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外務省は4月15日、国連子どもの権利委員会が策定した「児童売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書」の実施ガイドライン案に対し、表現の自由に対する制約は最小限でなければならない、などの、見直しを要請する意見提出を行っていたことを明らかにした。
児童の権利条約は、1989年の国連総会で採択され、1990年に発効、日本は1994年に批准している。また、選択議定書は、性的搾取などから児童を保護するため、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに係る一定の行為の犯罪化、裁判権の設定、犯罪人引渡し、国際協力などについて定めるもので、2000年の国連総会で採択、2002年に発効、日本は2005年に批准している。
ガイドライン案に対し外務省は、総論含め49カ所への指摘コメントを提出している。まず、意見提出の機会があることは評価しつつ、ガイドラインの策定過程において条約締約国との協議がなされず、一般の意見募集と同様の形式で期限や上限を定めた意見を求めるやり方に懸念を表明。その上で、個別のパラグラフについて意見を表明している。
表現の自由に関わる第61段落については「表現の自由に対する制約は最小限でなければならず、児童ポルノの範囲については極めて慎重に検討しなければならない」と指摘。“pornography”(ポルノ)に音声媒体や文章まで含むかどうかは慎重に検討されるべきとし、“audio representations”(音声表現)と“written materials in print or online”(印刷やオンラインでの文章表現)を削除することを提案している。
また、被害者となる児童が実在しない場合にまで刑罰を科すべきかどうかも、今後慎重に検討されなければならないと指摘。“as far as it represents an existing child”(実在児童を表現する場合に限り)の追記や、“and including when such material represents realistic representations of non-existing children”(実在しない児童の写実的な表現を含む)の削除などを提案している。[※注:ここまで丸括弧内は当記事筆者による仮訳]
なお、既報だが、同ガイドラインには日本マンガ学会、エンターテイメント表現の自由の会(AFEE:Association for Freedom of Entertainment Expression)、アメリカのコミック弁護基金(CBLDF:Comic Book Legal Defense Fund)からも、表現の自由を脅かす懸念を示すパブリックコメントが提出されている。
参考リンク
外務省「児童の権利条約」のページ