンド共通化へ〈Impress Watch(2021年6月2日)〉

ヤフー系の電子書籍サービス「ebookjapan」を運営するイーブックイニシアティブジャパンは、「LINEマンガ」を運営するLINE Digital Frontierとの業務提携を発表した。今年度後半にLINEマンガのバックエンド業務を受託する。

【ゲーム株概況(6/2)】KADOKAWAが大幅反発 「LINEマンガ」と提携のイーブックがS高…ビーグリーなど電子書籍関連の一角が賑わう〈Social Game Info(2021年6月2日)〉

6月2日の東京株式市場では、日経平均は3日ぶりに反発し、前日比131.80円高の2万8946.14円で取引を終えた。新型コロナウイルスワクチンの職場などでの一般向け接種が前倒しで始まる見通しとなったことで、接種の進展による経済活動の正常化を期待した買いが広がった。そうした中でゲーム関連株の動きを見てみると、KADOKAWAが大幅反発したほか、ブシロードやエイベックス

 2019年11月にヤフーとLINEの経営統合が発表されたときからなんとなく予想はしていましたが、やはり。次のステップは「Yahoo!ブックストア」と同様、完全なサービス統合でしょうか。リソースの分散ですもんね。棲み分けに意味があれば残すでしょうけど。

 この報道を受け、イーブックイニシアティブジャパンの株価は一時ストップ高。2000年創業の老舗電子書店だけあって、電子取次を介さず著者や出版社と直接取引している点が今後のポイントになるでしょう(↓)。独占配信している横山光輝『三国志』や永井豪『デビルマン』といった名作が、「LINEマンガ」に提供される日は来るのでしょうか。

 逆に、2013年4月から「LINEマンガ」のシステム提供を行ってきたメディアドゥの株価は急落。なお、有価証券報告書によると、LINE Digital Frontierとの取引額は直近の2021年2月期で約170億円、売上構成比では約20%を占めています。ううむ。

技術

新しいWeb出版ツールを公開しました!〈Romancer(2021年6月1日)〉

みんなが〝作家〟の世界です新しい時代のWeb出版ツール 公開しました!新たに開発したWeb出版ツール「NRエディター(New Romancer Editor)」を6月1日に公開しました。誰でも自由にお...

 ボイジャーの電子出版ツール「Romancer」の新サービス、ブラウザから利用できる「NRエディター(New Romancer Editor)」がオープンベータ版になりました。いまのところ誰でも無料で利用でき、フィードバックを受け付けています。

 私は実はクローズベータ版を利用させてもらっていたのですが、「余計な機能は捨て去る・できる限りやらないをモットーとする」という割り切りと潔さがなかなか良いです。「縦本中」という、縦書き本文の左右中央揃えページ機能が面白い。「ここぞ」という一行を目立たせる、印象的な演出に使えるでしょう。

Twitter 、ようやく本気を出しはじめる:新製品&機能の続々投入に、興味津々のステークホルダーたち〈DIGIDAY[日本版](2021年6月1日)〉

Twitterは長年にわたり、ビジネス判断が遅い、優柔不断だと批判されてきた。だが、今年になって、製品や機能の変更を立て続けにリリースしている。ようやく、Twitterの翼は、羽ばたく兆しを見せているようだ。それにより、パブリッシャーやクリエイターがTwitterに新たな関心を寄せている。

 最近になって急に、ニュースレター、サブスクリプションサービス、投げ銭機能、「Clubhouse」対抗の音声会話機能などを矢継ぎ早にリリース・発表。若干「迷走気味」という声も散見されますが、日本で展開されているオープン型のSNSとしては最上位クラスのサービスなので、注目しておきたいところ。

 全員一斉にローンチされるわけではなく、影響力(フォロワー数?)の大きいユーザーから限定的に提供されているため、まだ試すことすらできない機能も多い点が個人的には若干辛いところではありますががが。

イベントのお知らせ

落合早苗氏「『なかったことにしたくない』から、次の一歩へ」
 6月19日(土)15時ごろからオンライン配信。14時からの通常総会が終わり次第開始するため、多少時間が前後する可能性があります。一般の方も YouTube Live にて視聴できます。詳細はこちらのお知らせをご覧ください。

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CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 595 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 明星大学でデジタル編集論・二松學舍大学でエディティング・リテラシー演習担当の非常勤講師 / 日本出版学会員 / デジタルアーカイブ学会員 / 主な著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)/ プロフィール画像は©鈴木みそ氏