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2026年2月1日~7日は「Anthropicがフェアユース認定された書籍大量破壊スキャンが改めて話題に」「第51回衆議院議員総選挙候補者の“表現の自由”に対する考え方」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。
【目次】
- 政治
- 社会
- 経済
- Around the Book World: Monday, February 2, 2026(書籍の世界:2026年2月2日月曜日)〈Publishing Perspectives(2026年2月2日)〉
- 書店、チェーンまたいで在庫融通 返品率低下へ600店のデータベース〈日本経済新聞(2026年2月3日)〉
- Anthropic’s launch of AI legal tool hits shares in European data companies(アンソロピックのAI法的ツールのリリースが欧州のデータ企業の株価に打撃を与える)〈The Guardian(2026年2月3日)〉
- さらば、デジタル看板。歴史的変遷が示す、AI時代のWebサイトの勝ち筋【高広伯彦氏×マツリカ中谷氏】〈MarkeZine(2026年2月4日)〉
- 『週刊アニメージュ』が刊行。電子書籍専売の「アニメージュ」新たなラインナップ〈電ファミニコゲーマー(2026年2月6日)〉
- くまざわ書店代表取締役社長・熊沢宏氏に聞く 店舗の“販売力”が強み 支える生産性向上と本部サポート〈The Bunka News デジタル(2026年2月6日)〉
- 技術
- お知らせ
- 雑記
政治
第51回衆議院議員総選挙の候補者に向けて実施した表現の自由についてのアンケート結果〈エンターテイメント表現の自由の会(2026年1月27日)〉
いつもありがとうございます。私の選挙区の候補を確認してみたら、絶対に投票しないと決めていた候補が強硬な表現規制派だったので、私の判断が正しかったことを確認できました。設問(2-a)が「I. 表現の自由を不当に制限していると思うものは特にない」って、コンテンツ産業従事者からしたらありえない。私はそんな人を絶対に選びません。
Anthropic’s ‘secret plan’ to ‘destructively scan all the books in the world’ revealed by unredacted files(アンソロピックの「世界中のすべての本を破壊的にスキャンする」という「秘密計画」が未編集ファイルで明らかに)〈The Bookseller(2026年1月29日)〉
本件、Washington Postによる1月28日の報道で、急にまた(一部で)騒がれ始めました。和解案への異議申し立て期限を過ぎてから4000ページを超える裁判資料が新たに公開され、改めて物議を醸しているようです。しかし私は正直、昨年の後半に報道された内容と、大筋では変わらない印象を受けています。
とはいえ、Washington Postはハードペイウォール過ぎて本文は読めていません。ただ、「出版業界ニュースまとめ」の古幡瑞穂氏からサポートメンバー限定の(おまけ)が届いていて、概要は把握していました。また、前掲The Booksellerの記事は、無料登録で全文読んでいます(月3本まで)。その範囲内での印象です。
私は本件を昨年の後半だけで、Anthropicとの和解案が明らかになったときや、WIREDが「大量の書籍を破壊した」と情緒に訴える問題提起をしたとき、和解案を拒んで独自に提訴する方が現れたとき、あとは、下半期の出版ニュース振り返り番組でも、重要なトピックスのひとつとして取り上げています。しかし、残念ながら反響は皆無だったのですよね。トホホ。
個人的に目新しい情報としては、“Project Panama”というプロジェクトの名称が出てきたことくらいでしょうか。「日本人作家の本も含まれていた!」と問題視する声も見かけましたが、700万点もあれば含まれていても不思議ではありません。
私は、書籍の内容が学習用データに用いられていたことより、「Anthropicの社内サーバー(中央ライブラリ:Central Libraryと呼ばれている)にスキャンデータが保管され『学習目的以外にも使う』ことが企図されていた」ことのほうが格段にヤバイと思っています。
一般論として、学習済みAIモデルの中に、学習元データは入っていません。入力データに対し出力する際の変換ルールを数値化した、重み付けのパラメータがたくさんあるだけです。だから、学習済みAIモデルが外部データを使わずに回答をすると、間違った回答(ハルシネーション)をする場合があります。
そこで最近のモデルは誤回答を防ぐため、外部データを使った検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)で回答の精度を高めています。それでもハルシネーションは起きる場合があるわけですが、それはさておき。
Anthropicがスキャンデータを学習目的以外にも使うことを企図していたというのは、Central LibraryのデータをRAGに使おうとしていたのか、あるいは、すでに使っていたのか。実はこれ、はっきりしていません。裁判ではそこは争点になっておらず、AnthropicもCentral Libraryの詳細な設計意図を公式には公開していません。
Central Libraryは社内限定で、一般公開はしていなかったそうです。していたら、LibGenと同様の海賊行為ですから、もっと問題になっているはず。でも、もしClaudeがユーザーの質問に回答するときRAGの材料に使っていたとしたら、本の要約が正確に出力できるのも不思議ではありません。試験でカンニングしているようなものでしょう。
ただ、もしRAGの材料に使っていたとしたら、やはり裁判ではLibGen同様の海賊行為とみなされ、フェアユース判定は出なかったのではないか? と想像します。だからなぜ裁判のとき、原告はそこに踏み込まなかったのか、そして、なぜそこをはっきりさせないまま和解案に応じてしまったのか。謎。
社会
AI学習目的の海賊版収集・利用は著作権法違反になるか? 日本弁理士会が示した見解は〈ITmedia AI+(2026年2月2日)〉
そう。本件に関する文化庁の見解って、海賊版であることを知りながら学習用データに用いることは「厳にこれを慎むべきものである」と言いつつも、違法であると断定はしていないのですよね。うまく断定を避けている印象があります。でもまあ確かに、著作権法第30条の4「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しそうな気はします。
日本一面白い書店フェア競う「BFC」、2代目チャンプは広島 蔦屋書店「ペア読」に〈新文化オンライン(2026年2月2日)〉
BFCは、Book Fair Championshipの略です。BFCという略称を見ると、私はどうしても「ブンゲイファイトクラブ」を想起してしまいます。まあ、3文字程度の略称は往々にして被りがちですが、同じ出版系で被ってしまうのは悲しい。
「×」ボタンをタップしても消えない――「UI偽装広告」が壊すデジタル社会の常識:小寺信良のIT大作戦〈ITmedia NEWS(2026年2月5日)〉
UIに偽装された広告、よく見かけますよねぇ……私が遊んでいるゲーム内で再生されるリワード型動画広告は、いずれもフィードバックする手段が提供されていないのが問題だと思っています。「これアカンやろ!」と思っても、スクショを撮ってSNSへ投げるくらいしかできません。とはいえ、いくら通報しても対処しない企業(Metaとか)もあるので、窓口さえあればいいというわけでもありませんが。
超人気ホラー作家、新潮社と出版契約解消 昨年文庫化の著書は絶版・配信終了に〈サンスポ(2026年2月5日)〉
深沢潮氏が「週刊新潮」の差別コラム問題を受け、新潮社と契約を解消しました。このとき私が思ったのは「(深沢潮氏の)あとに続く他の作家はいないのかしら?」でした。日刊まとめには書いて、週刊まとめでは取り上げなかったのですが。私の知る限り、あとに続いた他の作家はこれが初めて。ニュースになっていないだけかもしれませんが。
経済
Around the Book World: Monday, February 2, 2026(書籍の世界:2026年2月2日月曜日)〈Publishing Perspectives(2026年2月2日)〉
世界各国の2025年の出版市場について、網羅的にまとめている記事です。日本のところでHON.jp News Blogを引用いただいてます。日刊まとめでそのことに触れたら、著者のカルロ・カレンホ氏から丁寧な日本語のメール(!)をいただきました。ありがとうございます。
ちなみに、HON.jp News BlogのGA4データを確認したら、2025年はアメリカからのアクセスが約2.4%で2位でした。3位中国0.5%、4位韓国0.4%、5位台湾0.2%と続きます。日本語だけで発信していても、海外から読まれる時代になっていることを改めて実感しました。私も最近は、日本語以外で発信された記事をGoogle翻訳などを駆使して読むようになっています。いまさらですが、技術の進歩に感謝。
書店、チェーンまたいで在庫融通 返品率低下へ600店のデータベース〈日本経済新聞(2026年2月3日)〉
ブックセラーズ&カンパニーの複数社横断在庫管理についての詳報です。Excelデータを担当者が突き合わせチェックして在庫を融通……目視でしょうか? なかなか大変そう。試験運用中だからでしょうけど、だいぶ力技をやってる感があります。本格運用時には仕組みを用意してあげてほしい。
あとは「輸送費は書店が負担」が気になりました。返本と同額なのか、返本より安いのか、距離によるのか。買切りまたは販売数コミットで正味(仕入額)を下げ、書店の利益率を改善するモデルだから、多少の追加費用が発生しても従来モデルに比べたらマシ、ということなのでしょうけど。
こちら、専門書系出版社にも大きな影響が予想されます。ただ、Ross Intelligenceがロイターに負けた裁判事例もありますし、既存の市場を壊すならアメリカの司法でも「フェアユースではない」と判断されそうな気がします。欧州ならなおのこと。近いうちにまた訴えられるのでは。
松尾豊氏(東京大学教授)も「巨大テックを相手に訴訟していくことも大事」と言っています。日本の新聞社や出版社もさっさと訴えて「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」をはっきりさせたほうがいいと思います。
さらば、デジタル看板。歴史的変遷が示す、AI時代のWebサイトの勝ち筋【高広伯彦氏×マツリカ中谷氏】〈MarkeZine(2026年2月4日)〉
企業は、情報をなるべくオープンにしたほうが良いという意見には賛成です(コンテンツそのもので商売するメディア企業以外は)。しかし、以下の箇所がちょっと気になりました。
特にLLM(大規模言語モデル)の登場以降、あらゆる情報がAIに学習される時代になりました。情報を出していかなければ、AIの回答ソースに含まれず、認知すら取るのが難しくなっているのです。
AIに学習されることと、AIの回答ソースに含まれることは、別の話ですよね。Googleで言えば、前者はGoogle-Extended(学習用)、後者はGooglebot(検索用)です。混同して対処すると、検索結果に出てこなくなるなど、大変なことが起きます。細かいようですが、重要な違いです。
『週刊アニメージュ』が刊行。電子書籍専売の「アニメージュ」新たなラインナップ〈電ファミニコゲーマー(2026年2月6日)〉
紙は月刊、電子は週刊、ウェブは速報、という役割分担になるようです。「スマホ最適化!『スクロール不要』の1ページ完結スタイル」という謳い文句が気になり、試しに買ってみました。想像通り、リフロー型ではなく固定レイアウト型でした。アクセシビリティは考慮しないのですね……うーん、残念。
くまざわ書店代表取締役社長・熊沢宏氏に聞く 店舗の“販売力”が強み 支える生産性向上と本部サポート〈The Bunka News デジタル(2026年2月6日)〉
ICタグについてコメントがありました。過渡期の負担増は絶対に発生するでしょうねぇ……それを避けるには、少なくともコミックについては「ICタグが入ってない商品は仕入れない」くらいの強硬策が必要でしょう。そうやって無理にでも対応させるよう圧をかけるしかないように思います。対応していない出版社は書店の負荷が増えることを是としているのと同義なわけですから、対応していない出版社が悪い。
技術
Preserving the Open Web: Inside the New Wayback Machine Plugin for WordPress(オープンウェブの保存:ワードプレス向け新ウェイバックマシーンプラグインの中身)〈Internet Archive Blogs(2026年2月4日)〉
HON.jp News Blogは過去記事が多い(1万件超えています)から、リンク切れも大量に発生しています。過去記事を消すメディアが悪いのですが、リンク切れのままにしておくのも訪問者に申し訳ないと思い、これまではBroken Link Checkerというプラグインを入れて、リンク切れは自動で取り消し線が入るようにしていました(誤判定もよく起きていました)。
自動でWayback Machineに入れ替えてくれるなら、そのほうが私も助かります(とくに年鑑の編集時)。さっそく導入してみました。ただ、チェックにけっこう時間がかかります。導入から3日経って、まだ2割くらいです。バックグランドで自動処理してますから、そのうち終わると思いますが。
Publishers say Google search traffic in ‘managed decline’, not dead(パブリッシャーは、グーグル検索トラフィックは「管理された減少」であり、消滅したわけではないと述べている)〈Press Gazette(2026年2月5日)〉
AIによる概要(AI Overviews)の出現頻度などについての調査結果です。思った以上に低く、非ブランドキーワードはイギリスで約12%、アメリカで約19%程度とのこと。そして、検索トラフィックの多くは、ブランド名を含む検索です。
つまり、どんなキーワードでもAIによる概要が出てくるわけではないし、指名検索に関しては影響が小さい、ということになるでしょう。重要な指摘だと思います。「ゼロクリック」とか「グーグル・ゼロ」と危機感を煽る前に、ちゃんとデータを見たほうがいいということですね。
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雑記
雪が降り積もる中、投票所へ行ってきました。Googleフォトで「雪」を検索したら、2月の初旬に撮った写真が多かったです。2014年の東京都知事選挙(舛添要一氏が当選したとき)は投票日前日が大雪でした。(鷹野)

























