ホワイトハウス内部発、匿名の警告本に司法省が横槍

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 今月19日にアシェットから刊行予定の「A WARNING(警告)」に対し、トランプ政権は司法省を通じて、この著者が秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement、以下NDA)違反をしている可能性があると通達した、と米業界誌パブリッシャーズ・ウィークリーが伝えている。

 Anonymous(匿名)としか伝えられていないこの著者は、昨年9月に匿名でニューヨーク・タイムズに寄稿し、「私は舞台裏でレジスタンスの一員としてトランプ政権の下で働いている者」で、「大統領は国益に反することをやっている」と吐露した人物で、身元はいまだに割れていない。

 アシェットの法務担当者と出版エージェントに宛てられた通告書で、NDA違反をチェックし、著書で国家機密に触れていないかについても知らせるよう要求している。アシェット側は、法的責任は全て著者にあり、出版社がNDAに縛られているわけではないが、著者の身元を保証するためにも司法省の要求には協力できない、と回答している。

 トランプ政権はこれまでにも、批判的な刊行物を差し止めようとマクミランやサイモン&シュスターといった出版社に対し出版停止を求めてきたが、表現の自由を政府が妨げることはできないとする憲法修正第1条の効力もあり、いずれも失敗している。

参考リンク

パブリッシャーズ・ウィークリーの記事
https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/publisher-news/article/81646-hachette-warned-by-doj-moving-ahead-with-a-warning.html
ケーブルニュース局CNNの記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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