米アマゾン、ニューヨークの新社屋建設を断念

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 シアトルの本社が手狭になってきたアマゾンが、国内のどこかに新社屋(以下HQ2)を建設し、5万人分の高給職を提供すると2017年9月に発表し、2カ所に分けたうちのひとつをニューヨークのロングアイランドシティにすると発表してから数カ月あまり、地元住民の猛烈な反対に遭い、ついに撤回を発表した。

 折しも、CEOジェフ・ベゾスはゴシップ誌「ナショナル・エンクワイヤラー」の親会社であるアメリカン・メディア社(以下AMI)から、愛人に送った下半身写真を公表すると脅され、その脅迫文書を公開するなど、ネガティブなニュースの矢面に立っており、マスコミが集中するニューヨークでこれ以上荒波を立てたくないという思惑が働いたものと思われる。

 また、ニューヨーク市は伝統的に労働組合の力が強く、かつてウォルマートがブルックリンに開店しようとした際もそれを阻止せんと様々な市民運動が起こるなど、巨大チェーン店の進出を阻む傾向が強い。HQ2誘致のため、ニューヨーク市は30億ドル近い誘致予算を組んだが、いくらでも儲けることができる巨大企業なのに、市民の税金を使って援助するのはおかしいと、州議会レベルで拒否権を発動できる体制を整えたり、地元住民への働きかけが行われていた。

 一方、もうひとつの候補地に選ばれたバージニア州では、地元自治体がさっそく奨励条例を整えていて、もう少し小ぶりの流通センターを獲得したテネシー州でも熱烈歓迎されている。こうも抵抗されてまでニューヨークに移る必要はないという判断もあったようだ。

参考リンク

計画中止を発表したアマゾンのリリース
https://blog.aboutamazon.com/company-news/update-on-plans-for-new-york-city-headquarters

ワシントン・ポストの記事
https://www.washingtonpost.com/local/virginia-politics/facing-opposition-amazon-reconsiders-ny-headquarters-site-two-officials-say/2019/02/08/451ffc52-2a19-11e9-b011-d8500644dc98_story.html
ニューヨーク・タイムズの記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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