教育出版社の定額読み放題ビジネスが売り上げと印税を乱すとして著者2人が連邦裁に提訴

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 米教育出版のセンゲージ社(Cengage)がこの8月に開始予定の「センゲージ・アンリミテッド(Cengage Unlimited)」は1学期119.99ドル、年間179.99ドルで、センゲージ社が提供するデジタル授業、Eブック、宿題&予習用ツールに上限なしでアクセスできるというもの。

 ニューヨーク南部地裁に訴えを起こしたのはデイビッド・ノックス(David Knox)とキャロライン・シャクト(Caroline Schact)の著者2人で、「センゲージ・アンリミテッド」によって著者の本を売る代わりにこのサービスを推すことによって著者への印税が著しく減るとしており、他の著者を代表する集団訴訟とすることを求めている。

 問題とされているのは、著書の販売に応じて印税を支払う契約から、アマゾンが「キンドル・アンリミテッド」で採用しているのと同じ relative use モデル(全体の報酬額が決められ、そこから利用ページ数に応じて権利保持者に還元されるシステム)に一方的に移行することによって、著書を元にした派生商品が作られることと、また、全体の売上データなど公開されないため、使用料がきちんと支払われているかがチェックできないことなどだ。

 センゲージ側は、「著者には説明責任を果たしたし、教科書の値上がりという問題に対する措置として多くの著者からは理解を得ている」としている。

関連リンク

パブリッシャーズ・ウィークリー:
https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/publisher-news/article/76884-textbook-authors-sue-cengage-over-subscription-service.html
センゲージ・アンリミテッドの予告ページ:

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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