英書店チェーンの従業員が最低限の生活賃金を求めて署名運動

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 イギリス最大手の書店チェーン、ウォーターストーンズの従業員約6000人が「真の生活賃金」分の時給を求めて署名運動を起こしたと複数のメディアが報じている。

 生活賃金基金(The Living Wage Foundation)によるとロンドン近郊の生活賃金は時給10.55ポンド(約1536円)、それ以外のイギリス全域では9ポンド(約1312円)とされている。[編注:生活賃金とは、最低限必要な生活費から算定した賃金のことで、最低賃金とは異なる]

 この署名運動を始めたのはウォーターストーンズのピカデリー店で働くエイプリル・ニュートン氏で「ウォーターストーンズの書店員は皆、本に関する知識が豊富で、長時間労働をしている。セールスの最前線で働くこういう人たちが買い叩かれているのはよろしくない。署名に多くの反響があって驚いている」とコメントしている。

 署名は数週間のうちに業務執行取締役のジェームズ・ダーント氏の元に届けられるという。ダーント社長は署名のことは聞いており、既に地方支店との会議でウォーターストーンズでの進級制度について話し合い、ベテラン書店員の待遇を改善することに焦点を当てると発表しているが、英インディペンデント紙が取材した当時は「ウォーターストーンズは、書店員の給料を上げられるほど利益が出ていない」と回答した。

 署名運動の報道を受け、作家のケリー・ハドソンがこれを支持する書簡を公開したところ、デイヴィッド・ニコルス、サリー・ルーニーといった様々なジャンルのイギリスの著者ら1300人を超える署名が集まった。

参考リンク

英The Booksellerの記事
https://www.thebookseller.com/news/waterstones-booksellers-campaign-living-wage-975301
英インディペンデント紙の記事
https://www.independent.ie/world-news/waterstones-not-profitable-enough-to-pay-real-living-wage-37948401.html
英ガーディアン紙の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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