「消費者物価指数と生産年齢人口を考慮した紙の出版市場分析」「AI学習目的の海賊版収集利用は違法? 合法?」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #703(2026年2月15日~21日)

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 2026年2月15日~21日は「消費者物価指数と生産年齢人口を考慮した紙の出版市場分析」「AI学習目的の海賊版収集利用は違法? 合法?」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

政治

アップル・グーグルの手数料、アプリ競争阻害か検証へ 公取委「コスト構造みて判断」〈日本経済新聞(2026年2月18日)〉

スマホ新法に基づいたAppleとGoogleの「遵守報告書」が公開されました。この内容について、情報提供や違反の申告が呼びかけられています。公取委はAppleとGoogleから事前に相談されていたはずですよね? これから検証というのは、やってみないとわからないという判断だったのでしょうか。

とくに「アプリ外部への誘導を可能にする代わりに外部での売上にも手数料を課す」は評判が悪い。これって、外部へ遷移したユーザーの動きをしばらく追跡する必要があるのですよね。Appleが7日間、Googleが24時間です。Appleはプライバシー保護にうるさいのに、7日間もの追跡を強要するのかよ、と。

まあ、見方を変えると手数料というよりアフィリエイトに近いような気もします。Amazonのアフィリエイトリンクってクッキーが24時間有効で、クリックした商品以外でもカートに追加したら報酬が発生するんですよね。Googleの24時間ってそれを踏襲したのかな? という気が。

トランプ相互関税は違憲 米最高裁が判決、還付は明示せず〈日本経済新聞(2026年2月21日)〉

わははは。声を上げて笑ってしまいました。こんなん笑うしかないわ。連邦最高裁の判事はいま、9人中6人が共和党政権下での任命です。それでも違憲判決が出てしまうと。司法がちゃんと独立してるなあ。しかし、トランプ大統領が報復人事やりそう……と思ったのですが、最高裁判事は終身制なので、亡くなるか自主的な退任じゃないと欠員は出ないそうです。制度がしっかり機能してるわ。

社会

ジャンプ系の“連載争奪”企画でAI作品が首位→「連載権は得られない」判断に 作者報告で波紋〈オタク総研(2026年2月14日)〉

うーん……これは判断が難しいなあ。編集部側の立場で冷静に考えてみると「意図せず類似表現が出力されている可能性がある」「偶然の一致でもAI出力なら依拠性が認められる可能性がある」「類似表現を事前に検証するのが難しい」「AI出力だと明記しても商業流通に載せたら炎上する可能性がある」などが思いつきました。けっこうリスクが大きいように思います。とくに集英社は、プレイボーイのAIグラドル炎上事件という経験がありますからね。

ネットの記事、45%が15秒以内に離脱 最後まで読まれない理由は〈withnews(2026年2月15日)〉

朝日新聞ポッドキャストの神田大介氏による短期集中連載最終回です。HON.jp News Blogの直帰率(10秒以内離脱)は40%くらいなので、似たような数字です。PV至上主義だとその「15秒以内に離脱する45%」も、最後までじっくり読んで長時間滞在したユーザーも、同じ「1PV」として等価値にしちゃいますから、その潮流に抗うなら滞在時間は気にしたいところ。

でも個人的には「『長い記事は読まれない』という現実」をそれほど問題視はしていません。というか「15秒以内に離脱する45%」は、ウチが対象とするユーザーではないと思っています。むしろ長文を喜んでくれるようなユーザーが繰り返し訪れるようになってくれたらいいな、と。

もちろん、ダラダラと長いだけの文を書いているつもりはありませんし、読みやすくする工夫も凝らしてますけど、万人向けの記事なんてあり得ませんから。「長い」と思う方はご自由に離脱くださいと開き直ってます。いまならAIに要約させることも簡単にできるわけですし、好きにすればいい。

AI学習目的の海賊版収集・利用は著作権法違反になるか? 柿沼太一弁護士の見解〈ITmedia AI+(2026年2月18日)〉

日本弁理士会のセミナー「生成AIと著作権」の内容について、柿沼弁護士から「異議アリ!」の声が上がりました。立法過程の議論や、文化庁「考え方」が議論された際の記録など、エビデンスもバッチリ。コテンパンです。冒頭に「『避けるべき・控えるべき』という倫理的・道義的な議論と、『違法か適法か』という法律的な議論は、明確に分けて考える必要がある」というお断りもしっかり明記されています。文化庁資料の「厳にこれを慎むべき」という記述は、あくまで倫理的・道義的な観点だけが述べられていて、法解釈ではないのですよね。ある意味、罠とも言える。

本好きの多いシニアにこそ書店がお役立ち! 移動書店や脳トレイベントで楽しみを提供〈経済産業省 METI Journal ONLINE(2026年2月19日)〉

シニアと本の話なら「老眼」は避けて通れないはずなんですが、この記事にはまったく出てきません。なぜだろう? そういう話を展開すると、リアル書店からは離れてしまうからでしょうか? 私の父は80歳を超えていますが、実はパソコンで本を読んでいます。電子書籍なら、文字を好きな大きさに設定できますから。老眼に優しい。あるいは、紙でも「大活字版」があります。「シニアにこそ」と言うなら、読書バリアフリーの観点は必須でしょう。そもそも「アクセシブルな電子書籍市場等の拡大等に関する調査」などを行っているのは経済産業省でしょ!

経済

紙の出版市場“1兆円割れ”は本当に衝撃なのか――消費者物価指数と生産年齢人口を考慮して見えた異なる景色〈HON.jp メールマガジン(2026年2月17日)〉

実質市場で考えると「1兆円」も「50年ぶり」も「いまさら」という話です。テキストは全体で4000字くらいですが、データ分析とグラフ作成にけっこう手間がかかってます。それゆえ、半分くらいまで誰でも読めるサポートメンバー限定記事にしました。品目別の数字と新刊点数で割った数字はサポートメンバー限定です。ちょっと意外な結果が出たんですよね。続きが読みたい方はぜひサポートしてください。末尾には元データのExcelもあります。

出版「1兆円割れ」の外側に広がる希望 「健全な資本主義」を味方に〈朝日新聞(2026年2月20日)〉

先般、ニュースで流れた「紙の出版市場、1兆円を切る」の中身は、取次経由の売上をさす。私たちのような取次を介さない「直取引」の売上額は、「出版市場」の「外」なのだ。

そうなんですよね。だからウチは「出版科学研究所による紙の推定販売金額は取次ルートのみであり、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない」と毎回記載しているのです。「直取引」の比率は不明ですが、直接販売の比率は日販「出版物販売額の実態2025」によると紙の出版市場全体の13.6%と推計されています。コンビニ、大学生協、駅やスーパーなどのスタンドを合計した「その他取次経由」が8.0%なので、それより大きいんですよね。

取次経由の売上って、要するに取次と書店の経営に直接関わる領域なのです。つまり出版科学研究所は取次と書店のための数字を推計していると言ってもいい。でもたとえば雑誌広告の市場は、出版社にとっては重要な収益源ですが、取次と書店には関係ない話です。逆に、書店で販売されている文房具の売上は、出版社には関係ありません。「三位一体」とか言いつつ、実はけっこう重ならない領域も大きいという。

An Introduction to Japan’s Publishing Scene(日本の出版業界入門)〈Publishers Weekly(2026年2月20日)〉

Publishers Weeklyが日本の出版業界についてめっちゃ気合いの入った特集を出しています。出版社の紹介とか、村上春樹氏へのインタビューなどなど、10本くらい。日本の小説家は複数の出版社と同時に取引するのが普通だけど、アメリカの小説家はそうではない、みたいなビジネス慣習の違いにも触れられていて、向こうから見るとそこがポイントなのか、という気づきがあります。

技術

【先行招待】NRエディター Ver.2 使ってみませんか? 電子書籍をシンプルで自由に〈Romancer(2026年2月16日)〉

細かな設定が可能な「こだわりモード」の追加など、いろいろ進化するようです。見出しタグがh6まで対応するのはうれしい。さっそく試用を申し込んでみました。

関係性開示:ボイジャーには、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄のコメント記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。忖度もしていません。

287個の悪質なChrome拡張機能がユーザーデータを漏洩または盗難していることが判明〈GIGAZINE(2026年2月17日)〉

中には、情報解析ツールで名前が知られる「Similarweb」など有名な拡張機能もありました。Similarwebに関連する問題の拡張機能のインストール数は1010万回を超えるとされています。

あれまあ……漫画村の想定被害額約3000億円って、Similarwebのデータを使って試算していたんですよね。2018年に「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」でブロッキング法制化の議論がまとまらなかったとき、そのデータの信憑性への疑義と同時に、ここは個人情報を無断送信しているという指摘があったことを思い出しました(立石委員提出資料参照)。

当時すでに、アドオンなどがマルウェア判定されたり、アメリカ連邦取引委員会(FTC)から名指しで注意喚起されたりしている、とも言われてました。今回のこれは8年越しで再び問題になっている、ということになるでしょう。これを機に、もうSimilarwebのデータは使わないほうがいいんじゃないかな。

「ネット詐欺を見分けられる」と約7割が自信、だが検証で偽サイトを見破ったのは約4割〜BBSS調査〈INTERNET Watch(2026年2月18日)〉

「緊デジ」サイトがドメイン失効したあとにドロップキャッチされ、再現された偽サイトを「本物が復活した!?」と勘違いした経験があります。おもいっきり騙されました(被害はありません)。だから私は、ネット詐欺を見分けられない自信があります。いつかきっとやられる。そう思ってないと危ないです。

お知らせ

新刊について

新刊『ぽっとら Podcast Transcription vol.1 ~ 詐欺広告や不快広告・金融検閲・生成AIと著作権・巨大IT依存問題など、激変する出版界の広範な論点を深掘りしてみた。』を刊行しました。ポッドキャストファーストという試みです。今後も続けたい。

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日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

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雑記

 久しぶりにまとまった時間がとれたので、電子書籍化の現状調査の続きに着手しました。データを1日中こねくり回していたら、なぜか肩こりがひどくなりました。なぜ。結果は日本出版学会の2026年度春季研究発表会でお披露目する予定です。(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 927 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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