日本マンガ学会、私的ダウンロード違法範囲拡大に反対の声明を発表

日本マンガ学会
noteで書く

《この記事は約 3 分で読めます(1分で600字計算)》

 日本マンガ学会(会長 竹宮惠子)は1月23日、今月末に召集される通常国会で審議される予定の私的ダウンロード違法範囲拡大について、反対声明を発表した。

 日本マンガ学会は、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会による中間まとめでは、以下のような問題が見逃されていると指摘している。

  1. 合法とは言い切れない二次創作のダウンロードまで禁止することで、海賊版研究だけでなく、二次創作研究をも明確に阻害することになる。
  2. 現在のインターネット環境においては、研究あるいは新たな創作のために、記事・図版・文章の一部などを合法・違法を問わずメモとしてダウンロードし、クリッピングすることは日常的に行われており、こうした行為を「違法」とすることは、むしろ広範囲での研究・創作の萎縮を招く懸念が非常に大きい。
  3. 動画や音楽の違法アップロードと違い、静止画や文章が「違法」アップロードであるかどうかは判断が難しい。たとえば短文のSNS等で正確な出所が示されていない記事はすべて「違法」と判断され、ユーザーがダウンロードを控える可能性がある。
  4. ダウンロードを違法化しても、「漫画村」のようなストリーミング方式の海賊版はまったく取り締まることができない。現在の動画や音楽のダウンロード違法化・刑事罰化のあと、逮捕者は出ておらず、もっぱら法律による「抑止力」のみが期待されている状態である。このような現状を鑑みると、今回の「中間まとめ」にあるように、静止画等のダウンロードを違法化することは、悪意ある侵犯者に対してはまったく効果がなく、逆に一般ユーザーの萎縮を招き、研究・創作を著しく阻害する最悪の結果となることが予想される。

 これらの点が十分に検討されているとはいえない理由として、中間まとめが著作物の私的使用を一方的な便益の受容・消費活動に限定している点を挙げる。著作物の享受や消費行為が、新たな著作物を創造する〈生産行為〉でもありえるという点が、考慮されていないと批判している。

 今回の私的ダウンロード違法範囲拡大方針には、一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)やエンターテイメント表現の自由の会(AFEE)などの消費者団体だけでなく、クリエイターの団体からも反対意見が表明されたことになる。 

参考リンク

日本マンガ学会による反対声明
https://www.jsscc.net/info/130533
一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)による反対声明
https://miau.jp/ja/902
エンターテイメント表現の自由の会(AFEE)による反対声明
https://afee.jp/2019/01/06/9283/
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(PDF)

noteで書く

広告

著者について

About 鷹野凌 824 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。
タグ: / / / / /