【EPUB有料連載リンク】第22回 Kindleか?iPadか? — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、昨年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

1月コラムから

Kindleか?iPadか?

 CESでは、多くの電子書籍リーダーが紹介された。(実機操作をさせない)ショーの性質のせいで、私は動かしてみることができなかった。それらは「Kindleのような」とか、「iPadのような」などと説明されていた。専用の電子書籍リーダー対電子書籍リーダー・アプリが動作させられる、より汎用的なタブレットという構図だ。

 これらすべてから、一つのことが明らかになる。つまり、この業界では、電子書籍の指数関数的な成長が予想されている。もちろん、こんなことはニュースではない。Amazonは、何か月も前に電子書籍の販売高がハードカバーを追い抜いたとレポートしている。印刷版の書籍の販売がどうなるにしても、電子書籍の未来が非常有望であることはかなりはっきりしている。著作者が旧作と新作の両方を電子書籍形式で自己出版する傾向が高まっていることと、電子書籍形式の教科書が急増していることの両方を考えあわせると、我々の多くが将来、電子書籍リーダーを使うことになるだろう。すると疑問が生じる。KindleとiPadのどちらを使えばよいのだろう?

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

自己電子書籍出版プラットフォーム

 10月の電子書籍のイベントに、ある自己電子書籍出版プラットフォームが出展していて、代表者がパネルディスカッションに出ておられました。EPUBを制作するプラットフォームを無料提供して、販売したい場合は課金ができるということでした。EPUBファイルを自作できる方法が出現したのは画期的でした。利用している漫画家の方が、価格は著作者が自由に設定して、いつでも変更でき、著作者側のロイヤリティーは70%なので、たいへんよいと話しておられました。

 私が春ごろ期待していたAmazonの自己出版によく似たモデルなので、イベントが終わった後、翻訳コラムの販売をしていることを説明して、実際にどれぐらい売れるものか尋ねてみました。

 すると、実際には投稿作品の80%が無料提供で、一定数売れているのは、すでに紙の著作を持っていて、ある程度知名度のある著作者が、SNSなどで相当数のフォロワーを持ち、新刊をここで発売したことをSNSで知らせると、読者が一直線に買いに来るというパターンだということでした。

 つまり、すでにある程度読者を確保している著作者なら、電子書籍を制作できて、どこかしらに販売/課金機能さえあれば、宣伝費をかけずに効率的に販売して、高い収益を得ることができるということです。

 この種のプラットフォームはその後いくつかできていますが、文芸作品や写真のように才能がものを言うコンテンツを公開して、知ってもらうには、非常に有効な方法だと思います。このイベントには写真家の方々も出展していて、パネリストの一人も写真家でした。写真集は上質紙を使うため造本費用が高額で、新進の写真家が写真集を出版社に出してもらうのは非常に難しいということでした。

 こういったプラットフォームを利用して電子書籍で写真集を作って無料提供すれば、まず、写真そのものを何枚でも見てもらうことができます。

 文芸作品にしろ、写真にしろ、最初は誰もが素人ですし、未完成で荒削りな作品でも、こういった場所で無料提供した本がプロの編集者の目に止まって、プロデビューする、ということが起こるかもしれません。欧米ではすでにそういうケースが出てきています。

 いずれにしても、私はこれから読者を開拓しなければならない状態でした。翻訳なので、著者本人がSNSで発信することもできません。あらゆる点でこういったプラットフォームを活用できる条件にまったくあてはまりませんでした。

 私がこの計画に踏み切ったのは、米国では、数年前から実績のある著作者を含めて、多くの著作者が自己電子書籍出版プラットフォームを利用していて、ある程度成功している人がいることを、このコラムで知っていたからでした。しかし、自己電子書籍出版プラットフォーム実情を知って、仮に外資系企業が日本で個人でも利用できる自己出版サービスを始めたとしても、たぶん同じことになるだろうと思いました。期待して待っていただけに、ちょっとがっかりしました。

 それでも、このイベントに参加して、すばらしい方々と知り合うことができました。一人では考え付けなかったアイデアを提案されたり、初めて知り合った方にとても有益なお話を伺うこともできました。よいご縁を得られたことをうれしく思っています。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/

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