ロシアのコミック事情インタビュー

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 モスクワではこの10月3日から「コミ・コン」(Comic Con Russia)が開催される予定だが、ゲームイベント「イグロミール」(IgroMir Expo)も同じ場所での開催となる。2つのコンベンション合わせて16万人の来場者を予定しており、ゲームとグラフィック・ノベルの相性がいいことを伺わせる。

 取材に応じているのは昨年18タイトルを刊行、3万6300部を売り上げた『バムクニーガ』(Bumkniga)のドミートリィ・ヤコヴレヴ社長。2008年創立以来、年20%増の成長率で、国内外の著者によるコミックを手がけてきた。

コミック市場について

「出版コンテンツが多様化し、本の単価も値上がりしている。コミックはその中でも成長株だが、まだまだロシア人にとって馴染みの薄い読み物だということを忘れてはいけない。この数年で刊行点数は飛躍的に伸びたが、1タイトルあたりの部数は落ちている。アメリカやフランスのような人気になるのはまだまだ先のことだろう」

ロシア市場の問題点

「流通チャンネルがなく、書店数も限られており、刊行物を紹介してくれるジャーナリズムもない。さらに定価販売ではないので、大手同士で安売り競争になってしまっている。そして、Eksmo-AST(編注:ロシア最大の出版社の1つ) のような大手が市場独占を狙っているのも、市場を複雑なものにしている」

「うちの翻訳ものでイチ推しなのは、『ピルエット』というグラフィック・メモワールで、アメリカ人のフィギュアスケーター選手の話。学校でのいじめや、親との確執や、性への目覚めなどが綴られているストーリー」なのだそう。

参考リンク

パブリシング・パースペクティブの記事
https://publishingperspectives.com/2019/07/graphic-novel-comics-publisher-russia-dmitry-yakovlev-bumknigo/
ロシアのコミック史についてのインタビューが載ったコミックス・フォーラムの記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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