【EPUB有料連載リンク】第15回 出版界の激変は続く — ジェリー・パーネル/訳・林田陽子「新・混沌の館にて」

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※いつもhon.jp DayWatchをご覧いただきましてまことにありがとうございます。

 いつもご覧いただいております読者の皆さまへの御礼も兼ねまして、今年9月から週1回程度、IT書籍の翻訳家として有名な林田陽子氏が個人で権利取得・有料配信スタートしました米国ITコラムニスト・ジェリー・パーネル氏の「新・混沌の館にて」を冒頭部分のみ抜粋して掲載しております。

 業界関係者の方は、EPUBを使った個人による新しい電子出版モデルの一例として、研究の参考にしてみてください。—hon.jpシステム部

11月コラムより

出版界の激変は続く

出版界の最新ニュースは、現在、電子書籍が出版市場の9%〜10%を占めるようになったことだ。さらに、電子書籍の売上高は増え続けている。電子書籍は間違いなく普及し続けている。電子書籍リーダーの売上高も増えていて、ローエンド(Kindle、Nookその他の低価格モデル)とハイエンド(iPadやタブレットPC)の両方の売り上げが伸びている。

教科書市場には電子書籍が本格的に普及していないが、それでもこういう状況だ。

<中略>

ハイエンドにしろ、ローエンドにしろ、いくつものシナリオが考えられる。ラップトップが大学でユビキタスになるにつれて、教科書をそれらのラップトップに入れたいという要求が高まるだろう。特に、今は教科書の値段が上がって、ラップトップの値段は下がっている。技術的な教科書はすでにもっと新しくて安い電子書籍リーダーと同じぐらいの価格になっている。教科書の値段がそんなに高いことを正当化する理由ははっきりしないが、造本コストが理由の一つとしてあげられることが多い。編集とフォーマット化のコストは電子書籍と同じでも、印刷、造本、配送のコストをごくわずかな最低限のコストに下げるためには、「印刷される」本の部数を増やさなければならない。

その市場、つまり電子書籍リーダーを持っている人の数は増え続けていて、その市場に参加するコストは下がり続けている。予測は明白だ。今から10年後には、大量生産のペーパーバックは、昔の45回転のレコードやカセットテープ・レコーダーと同じ運命をたどっているだろう。

【つづきは「新・混沌の館にて」サイトで http://www.sciencereadings.com/

EPUBの製作費

EPUBファイルの制作は製作者に依頼するつもりでした。料金を決めてほしいと依頼して、自分でもインターネットを検索してみましたが、そのころはそんなことをしている業者はなく、参考になる金額は分かりませんでした。デジタル・カタログの制作が比較的近いように思いました。

製作者の説明を聞いて、EPUBをSigilで作る場合、画像やリンクがあるのとないのとでは、手間のかかり方がだいぶ違うということが分かりました。このコラムは1か月分が400字換算で40ページ前後です。画像は、たまに1枚か2枚入るぐらいですが、参照先や書評コーナーの書籍の書誌データなどリンクが20か所ぐらいある月もあります。私から「ページ数ベースで料金を決めて、画像1枚いくら、リンク1か所いくらと設定してはどうでしょうか」と提案しました。文章だけの本よりも手間がかかる分を、料金に反映できるようにした方がよいと考えました。

しばらくして、試算用のシートが送られてきました。基本作業料、表紙製作費、ページ数ベースの料金、画像、リンクの値段、ページの追加や修正費用などが設定されていて、それぞれの数値を入れると金額が算出できるようになっていました。試しにその月のコラムのデータを入れてみたところ、だいたい数万円でした。

後になって、また委託先を探し始めたとき、ある電子書籍書店は、EPUBをそのまま使うことができず、そちらの独自ファイルを制作するのですが、その費用がだいたい同じぐらいの金額でした。技術力が必要なので、料金そのものは決して高いとは思いませんが、私個人で負担するコストとしてはかなり高額だと思いました。

結局、私の場合は、費用を削減するために自分で制作することにしました。このコラムは毎月EPUBファイルを作らなければならないので、これだけの出費が毎月続いたら、早晩続けられなくなると考えたからです。

電子書籍は売値が少額で、販売を委託すると収入はさらにその数十%です。個人の場合、製作費を抑えておかないと、それほど多く売れなかった場合、利益を出すのは難しいと思います。最近は、EPUBファイルを自作するプラットフォームを無料で提供するサービスが出てきているので、それを利用するのもよい方法かもしれません。n

問合せ先:新・混沌の館にて」サイト http://www.sciencereadings.com/

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