「ツイートは著作物」「ZINEは出版業界の救世主?」「TSUTAYAアプリが本コレに」「トレパク疑惑と著作権」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #685(2025年10月5日~11日)

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 2025年10月5日~11日は「ツイートは著作物」「ZINEは出版業界の救世主?」「TSUTAYAアプリが本コレに」「トレパク疑惑と著作権」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

 先週は多忙につき、やや縮小版でお届けします。

【目次】

政治

ツイートは「著作物」、地裁がスクショ無断転載に賠償命令 過去には控訴審で“引用”焦点の逆転も〈ITmedia NEWS(2025年10月10日)〉

 反響を見ていると、この判決が意外だと思う方もそれなりにいらっしゃるようです。どういう投稿が転載されていたのか不明なのですが、著作物として認められるかどうかは内容によりますし、引用として認められるかどうかもケースバイケースですから、それほど不思議ではないと思います。

社会

「MAGAZINE(マガジン)」と一線を画すニッチな冊子「ZINE(ジン)」が人気 出版界の希望に〈FNNプライムオンライン(2025年10月5日)〉

 うーん……ZINEを「出版界の希望」とか「出版業界の救世主」などと言ってしまうのは、どうなんだろう? ZINEの定義は「出版社を通さず、個人が自由に、自費で作った冊子」なのですよね? ならば、少なくとも直接的には出版社や取次の希望にはならないですよね。個人と取引している書店にとっては、新たな商材のひとつとして捉えることも可能でしょうけど。でも個人制作の冊子が大量に売れるようなこともめったにないだろうし、商業出版以上に書店の目利き力が強く問われますよね。いずれにしても、そんな簡単な話じゃないはずです。

ディズニー、OpenAIの動画AI「Sora」にコンテンツ使用不許可を通告〈日本経済新聞(2025年10月7日)〉

 周囲で利用している方々からディズニー系は初めから出力できなかったと伺っていましたが、やはりそういう制御が行われていたようです。ディズニー強し。アメリカだとむしろフェアユースで通りそうですが、ディズニーからはよほど強い圧力があったのでしょう。

 他方、日本には著作権法第30条の4がありますが、これはもう「非享受目的」要件を満たさないケースに該当するのでは、という気がしています。「Sora」をSNSにしたことや、アルトマンが言う「インタラクティブファンフィクション」などから、「利用者に享受させる目的」で学習させているとしか思えません。

 仮に生成・利用段階でしっかりフィルタリングしてあっても、学習・開発段階(=学習用データの収集)で著作権法第30条の4が適用されない可能性があるように思います。

日本は舐められている――生成AI「Sora 2」のアニメ「ただ乗り」(Weeklyアニメビジネス)(まつもとあつし) – エキスパート〈Yahoo!ニュース(2025年10月5日)〉

 ええ、完全に舐められてますよね。「どうせすぐに訴えてくることはない」って思われてる。

他人の写真を参考に描くのはNG? 江口寿史さん「トレパク」疑惑から考える著作権と肖像権問題…福井健策弁護士が解説〈弁護士ドットコム(2025年10月8日)〉

 一般論としての解説ですが、まっさきに「(1)写真家の著作権」を挙げているところが、さすが福井健策氏だと思いました。本件に限らず、誰かが撮った写真を無断で二次利用する(トレースや生成AIに加工させるような場合でも)ケースにおいて、写真を撮った人に著作権が発生しているという前提がすっ飛んでいる方が多いように思うのですよね。

江口寿史先生問題の著作権的視点からの考察(栗原潔) – エキスパート〈Yahoo!ニュース(2025年10月6日)〉

 栗原潔氏は「今回のケースで問題ではないかとX等で指摘されている作品の中で、著作権的に問題になりそうなイラストはないように思えます」とのご意見です。うーん、そうだろうか。否定された事例は、地裁判決止まりのようです。2.6センチ四方程度のイラストであるうえ「本件写真素材にはない薄い白い線」が挿入されたことなどにより「表現上の本質的な特徴が直接感得できない」という判断になっています。今回のような、客観的に見てモロに利用しているような場合は、裁判所の判断も変わりそうな気がします。まあ、実際に裁判になって判決が出ないと、わからないですね。

経済

「『週刊少年ジャンプ』を、倒すと決めた」 デジタルマンガ誌「少年ジャンプ+」がオリジナル作品にこだわる理由〈Japan Innovation Review powered by JBpress(2025年10月6日)〉

「週刊少年ジャンプ」(以下、「少年ジャンプ」)を擁する集英社が2014年9月に他の出版社に先駆けて創刊したデジタルマンガ誌「少年ジャンプ+」(以下、「ジャンプ+」)。

 これは記事の冒頭に書かれた導入文からの引用で、集英社の方の発言ではありません。念のため。つまりこれは記事を書いた方がそう認識しているということなのでしょう。しかし「少年ジャンプ+」は「他の出版社に先駆けて」はいません。たとえば、スクエニ「ガンガンONLINE」は2008年10月、小学館「裏サンデー」は2012年4月、KADOKAWA「ComicWalker」は2014年3月の創刊です。「少年ジャンプ+」が強いのは確かなんですけどね。

note、純利益340%増で好調 通期業績を上方修正 「生成AIでクリエイターとコンテンツが増加中」〈ITmedia NEWS(2025年10月7日)〉

 おお、素晴らしい。2024年11月期に初の黒字化を達成しましたが、その後もしっかり利益が出るようになっているようです。。反響で「ゴミだらけになる」といった揶揄も目にしますが、ゴミは埋もれるだけになる可能性も高いのですよね。まあ、人の書いた文章も凡庸なものは埋もれますが。

1400の書店と本の総合情報アプリ「本コレ」〈Impress Watch(2025年10月8日)〉

 「TSUTAYAアプリ」がリニューアルして、オープン戦略に転換しました。出資している大手出版社はもちろんですが、書店もかなりの数が連携しているのはすごい。さっそくスマホに入れてみましたが、在庫検索は「書店との在庫データ連携が整い次第提供予定」とのこと。まだこれからという感じですね。

受け入れられ始める AI 使用の広告 米エージェンシー幹部らの期待と懸念は〈DIGIDAY[日本版](2025年10月9日)〉

 契約していないのでペイウォールの向こう側が読めていないのですが、冒頭のサマリーによると、AI広告の効果は非AI広告と大差ないとのこと。画像や動画はなんとなく「これはAI製だな」とわかりますが、もうウェブ広告では見慣れてしまった感があります。サイバーエージェントがインターネット広告事業で減収減益になったのは、大手クライアントのクリエイティブ内製化が要因という話もありました。そりゃ、効果が変わらないなら、自前で作ってコスト削減しますよね。

Libraries Look to Fill the Gap Left by Baker & Taylor(図書館はベーカー&テイラーが残した空白を埋めようとしている)〈Publishers Weekly(2025年10月9日)〉

 「おー、なんか大変なことが起きてるなー」と対岸の火事だったのですが、「Amazon Business Books for Libraries」が6月時点ですでに(ひっそりと)始まっていたという記述にはびっくり。初耳でした。古幡瑞穂氏の解説が詳しいです。日本でもいずれ始まるかしら。TRCとのサービス競争になると良いかも?(良いのか?)

技術

AI検索時代に求められるWebコンテンツとは?今後のオウンドメディア戦略を考える〈MarkeZine(2025年10月6日)〉

日々、新しい技術やツールが登場しているものの、我々がやるべきことはシンプルで、「ユーザーの役に立つコンテンツを作ること」なのです。

 じつに正しい。逆に、小手先のテクニックとかアルゴリズムのハックで表示順位を上げるみたいなSEOをやっていたところは、苦しくなると思います。

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雑記

 いま、NovelJam 2025の東京会場でこの原稿を書いています。今日は2日目。明日には電子本が完成して出版されます。みんな、がんばれ!(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 899 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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