【EPUB有料連載リンク】第24回 電子書籍についてのあれこれ — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、昨年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

1月メールバッグから
(メールバッグはパーネル氏が読者からの投書にコメントするコーナーです。「新・混沌の館にて」サイトでは無料公開しています)

電子書籍についてのあれこれ

Pournelle博士、

 私は去年の10月にNook(W-iFiモデル)を買いました。私はそれ以来、ほとんど毎日それを使っています。私は12冊の電子書籍を購入しました。いくつか考えたことがあります。

 本がとても快適に読めることが分かりました。使用されているフォントは読みやすく、フォントのサイズは簡単に変えられます。手元に老眼鏡がない時は、これは非常に便利です。私はいつも「大きな」フォント(約12 ptsのようです)に設定していて、老眼鏡(強度+2.50)を使います。老眼鏡がない時は、もう一段階フォントを大きくすれば読めます。唯一の欠点は、私が使うフォント・サイズだと、ペーパーバックやハードカバーを読む場合よりページをめくる回数が増えることです。ページをめくるボタンは、指で簡単に使えます。

 私が購入した12冊の本は、現在のベスト・セラーと古典の両方です。ベスト・セラーの価格は12ドル(990円)以上しました。私は、たいてい、本は一度しか読みません。何人かの作家の本はたまに二回読みます。私はほとんどフィクションばかり読んで、中には登場人物が再登場する「シリーズ」ものもあります。特定の登場人物が気に入ると、そのシリーズの前の本を、刊行順に読みます。私は紙書籍の頃は、このようなパターンで読んでいて、購入した電子書籍でも同じようにしています。

 昔、電子書籍が出る前は、書店で新刊書を買っていました。古本も買っていて、本の交換(BookMooch)も利用していました。私が読み終わった本を送って、まだ読んでいない古本を受け取るのです。繰り返しますが、私は普通、本は一度しか読みません。だから、その本はもう必要ないのです。自分が読み終わった本は誰かに貸すか、あげてしまいます。

 電子書籍の値段を見ると、購入する前に一瞬ためらいます。印刷版の頃もそうでした。読みたいと思う新刊書があっても、ペーパーバック版が出るのを待ちました。昔は、私は新しいハードカバーのベストセラー本はめったに購入しませんでした。しかし、ハードカバー版を買いたいと思う作家はわずかしかいません。それよりも、私はセールになった本(特に「バーゲン・コーナー」のハードカバー本)を買います。

 電子書籍の場合、私が「買おう」と思う価格は、約9.00ドル(740円)ぐらいのようです。電子書籍の価格がそれより高い場合は、購入を見合わせるか、9.00ドルぐらいで買ってもよいと思う価格の本か、それ以下の別の本を買います。私は何冊か無料の本も読みました。それを読んで面白いと思うと、同じ著作者の別の本を買うこともあります。一部の「無料」電子書籍は単なる「ティザー広告」です。丸ごと一冊無料ではなく、その本の「紹介」版です。このような「ティザー」本を見ると、ちょっといらいらします。フルバージョンでない場合は、特にそうです。

 Nookは持ち歩きやすいので気に入っています。いつも仕事用のバッグや旅行用の手提げカバンに入れていて、一人でランチをとる時に使ったりします。Nookは家の中でも、その小部屋(訳注:Nookとは小部屋、部屋などの隅という意味)に私を連れて行ってくれて、楽しいです。使いやすくて、表示もシンプルで、私はきっとこれからは紙版の頃よりもたくさん電子書籍を買うようになると思います。

よろしく、
Rick Hellewell

パーネル氏のコメント

 私の推測では、電子書籍を「買おう」と思う価格のレベルはどんどん、どんどん下がるだろう。しかし、下がれば下がるほど、売れる冊数は増える。私は、9.00ドル(740円)で1,000部売れるより、2ドル(165円)で2万部売れる方がいい。そして、これが特殊な比率ではないことが証明されつつある。電子書籍出版はまだ始まったばかりだ。

 私は「A Step Farther Out」をKindleフォーマットにして、Amazonで2.99(245円)の最低価格で売って、どうなるか試してみようとしている。さらに、私は、「Two Steps Farther Out」の新しい前書きを書いている。これはGalaxy誌に掲載したコラムにコメントを付けたコレクションで、「A Step Farther Out」のKindle版を作った後すぐにリリースできたらと考えている。電子書籍出版をするために本を作るのは難しいことではない。しかし、学習する必要がある。私の娘は「OUTIES」という小説がきちんと表示されるようにするために、3回やり直さなければならなかった。難しいことの大半は、コスメティックだ。しかし、本を作る処理はできる。きちんと表示されるはずだ。

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

WordとEPUB

 先日、EPUB制作ソリューションのセミナーの動画配信を視聴しました。縦書き対応のEPUBファイルを制作するプラットフォームで、現在アルファ版だということでした。

 テキストファイルを流し込んで、ルビなどの場所にタグを付ける方式です。大変意欲的な取り組みだと感じましたが、終了後の質疑応答で、編集者や制作関係者から、「編集者が校正などをしながらタグを付けるのは現実的には無理だと思う。もっと簡単にならないのか?」あるいは、「Wordを使える人は多いと思う。Wordの設定をそのまま利用することはできないのか?」という質問が出ていました。それに対して開発した技術者は将来的には考えているとしながら、「私はタグを付ける方がやりやすいです」と答えておられました。

 技術的なスキルに対する個人個人の感じ方が大きく違うことは、このコラムを販売し始めて、痛感したことの一つです。個人で電子書籍を制作して販売する場合、あらゆるプロセスをすべて自分一人でこなさなければなりません。私は、翻訳以外の、プロにとってはなんでもないことを自分でやるために、かなりの時間を費やすことになりました。

 電子書籍は個人でも手軽に出版できるのが魅力と言われていますが、今現在、実際には「電子化」するところがハードルになっている著作者もいると思います。パソコンを使わない著作者もいます。こうしたプラットフォームが進化すれば、その負担は大幅に軽減されます。

 昔、日本でワードプロセッサーが出始めた頃、欧米と違ってタイプライターが一般的に利用されていなかったため、キーボードに抵抗を感じる人も多かったと思います。(紙に書かれた原稿をワープロに入力するという職業が成立していました)。誰でもすぐに、簡単に使えるものではありませんでした。それが十数年たった今は、ごく一般的に利用されるようになりました。

 WordをEPUBにできないかというのは、私がずっと考えていたことでした。これは技術的にはいつか実現できると思います。ただし、レイアウトや高品質フォントの利用など高度なことができるようになればなるほど、システムも複雑化し、操作に高いスキルが必要になって、価格も高額になるでしょう。高額の費用を負担できる出版社の利用が主体になって、個人の利用から遠ざかってしまう可能性もあります。

 ワープロソフトは昔はかなり高額でしたが、今はずいぶん安くなりました。縦書き対応のEPUB制作ソフトもそうなれば、個人の著述家も積極的に利用できると思います。n

問合せ先:「新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/

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