「OpenAIもLibGenなど海賊版をダウンロードしてAI学習していたことが法廷で明らかに」「若者のマンガ離れ論ふたたび」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #731(2026年9月6日~12日)

【写真】TSUTAYA BOOKSTORE 名鉄名古屋(photo by TAKANO Ryou)
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 2026年9月6日~12日は「OpenAIもLibGenなど海賊版をダウンロードしてAI学習していたことが法廷で明らかに」「若者のマンガ離れ論ふたたび」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

お知らせ

9月19日(土)12時から世田谷文学館にて朗読フェスティバル「NovelRecital」開催! 小説家たちが“自分の作品を自ら朗読・販売”するハイブリッド・イベントです。一般入場チケット完売後に少し追加販売いたしました! お早めに!

政治

30年度以降に正式導入の「デジタル教科書」、「紙を主軸に」と要望…活字文化議連〈読売新聞(2026年9月11日)〉

文科省は「デジタルのみ」は小学4年生以下では認めない方針を明らかにしている。

んー、さすがにちょっとそれはミスリードではないだろうか。そもそも検討会議がまだ行われていて、方針は確定していないわけですから。文科“相”が衆議院の委員会で突然そう言い始めたのは事実ですけど、それだけで方針が決まるわけではないですから。まあ読売新聞は、学習障害や読字困難のある児童生徒のためにアクセシビリティ保障を、という声をガン無視してますからねぇ。

社会

著者たちがAI著作権和解金の配分に抗議――出版社と代理店が大部分を取得〈Winzheng AI ニュース(2026年9月7日)〉

わははは。なんというか、絵に描いたような内輪もめですこと。アメリカの著作権法や契約形態は日本と違うからなんとも言えないのですが、日本の場合、著者が持っているのは著作物の利用全般に対する権利で、出版社が持っているのは複製する権利。AI学習は複製ではありません(モデル内に学習元データが入っているわけではない)から、原理原則から言えば和解金は「著作者への利用料」でしょう。窓口として機能しているから、事務手数料くらいとってもいいとは思うけど。

AIを10分使うだけで正解率が急低下、識者が説く3つの「べからず」〈日本経済新聞(2026年9月8日)〉

そもそも論ですが「記憶が定着しないこと」って本当に問題なんでしょうか? 私は、そういう視点を持っておきたい。書き言葉は話し言葉に劣ると考えたソクラテスの言葉が現在まで伝わっているのは弟子が書き残したからであるわけで。

もちろん、受験などどうしても記憶力が求められてしまう場面はあるから「記憶力が要らない」とまでは言わないけど、私は記憶より記録のほうが重要だと思っています。一生懸命暗記しても、数年使わなければ忘れちゃいますし。すぐ参照できるなら、記憶するリソースを他に使ったほうがいい。それは環境の変化に合わせた進化だと思うのですよね。

OpenAI’s ChatGPT Was Built on Concealed ‘Mass Piracy’, Authors Tell Court(オープンAIのチャットGPTは隠蔽された「大量著作権侵害」の上に構築された、と開発者らが法廷で証言)〈TorrentFreak(2026年9月8日)〉

うーわ。OpenAIがAnthropicと同様、悪名高きLibGenからダウンロードしてAIに学習させてたことが法廷でバレたようです。Books1・Books2データセットは、社内ではLibgen1・Libgen2って呼ばれてたみたい。これ事実認定されたら、Anthropicと同じ判決になるだろうなあ。

「若者のマンガ離れ」が止まらない…「少年ジャンプ」を読む男子中高生が”20年で10分の1″に激減した構造的理由〈PRESIDENT Online(2026年9月9日)〉

以前もメルマガ増刊号で書きましたが、「10代のマンガ離れ」にはあまり異論はないんですよね。インプレスの調査より下の年齢まで網羅している子ども家庭庁「青少年のインターネット利用環境実態調査」で、電子書籍(小説・マンガ等)を利用している小学生(高学年)は2025年でも10人に1人ですから。電子マンガが小学生にはあまりリーチできていないのは事実。異論があるのは「なぜ」の部分(3ページ目後半以降)。

AIの回答をそのまま送りつける「ミートプロキシー」、新たなネットスラングが誕生〈CNET Japan(2026年9月11日)〉

わはは。「肉の仲介者」ね。皮肉だなあ。肉だけに。流行るかな?

「レベルファイブ」代表が新作映像での生成AI使用を謝罪 「イナズマイレブン」等を開発するゲームメーカー〈KAI-YOU(2026年9月12日)〉

ゲーム・動画という、出版とはちょっと離れた領域の話ですが、失敗事例として取り上げておくべきだろうと判断しました。

経済

出版業の倒産急増、利益も悪化傾向 ~ 存続に向けた書店との直取引、目指す姿と課題 ~ | TSRデータインサイト〈東京商工リサーチ(2026年9月6日)〉

背景は、「紙の価格や製本の外注費が高騰しているほか、この地域の老舗出版社は電子書籍での販売を行わない企業も多く、電子書籍の台頭による需要減の影響もある」(前出の担当者)という。

「前出の担当者」は「神保町エリアを回る金融機関の担当者」なので、電子出版市場のことよくわかってないんでしょうね。「台頭」ってジャンルに依りますよ。電子出版市場の9割がコミックですから。コミックは別格。ISBNのある「書籍(雑誌やコミックを除く)」の電子化率は15.9%程度ですから、多くのジャンルはまだ紙しか出てない本の方が圧倒的に多いんですよ。

逆に、「文字ものを電子で出してもどうせ売れないから出さない」って声も見えましたけど、そもそも「売ってなければ買えない」んですよ。10年以上前から言い続けてるんだけどなあ。まず出しましょうや。話はそれからだ。

海賊版被害額は年間8.5兆円!? 漫画市場は得られたはずの富を取り戻せるか〈THE21オンライン(2026年9月7日)〉

「AI翻訳が突破口」で終わってガクッ。せめて「AI翻訳には現地から拒絶反応も見られるが果たして受け入れられるのか?」くらいのレベルでいいからもう一歩先まで考えて欲しい。

いまだ紙が主流な海外で “電子コミックバブル”は再現できるのか〈THE21オンライン(2026年9月9日)〉

と思ってたら続きがあった。でも、なんというか、残念ながら薄味。「バブル」って言葉、弾けて萎む悪いイメージのほうが強いんだけど、「急成長」みたいなポジティブな意味で使っているんだろうか。などと首を傾げてたら、MANGA総研の菊池健氏が「(この記事の著者が所属している)グロービスは、ベンチャーキャピタルが(AI翻訳の)オレンジに出資している」と教えてくれて納得。関係性非開示かあ。

なぜ権利者たちはGoogle PlayブックスとGemini Notebookの連携を歓迎したのか? ―― Expert IntelligenceとAmazon Kindleの決定的な違い〈HON[.]jp メールマガジン(2026年9月10日)〉

月に1~2本は書いていこうと思っていたメルマガ増刊号が、気づいたら4カ月ぶりになってしまいました。すみません。やっと書けました。Expert Intelligenceくらいの利用方法だとさすがのGoogleも許諾をとって進めるしかなかったし、Amazonは過去の経緯から恐らく権利者が許諾を出さないんじゃないか、という話です。まあ、もしかしたらAmazonは訴訟リスクを背負っても、このまま強行するかもしれませんけどね。

AIとYoutubeで出版社はどう変わるか?―出版「紙プラットフォーム」の機能分解と「知識・知能産業」化について〈Jun Ikematsu / 池松潤(2026年9月10日)〉

※正直言って、出版評論家のAIに関してのコメントは「それ間違えです」が多数見受けられて、それが作家に間違って伝わると思うと、どうしたものかと思う事が増えている。

誰のことだろう? ドキドキ。ちなみに私は「出版評論家」と名乗ったことはないし、「ジャーナリスト」と名乗ることすら避けてます。おこがましい。そんな立派な人間じゃない。

集英社文庫、日本SFの名作の出版・配信を停止 「上限」超えて販売〈朝日新聞(2026年9月10日)〉

24年に再度2千部の重版をかけたが、この分の申請をしておらず

以前のKADOKAWAの事例は電子版の集計をしたら超えちゃってた事故ですが、集英社は紙でも電子でもやらかしちゃったのですね……まあ、担当変わったりすると引き継ぎうまくいかなかったりするだろうからなあ。大手出版社の体制でも2例起きてしまったということは、もうちょっと柔軟に対応できるよう制度を見直したほうがいいのかもしれない。とくに電子は「集計した結果超えちゃってた」がふつうに起きると思う。いまの制度じゃ利用するのが難しいですよ。

AIの読書で翻訳出版の意味も変わる。Expert Intelligenceが示唆するこれから〈オーディオブックファンクラブ(2026年9月12日)〉

うーん、翻訳精度の問題があるからなあ……まだ全面的にAIに任せるのは、私は怖い。ウェブ記事をGoogle翻訳でパッと調べるくらいならいいんだけど、それでも段落飛ばしとかまだたまにあります。Gemini Notebookの場合、逐次翻訳はしてくれないだろうから、要約・要旨だけになってしまう。「(自分で)読みたい」ってニーズには応えられない。読み物ではなく調べ物には良いかもしれないけど。

生成AI収益、権利者に還元 仕組み拡大へ協会設立 アニメや音楽〈朝日新聞(2026年9月12日)〉

記事に名前が出ているアリババとCanva以外はどこが入っているのか気になって調べてみたのですが、協会の公式サイトには記載なし。KAGAMIAIの公式サイトには記載されているけど、知らないところばかりだなあ……私の勉強不足か。ちなみにKAGAMIAIは「キャプテン翼」で実証実験をやってた(る?)ところです。取引先は集英社ではなく株式会社TSUBASA(高橋陽一氏のマネジメント業務やライツ業務をやっている会社)。

技術

AI文章を見破る米国ツールの登場に有料クリエーターが戦々恐々…日本語の文章で試してわかった明確な効果(小林 雅一)〈現代ビジネス | 講談社(2026年9月4日)〉

Substackに「Pangram」というAI検出ツールが導入されたとのこと。元Googleのエンジニアが創業したスタートアップ企業のサービスだそうです。99.99%の精度で判定と豪語しているとのこと。無料で試せる文字数の制限が厳しくて、精度が高いのかどうかはわからず。偽陽性を避ける、つまり人間の書いた文章を誤ってAI判定しないよう調整されているというのは良いですね。

AIで書いた文章を見抜くツールの使用をめぐり米国で大論争が勃発中…そもそも使ってはいけないものなのか?(小林 雅一)〈現代ビジネス | 講談社(2026年9月4日)〉

まあ、世間一般的には「AI使用」というメタデータが付与されるだけで、途端に評価が下がってしまいがちですよね。第三者判定は偽陽性も多い気がしますが。私はわりとラディカルなので、AIを使っても「面白いなら」良いじゃんというスタンスなのですが、それでも実際にあらかじめAI出力だとわかっていると、それだけで読む気が何段階か削がれます。

アイキャッチ画像の時点で「いかにもAI出力」って記事も多いですが、きっと本文もAIに書かせているんだろうなという先入観を抱いてしまいます。アイをキャッチする画像のはずなのに、目が滑っちゃうんですよね。逆効果ではなかろうか。

あるいは「AIに書かせて編集者がチェックしてます」というアピールをしているメディアが、チェックが雑になり記事公開後に削除(しかも連発で)しているのを見てしまったり。なんつーか、メディアそのものの評価も下がりますね。まあ、人間が書いてても雑なのはダメですが。

アップル、初の折りたたみスマホ「iPhone Duo」10月23日発売 7.6インチ大画面で36.5万円から〈ケータイ Watch(2026年9月10日)〉

私はもう値段でドン引きしているのですが、そうでなくてもまったく食指が動きません。7.6インチですか。iPad miniは8.3インチですよね。ふーん、って感じ。まあ、こういうのが好きな人は好きなんでしょうね。

しばらく先行レビューしていたAppleのフォルダブルDuoについて語らせてくれ(CloseBox)〈テクノエッジ TechnoEdge(2026年9月10日)〉

こちらは「以前にもDuoって端末があったんだぜ」というネタです。PCエンジンにもDuoってあったっけ。

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新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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雑記

本稿は文学フリマ大阪の帰りの新幹線で書いています。さすがに店番しながら書くのは無理だったよ……新幹線の中だけじゃ終わらなかったから、家に帰ってから続きを書いたよ! がんばった!(鷹野)

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About 鷹野凌 973 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事(出版産業研究部会 部会長) / 明星大学 デジタル出版論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / 著書『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』(2026年・HON.jp Books)、『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)、共著『電子書籍ビジネス調査報告書2026』(インプレス)など。

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