混沌の時代に求められる「ブレイニー」な本

 予想外の本が地道に売れ続けるとき、なぜその本が求められているのかを考えると、歴史的な背景が見えてくるという考察を英ガーディアン紙が寄せている。

 例えば、イギリスで2014年9月に刊行されたイスラエルの学者ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』。難解深遠な人類史の分厚い本だが、次の『ホモ・デウス』(日本語版は河出書房から9月6日に刊行予定)が出てからも売れ続け、イギリスで20万部に達している。

 このトレンドにいち早く気づいたのは英業界誌「ブックセラー」で、Brainy Backlist と名付け、その裏返しとしてセレブの自伝が落ちていると書いた。つまりは先の見えにくい、混沌とした社会において、これから世界はどうなるのかという漠然とした不安に光明を与えるような本が求められているというのだ。

 ハラリの本以外にも、シッダールタ・ムカジーの『がん−4000年の歴史』、通商の歴史を描いたピーター・フランコパンの『Silk Road』、エリザベス・コルバートの『6度目の大絶滅』、アトゥル・ガワンデの『死すべき定め』などが「ブレイニー」な本として挙げられている。

参考リンク

英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2018/jul/29/why-brainy-book-became-publishing-phenonmenon

藤井太洋の頭の中
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NPO法人日本独立作家同盟 理事。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。