「取協・電流協がデジタル印刷(DSR)の普及活用推進共同宣言」「KindleストアでDRMフリーの本がPDFでダウンロード可能に」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #699(2026年1月18日~24日)

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 2026年1月18日~24日は「」「」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

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政治

東書商目黒支部が図書調達で陳情 全会一致で東京初の採択〈The Bunka News デジタル(2026年1月23日)〉

 年末に飯田一史氏が紹介していた兵庫県明石市の事例は「請願」でしたが、こちらは「陳情」です。陳情は自治体によってルールが違うようですが、陳情が議会で「採択」されたということは、効力的には同じということになるでしょう。

 しかし、「これまで5%値引きで販売」していたというのもひどい話ですが、このままだと自治体予算そのものは変わらないため「定価販売によって購入冊数が約5%減少する懸念」があるとのこと。予算増額を求める陳情第2弾を準備しているそうです。

社会

「作品のAI学習や加工は禁止」、一迅社のBLレーベルが呼び掛け〈ITmedia AI+(2026年1月19日)〉

 先週の「百姓貴族」公式とウィングス編集部、ナンバーナインに続く事例としてピックアップしておきます。

イラストレーターなど芸術系フリーランスに聞く「生成AIで収入は増えた? 減った?」 調査団体が約2万5000人にアンケート〈ITmedia AI+(2026年1月20日)〉

 こちらの調査、2万5000人近い回答を集めた努力は認めてあげたいのですが、集め方に問題があるため残念ながら鵜呑みにはできません。募集当時、私も答えてみようと思ったら、Googleフォームなのはまだしも、メールアドレス1つにつき1回縛りさえやっていないことがわかり、これはダメだと回答するのをやめました(※メールアドレス1つにつき1回縛りの設定がしてあったとしても、同じ人が複数のメールアドレスから回答することは避けられないので、多少抑止できる程度の話ではある)

 以前、パブコメに大量の同一意見が送られてくることを問題視しているニュースがありましたが、パブコメは意見の量に判断が左右されないからまだマシなのです。こういうアンケート調査の場合、同じ人が何度も回答して批判の声が大きいように見せる工作に使われてしまった可能性が否めません。

 2025年10月21日に「開始4日で回答は15,000件を超え、締切である10月31日まで10日を残した段階で約24,000件となっています」というリリースが出たタイミングでそういう設定だったことを確認していますので、最終回答数24,991件のうち重複回答がどれだけあるか……。

経済

ファミリーマート、個人のイラスト作品を複合機で全国販売 1枚300円から〈日本経済新聞(2026年1月18日)〉

 以前から「ネップリ」という略称のサービスを利用して自作を販売しているクリエイターの存在は知っていたので、これって従来のサービス(例:メディバンネップリと何が違うんだろう? とちょっと不思議でした。ファミリーマートが、個人クリエイターと直接取引する形になるのですね。プラットフォームから中間事業者が徐々に排除されていくのは世の常だなあ。

ピッコマの“落とし穴” 販売終了になった漫画はまるっと購入していても冒頭3話が読めない──運営の見解は〈ITmedia NEWS(2026年1月19日)〉

 ちょっと従来とは違った形の“消える電子書籍”問題。プラットフォームが終了するわけではなく、作品の配信が止まる(販売終了)ことにより、購入した話は継続して読めるけど、無料配信されていた冒頭の数回が読めなくなってしまう、というトラップです。日本語として変ですが「無料で購入」という形式になっているプラットフォームだと、配信停止になっても読み続けられるはず。地味にややこしい。

法律書検索、AIに質問 弁護士 二木康晴氏〈日本経済新聞(2026年1月19日)〉

 法律書籍の読み放題サービス「リーガルライブラリー」で、自然言語で質問(検索)できる機能の試験運用が開始されたそうです。「開発にあたっては著作権者への配慮を強く意識している」と「2026年春には追加料金で利用できる正式版の提供を始める計画」を合わせて考えると、追加料金もしっかり権利者へ分配していく計画ということなのでしょう。東洋経済の「四季報AI」のように自社で提供できれば良いのでしょうけど、こういったプラットフォームを活用するのも次善策として悪くはないと思います。

取協と電流協、デジタル印刷推進で共同宣言〈新文化オンライン(2026年1月20日)〉

 デジタル・ショート・ラン(DSR)の普及と活用を推進していきます、という宣言です。私も取材に行ってきました。質疑応答で真っ先に手を挙げて尋ねたのが、ざっくり言うと「出版印刷は地産地消へ向かうのか?」という話です。取協・電流協の方々もそういう認識はちゃんと持っているようだったので安心しました。

 いまは東京の地場産業と言われるくらい出版関連企業が東京に集中していて、東京近郊から全国に発送しています。大量製造・大量返品で回っていた時代はそれでも良かったけど、広い日本列島で今後もそれを続けるのは非効率です。DSRの体制が整えられるなら、現地で印刷製本販売したほうが輸送費や二酸化炭素も削減できるわけです(その究極系が「エスプレッソ・ブック・マシン」ですが残念ながら普及はしませんでした)

 ショートランなら50部から500部くらいまでの少部数製造ができて、単価はそれほど変わらないはずですから、将来的には50部から500部を全国10箇所で同時に製造、みたいなことも可能だと思うのですよね。もちろんデジタル印刷機導入コストとランニングコスト次第ではありますが。地方の同人誌印刷ではデジタル印刷機がけっこう使われるようになっている印象があります。

 関連して、他紙記者の質問への回答で「競争領域と協調領域」という話があったのが印象的でした。要するに「どこの印刷会社へ発注するかは出版社の自由だし、そこは競争領域だから、業界団体でどうこうできる話ではありません。我々がやるのは、DSRの仕様とか業務の標準化といった協調領域です」と。

 つまり「地産地消」と「協調領域」の2つを合わせて考えると、地方の印刷会社がDSRの標準仕様にのっとったサービスが提供できるなら、東京近郊の大手から仕事を奪っていくことも可能、ということになるわけですよね。そこは競争ですから。

 電流協(大日本印刷やTOPPANが中心)の方々がそこもちゃんと認識した上で推進すると言っているのは、覚悟が感じられて好感を持ちました。「2030年までにDSRの割合が3割を超えていないと厳しい」という数字の話もありました。KADOKAWAのように返品率が大幅に下がるはずですから、導入が進むといいですね。

 そういえば私はいつごろからデジタル印刷について記事を書き始めたんだっけ? と記録を辿ってみたら、懐かしい記事が掘り出せました。2014年6月にJEPAセミナーでインプレスR&D(当時)の「NextPublishing」の説明が行われたときのレポートです。亡くなられた井芹昌信氏がまだお元気だったころ。懐かしい。

出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言 | 活動報告〈一般社団法人 電子出版制作・流通協議会(2026年1月21日)〉

 3つ目の電流協「デジタル印刷活用時の業界標準ガイドライン(電流協DSR仕様)」PDFをご覧いただくと、用紙とか対象判型・色数・綴じ(無線のみ)などの製造仕様が決められていることがわかります。要するに「出版社(編集者)のわがままが通らない」代わりに、小ロット生産で効率化が図れるということです。

 裏を返せば、DSR+ちょっと変わった紙とか特色とか箔押し、みたいなことはできないのです。この辺りがDSR導入への障壁になることは見えています(KADOKAWAも相当大変だったと伺っています)。物理領域は規格品で横並びになるので、DSRで作る本は中身で勝負という感じになりますね。

 まあ、編集者がわがままを通したいなら、DSRを使わず従来通りの手法でやればいいわけです。ただし、従来通りの手法で請けてくれる印刷会社・製本会社が、いつまでその体制を維持できるか? という問題もあります。アフタヌーン2026年2月号の『ブルーピリオド』が、西陣織ですら技術継承が難しくなっている現実を目の当たりにした主人公が思い悩む展開でシンクロニシティ。

トーハン、「独立書店」開業支援200店へ 月5万円から注文も〈日本経済新聞(2026年1月24日)〉

 月5万円から注文可能というのは、ハードルが下がって良いですねぇ……ちょっと興味がある。他にしっかりした収益の柱があれば、その関連書籍の販売という補助的な形でやるのがよさそう。しかし、中小新興出版者が大手取次と取引する難しさは、相変わらずなんでしょうか? HON.jpで試す気はしないのですが。

 わりと最近の話なのですが、某取次の説明会に行ったら「定価販売じゃないと扱えない(再販契約が必須)」と言われ、取次がそこを縛るのかと唖然としました。それを決めるのって出版社側ですよね……と思ったら、どうやら「定価」が存在することを前提にシステムを構築してあるため、日本図書コード管理センターの「利用の手引き」で指定された通り非再販本の価格記号を00000に設定すると、倉庫の管理上問題が出てしまうらしく。なんだそりゃ!

技術

電子書籍(EPUB)ではHTMLは使えないことになりました — W3Cが苦渋の決断、Webと電子書籍の統合を阻んだ「XMLの壁」〈TechFeed(2026年1月20日)〉

 ほんのり悪意を感じるタイトル。まるで「これまではHTMLが使えていたが今後は使えなくなる」みたいに読めてしましますが、そうではありません。XHTML構文正確には「XML構文のHTML」だそうですを廃止してHTMLに変えようとしていたわけでもありません。

 次のEPUB 3.4の仕様では、通常のHTML構文「も」許容しようという提案が行われていたのですが、それでも出版社側の現状を大きく変えることになってしまう懸念が拭えないため、ひとまずは盛り込まれないことが決まったそうです。

 ウェブ標準技術がどんどん進化していく中で、EPUBの仕様もキャッチアップしてくべき派と、大きく変えるべきではない派という、意見の対立があった、という感じでしょうか。

KindleストアでDRMフリーの本は“その他のフォーマット”でもダウンロード可能になった――が、そもそもDRMフリーの本かどうかをユーザーが購入前に知る手段はいまのところなさそう〈HON.jp News Blog(2026年1月21日)〉

 昨年12月10日にKDPコミュニティからお知らせが出て、そのタイミングでは複数のメディアが取り上げ、中には「ビッグニュース」と煽ったメディアもあり、大きな話題になっていましたが、ユーザー向けの展開が始まったこのタイミングではどこも記事化していませんでした。まあ、それも無理はないと思います。

 私は、自分でKDPをやっていて、一部のタイトルはもともとDRMなしで配信していました。DRMなし配信がどういう仕様だったのかも理解していました。これって恐らく超レアケースなのですよね。ユーザー向けにリリースされても、私以外に検証して記事化できる人がいるだろうか? と思ったくらいでしたから海外メディアで私の後に同趣旨の内容で記事化された事例は見つけました

 そもそもDRMフリーの本を探す手段がないし、それ以前に、恐らくDRMフリーにしている本がほとんど存在しないという……まあ、おおむね予想通りの結果でした。とりあえずタイトルとキーワードに【DRMフリー】と入れたら、検索にも引っかかるようになりました。ほんのちょっとだけ売れてます。記事のバズり方に比べたら、ほんとうにほんのちょっとだけ。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

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雑記

 とあるメディア企業の社長とお話しする機会があったのですが、私が旧勤務先でお世話になった上司と仲が良いことがわかって、世間は狭いなあ……と感じました。ペンネームで活動しているから、以前の勤務先の人が私のいまの動向を知ることはほとんどないと思うのですが。(鷹野)

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著者について

About 鷹野凌 920 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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