裏ノーベル文学賞はグアドループのマリーズ・コンデに

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 今年度のノーベル文学賞がセクハラ問題に端を発し選考委員が次々と辞職、来年に2人に授与となったことで、有志によるニュー・アカデミー賞が急きょ組織されたが、受賞者は西カリブ海フランス領のグアドループ出身のマリーズ・コンデと発表された。

 ストックホルムでの授賞式に寄せられたビデオメッセージでコンデは「グアドループは地震やハリケーンの被害があったようなときにしか話題に上らない小国ですが、家族や友人とともに国民にもこの受賞を喜んでもらえるでしょう」と話した。

 Desirada、Segu、Crossing the Mangroveなど20作ほどの小説(日本語に翻訳されている作品は『嵐の巻く丘』、『わたしはティチューバ』など)で、審査員長のアン・ポールソンは「植民地主義の猛威やその後の時代の荒廃を鋭い言葉で紡ぎ出した」とたたえている。

 今年限りの文学賞だが、密室で決められるノーベル文学賞と違い、途中経過などの透明性を高め、授賞式も華やかなスウェーデン・アカデミーではなく、ストックホルム図書館で行われた。日本の村上春樹も最終ノミネートの4人に入っていたが、辞退したため、3人の候補から選ばれた。

関連リンク

英ガーディアンの記事
https://www.theguardian.com/books/2018/oct/12/alternative-nobel-literature-prize-maryse-conde-new-academy-prize
米ニューヨーク・タイムズの記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。