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2015年にスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチがノーベル文学賞を受賞したとき、『セカンドハンドの時代』の英語翻訳権を握っていたのはイギリスのインディペンデント出版社であるフィッツカラルド・エディションズで、その後北米での英語版権をランダムハウスに多額で売ることで潤った。このように、大手の目が行き届かない才能を見極める目利きとして、インディペンデント出版社の力が注目されているとウォール・ストリート・ジャーナルのマガジンが特集記事を載せている。
アメリカでは「ビッグ5」と呼ばれるペンギン・ランダムハウス、ハーパーコリンズ、サイモン&シュスター、アシェット、マクミランが傘下に持つインプリントでアメリカで上梓される目ぼしい本の8割を占めるとも言われている。
その一方で、『わが闘争 父の死』のカール・オーヴェ・クナウスゴール、『ナポリの物語』シリーズのエレナ・フェランテ、『北は山、南は湖』のラースロー・クラスナホルカイ、ジャマイカの詩人クローディア・ランキンなど最先端の世界文学を探し出す小さな出版社も注目されている。
詩歌部門で昨年のピューリッツァー賞をとったタインバ・ジェスはシアトルのウェーブ・ブックスから、今年の同賞で最終審査まで残ったハーナン・ディアズのIn the Distanceはミネアポリスにあるコーヒーハウス・プレスから、そしてイギリスのブッカー賞の最終作品には、同じくミネアポリスのグレイウルフ出版の本が2冊入っていることからもその審美眼の鋭さが伺える。
前述のフィッツカラルド出版を立ち上げたジャック・テスタードは、ニューヨークで長くインディペンデント出版社として知られているニュー・ダイレクションズ社(多和田葉子や平出隆の作品をだしている)からインスピレーションを得て創立したという。
ビッグ5出版社が本気で引き抜こうと思ったら、著者にオファーできる金額ではかなわないが、中にはウォルター・モーズリーのように大手出版社から「イージー・ローリンズ」シリーズを出していたにも関わらず、黒人経営の出版社を応援するためにブラック・クラシック出版(ちなみに同社の創業者はタナハシ・コーツの父であるポール・コーツ)から上梓するといったケースもある。
参考リンク
ウォール・ストリートジャーナルの記事(有料)