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株式会社ブックウォーカーは2月1日、運営する電子書店「BOOK☆WALKER」の Android / iOS アプリ内の[本棚]機能を大幅リニューアルしました。収納冊数大幅アップや表紙サイズ調整機能以外に、驚きの新機能も登場しています。どういう意図なのか? 開発担当者に話を伺いました。
関係性明示
本稿で取り上げている株式会社ブックウォーカーは、NPO法人HON.jpの法人会員です。ただし、本稿は法人会員の特典ではありませんし、記事広告でもありません。当メディアの編集権は独立しており、本稿の執筆は筆者の意思によるものです。
従来も[一覧]機能は他社より使いやすかった
電子書店「BOOK☆WALKER」のサービス開始は2010年12月。履歴を確認したら、筆者が初めて購入したのは2012年4月のことでした。「BOOK☆WALKER」ではアプリ内の[一覧]メニューで、並び順を[購入日順]にすれば、年・月単位で何冊購入してきたか? がすぐに確認できるようになっています。
「その程度のこと、できて当たり前じゃないか」
電子書店をあまり利用していない方は、もしかしたらそう思われるかもしれません。でも実は「その程度のこと」ができない電子書店が非常に多いのです。ライブラリー機能が貧弱な電子書店では、セールで買ったはいいけど読まずに積んでいる「積ん読」が捗るという、あまり嬉しくない状況に陥りがちです。
その点、「BOOK☆WALKER」アプリの[一覧]メニューは、並び替え項目が比較的多く、年・月単位で折りたたむことができたり、未読・読みかけ・既読が判別しやすかったりと、痒いところに手が届く作り込みになっています。長く利用するほど、購入数が多くなるほど、こういうところのきめ細かさが重要なのだと骨身に沁みます。
そういう意味で筆者は「BOOK☆WALKER」を他社サービスより高く評価し、積極的に利用してきました。通算購入冊数は3000以上ですが、[読書ノート]で確認できる既読率は8割を超えています。ここで買っているのがエンタメ系中心というのもありますが、まだ読んでいない本へのアクセスしやすさ、というのも大きいでしょう。
[本棚]機能には不満があった
自分で整理整頓できる[本棚]機能も、デザインが変えられる「きせかえ本棚」など他社サービスにはない特徴がありました。しかし、見栄えが良く収納冊数が多いデザインほど表紙画像は小さくなり、どれが何巻か見分けがつかないような状態になってしまう欠点がありました。
3×3の9冊収納本棚であれば表紙が映えるのですが、こんどは収納冊数の少なさから巻数の多いシリーズだと不便になってしまうという不条理。また、スマートフォンの大型化に対応仕切れず、縦向きでは上下に、横向きでは左右に大きなスペースが空いてしまうのも不満でした。
そのため筆者は、普段は[一覧]を利用し、完結したシリーズなどを[本棚]へ収納してたまに見返す、という使い方に留まっていました。つまり残念ながら「BOOK☆WALKER」の[本棚]機能は、ずらり並んだ表紙を眺めてニヤニヤしたいという筆者のコレクター魂を、充分に満足させるものではなかったのです。少なくとも、これまでは。
リニューアルのお知らせが!
昨年12月の初旬、「BOOK☆WALKER」から「アプリの本棚をリニューアルします」というお知らせが出ました。正直、「やっとか!」と声が出ました。予告された内容は、収納数大幅アップ、表紙サイズ調整機能、シリーズまとめ表示機能。そして気になる「ヒミツの新機能にも挑戦中…」という記述。
実は「表紙を任意に拡大縮小できるようにして欲しい」という要望は、ブックウォーカーが2015年にファン感謝祭を開催した際、筆者がスタッフへ直接伝えたことでもありました。もう何年も前のことですし、恐らく他のユーザーからも多く寄せられていた要望でしょう。「やっとか!」とは思いつつ、もうすぐ実現することにワクワクしました。
ただ、お知らせでチラ見せされている開発中画面を見る限り、どうやら「きせかえ本棚」機能は廃止されそうだ……とも思っていました。ところが今年に入り、リニューアル第2弾の告知と同時に「アプリのリニューアルに伴う、きせかえ本棚デザインの置き換えについて」というお知らせが出ました。完全な廃止ではなく、カバー画像エリアに反映可能、という形で残ることになったのです。購入特典という形で入手したきせかえ本棚も多かったため、ホッと胸をなで下ろしました。
そうこうしているうちに、ブックウォーカーの方から「HON.jp News Blogで今回のリニューアルについて取り上げていただけませんか? 開発担当者へのオンライン・インタビューなど調整させていただきます」という打診が。せっかくなので、「ヒミツの新機能」など、気になる点をお伺いすることにしたのです。取材は1月22日に「Zoom」で行いました。
「Kindleの本や、Twitterマンガも並べられるようにしました」
ブックウォーカーの開発担当者・柳瀬直裕氏曰く、今回の[本棚]リニューアルは2年越しの大型プロジェクトだったとのこと。10年前のスタート時とは大きく状況が変わり、1000冊持っていることが普通の状態になり、使いづらくなっていることもわかっていたそうです。
柳瀬氏は「リアルな本棚でも、どう並べるか? は本を愛する人にとって大事な行為です」と、思いを語ってくれました。本を並べて確認する行為へのこだわりは、ブックウォーカーにとってもアイデンティティに近いのだ、と。だから改めて、やりたかったことや求められていることを検討し直し、徹底的に掘り下げて作り直したら、こんなに時間がかかってしまったそうです。
そして予告時点では「ヒミツ」だった新機能の話を伺い、筆者は仰天しました。「Kindle」の本や「Twitter」で連載されているマンガも、[本棚]へ並べられるようになるというのです。これはつまり、複数のサービスを利用すると本棚が分散してしまう悩みが、解決するかもしれないのです。
これまでも「BOOK☆WALKER」では、「BookLive!」「ブックパス」など他社サービスとの本棚連携に取り組んできました。従来の連携方式は、「BOOK☆WALKER」で購入した本と同じように、アプリで読めるというものでした(※ただしKADOKAWAグループの本に限る)。
今回の新機能はこれまでとは異なり、「BOOK☆WALKER」の[本棚]で本をタップすると、所有元のアプリが起動する形になります。つまり、ライブラリーを共有するような「本棚連携」ではなく、他のアプリへリンクが張れるようになるという、アプリ間連携の機能なのです。「そういうアプローチがあったか!」と、筆者は感心させられました。ただ、現状では1冊ずつ自分で登録するしかないので、正直、かなり手間がかかりそうではあります。また、いくつか試してみたところ、すべての本に対応しているわけではないようです(ボーンデジタル本は非対応の模様)。
柳瀬氏は「将来的には、どこのサービスでもできるようにしたい」と、今後の展望を語ってくれました。また、「ブックウォーカーは、不満に思ったことを言ってもらえれば、できる限り直します」とも宣言してくれました。もちろん相反する要望を両方叶えるのは無理ですし、すぐにできないこともあるでしょう。でも、不満に思ったらまずはフィードバック、というのを今後も心がけたいと思いました。
参考リンク
BOOK☆WALKER