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インターネットがインディペンデント書店を殺した、のではないかもしれない。1995年以来アマゾンの台頭で「ブリック&モルタル」と呼ばれるリアル書店の危機が言われてきたし、2007年にキンドルのデバイスを発表すればしたで紙の本がなくなるとまで言われていた。だが大手チェーンのバーンズ&ノーブルの迷走やボーダーズ倒産にもかかわらず、家族経営のインディペンデント書店数は微増している。そして本を殺すといわれたインターネットは、インスタグラムなどの SNS を提供し、小さな本屋さんに新しい息吹を吹き込んでいる、と解説系オンラインニュースメディアの Vox が伝えている。
全米書店協会(American Booksellers Association)によると、2009年から2015年にかけて、アメリカのインディペンデント書店は35%も増えた。2013年から毎年紙の本の売り上げは伸び続け、10.8%増となっている一方で、既存出版社から刊行されるEブックは2016年から2017年にかけて10%落ちている。インディペンデント書店が好調な理由のひとつは、SNS を使って地元コミュニティに密着しているからだ。
スマホを枕元に置いて寝るのがあたりまえの時代に、多くの人々は「自分は賢くて、読書好き」というイメージを SNS で作りたがる。インスタグラムでは #bookstagram というハッシュタグに2600万枚もの写真がアップされ、文豪の著書と写真におさまる人で溢れている。
スマホ中毒を認識する一方で、そこから脱しようと敢えて本を手に取る者も多い。年に100冊読む宣言をし、自分のライフスタイルに合った本の写真をあげたり、自宅の本棚の背表紙を色別に並べて「インスタ映え」を狙ってみたり。
インディペンデント書店の復興を研究しているハーバード・ビジネススクールのライアン・ラファエリ教授は、デジタル時代の本屋の成長のカギは「コミュニティを創る」ことに限ると言う。「地元の本屋にくることで、このコミュニティの一員なんだと再確認し、本を買うだけでなく、同じような考えを持つ人に出会うことを期待している」と解説する。そして本屋でのイベントに来る若い層は競ってその様子を SNS にアップし、拡散する。「次の世代は、コミュニティを実際の場としてだけでなく、オンラインのコミュニティと考えていて、書店はそれを承知しているわけです」
いちばんインスタ映えする本屋といえば、ロサンゼルスの Last Bookstore だろう。2011年にオープンした店内は、本でできたトンネルや窓など思わず写真に撮りたくなるような本のオブジェで溢れている。一方で、昨年ニューヨークのブルックリンにオープンしたばかりの Books are Magic 書店では、開店前から SNS でアピールしていた。「本は魔法」というキャッチーな店名も一役買って、グッズも売れている。(日本のポップアップストアで売るからと、トートバッグを100も買っていった女性もいるとか)例え1冊の本も買わなくても、店舗の壁画の前で写真を撮る者も後を絶たない。
だがこういった行為は単に「見栄を張る」以上に本の売り上げにつながるのだろうか? Vox の記事のライターは自分こそ、記事に書かれたトレンドにすべてハマったついでに、努めて地元の書店で本を買う機会が増えたと証言している。
参考リンク
Voxの記事