「日販、Anthropicへの書籍販売を認める回答」「Amazon、Fireタブレット終了方針」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #735(2026年10月4日~10日)

【写真】PAPER WALL エキュート立川店(photo by TAKANO Ryou)
noteで書く

《この記事を読むのに必要な時間は約 14 分です(1分600字計算)》

2026年10月4日~10日は「日販、Anthropicへの書籍販売を認める回答」「Amazon、Fireタブレット終了方針」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

政治

「海賊版王国」ベトナム、サイト運営者を初立件 日本コンテンツを保護〈日本経済新聞(2026年10月6日)〉

素晴らしい! タイトルを見て「海賊版に対する総合的な対策メニュー(PDF)」にある外務省の役割関連かな? と思ったのですが、記事本文には外務省の名前が見当たらず。今回のこれはCODAの働きが大きかったのでしょうか。

楽譜を模倣し無断で公開、1億6900万円の賠償命令…最高裁が初判断「営業妨害で不法行為にあたる」〈読売新聞(2026年10月9日)〉

ほぼ同内容の模倣版がウェブで無料公開(広告収入狙い)されたことにより売上が激減したから不法行為が認められた、という理解です。それが【解説】部分でいきなり生成AIの話に。「作り手の保護を重視した判決は、こうした(生成AI関連の)訴訟に一定の影響を与える可能性もあり」という理路ですが、どうなんだろう? 著作権法では難しいから、そういう方向で攻めるという話なのかしら?

社会

電子コミック“しか読まない”人はかなり少数派?16%にとどまる…6割弱は「紙のマンガも読む」〈オタク総研(2026年10月5日)〉

素直に考えると「電子コミック“しか読まない”人」は、そりゃ少数派になるでしょう。私はコミックをほとんど電子で読んでいますが、紙で読む場合もまれにあります。その場合「紙マンガ」は「あまり読まない」になるわけです。超電子派の私でさえそういう状況だから、むしろ、電子コミック利用者で「紙マンガ」を「まったく読まない」人が16%もいるのか……という感覚になりました。

トルコで開かれた日本文化・アニメイベントが暴徒の襲撃を受け、中止を余儀なくされる〈ニューズウィーク日本版(2026年10月6日)〉

こちら、事件直後からX(旧Twitter)で騒ぎになっていましたが、国内の主要なメディアではどうやらこれが初めての報道で、本稿執筆時点でも国内他メディアの報道は見当たりません。なぜだ。ニューズウィークは明言を避けているようですが、どうやら「イスラム原理主義グループによる襲撃」のようです。「子供たちの将来と私たちの価値観にとって悪い手本となる」「社会の家族構造や国家的・精神的価値観に反する」などと主張している模様。「当局による逮捕、捜査、公式声明は一切出ていない」というのがなんか不気味です。「トルコは親日国」という評判もいまは昔なのでしょうか。

話題のベストセラー小説はAIで書かれた? 文学は「疑いの時代」に入ってしまった〈ニューズウィーク日本版(2026年10月8日)〉

しかし私は応募や投稿の条件として、部分的でも生成AIで書かれた作品は禁止すべきだと思う(略)生成AIは0%であるべきだ。

うん、そういう主張をするのは自由です。であれば、約5%に生成AIが利用されているという芥川賞受賞作・九段理江氏の『東京都同情塔』も否定することになります。本作でどこに生成AIが使われたかは明かされていませんが、恐らく作中に登場するAIとの会話文だと思うので、個人的にはけっこう必然性がある使い方だと思うのですよね。読んでみて、納得した記憶がある。まあ、その使い方すら否定するのも自由です。

AIで検索した「判例」、実は存在せず 出版社が絶版・回収を発表〈朝日新聞(2026年10月9日)〉

ぎゃあああああ。とうとうこういう事例が出てしまった。試しにスタンフォード大学図書館バーチャル判例集国際犯罪裁判記録を使ってみたんですが、入り口にCloudflareのボットチェックがあるので、恐らく通常のチャットボットは入れないはず。「AIで検索できる」と思い込んでしまったことが発端の事故でしょう。

まあ、発端がそうだとしても、出力結果を鵜呑みにして検証していないあたり、ご本人も反省文で「研究者としてあるまじき失態だと深く反省」と書いているように、研究者としても大学教授としても恥ずべき行為でしょう。返す刀で「編集者仕事しろ」とも言いたい。参考文献をチェックしないのか。

AI時代へ早急な教育改革を〈日本経済新聞(2026年10月10日)〉

これはそう。そうなんですよ。人は今後、ますます外部記憶に依存するようになり、記憶力の重要性が下がる。丸暗記してクイズに答えるようなテストの意義が薄れる。そして「問いを立てる能力」が重要になる。「総合的な学習の時間」って、そういう方向性じゃなかったっけ?

経済

日販がアンソロピックに日本の書籍を無断で販売、大量スキャンでAI学習に利用か…出版関係者「許せない」〈読売新聞(2026年10月6日)〉

日販から回答が出たことを受け、業界紙・経済紙のみならず、一般紙も一斉に報じています。「許せない」が一般ユーザーのツボに入ったのか、恐らくいちばんバズってるのはこの記事。「合法なのに何を言うか」「無断で販売に何の問題が?」など、新聞社・出版社に対する反発の声が目立ちます。

出版取次の日販、米AI企業への書籍販売を認める 業界団体に回答〈朝日新聞(2026年10月6日)〉

朝日新聞には子会社の名前「日販IPS」が明記されてました。グループ内で書籍の輸出入を担当する企業です。つまり「卸が直接売った」わけではない。私としては以前にも書いたように、卸の立場で直接売ったのでないなら、とくに問題はないというスタンスです。Central LibraryをRAG用途で使わないのであれば。使うなら、RAGで参照するたびに対価をよこせ、ですね。

アンソロピックへの書籍販売、適法でも出版社反発 業界ルール求む声〈日本経済新聞(2026年10月7日)〉

日経新聞は上野達弘氏(早稲田大学教授)から「日本の著作権法では適法になる」「本の内容そのものが出力されない限り、直近の訴訟例では米国でも適法となる可能性が高い」というコメントをとっています。出版社側としては「信義にもとる行為」という批判をするしかない感じでしょうか。

むしろ出版関係者(匿名)の「取次が売らなくなっても電子商取引(EC)サイトや古書店から買えばいいだけ。根本的な解決にはつながらない」という声が非常に冷静で良いなと思いました。問題は、どうやってその「根本的な解決」をするかですが……それが前述の「不法行為」で攻める、なのでしょうか。

技術

日経にサイバー攻撃 情報漏洩、不審メール9000件送信〈日本経済新聞(2026年10月4日)〉

日経BP、メールアカウントへの不正アクセスにより個人情報漏えいの疑い。日経新聞社への攻撃が影響〈INTERNET Watch(2026年10月6日)〉

「楽天ドライブ」で不正アクセス、保存データ1万5382件が閲覧・取得〈ケータイ Watch(2026年10月6日)〉

1億件超えの「楽天会員」情報が闇フォーラムで販売? 楽天「漏えいは確認されていない」〈ITmedia NEWS(2026年10月7日)〉

IDCFクラウドへの不正アクセス、ランサムウェア攻撃と明らかに 運営会社が回答〈ITmedia NEWS(2026年10月7日)〉

ソフトバンク系にランサム攻撃、障害続く ニッスイ子会社は配送停止〈日本経済新聞(2026年10月8日)〉

NewsPicksユーザーの個人情報漏えいか 勤務先やカード番号下4桁も……管理ツールに不正アクセス〈ITmedia NEWS(2026年10月9日)〉

ブックオフに不正アクセス、最大約643万件の個人情報流出 氏名、住所、ハッシュ化パスワードなど〈ITmedia NEWS(2026年10月9日)〉

異様な件数の不正アクセス報道が出ています。出版・メディア周辺だけでもごらんのありさま。この中で「楽天会員」は漏洩していないようですが、否定されていることが認知されていないっぽいので取り上げておきます。ちなみに日本経済新聞は「パーク24の情報管理はずさんすぎる」という社説が出た直後の発表で、盛大なブーメランになっています。我々も他山の石としなければ。まあ、これだけ次から次へだと、もう感覚がマヒしてきますね。危ない。

AIでサイバー攻撃のコスト激減 数行の指示だけで27社に侵入、カード情報60万件超が流出〈週刊アスキー(2026年10月5日)〉

不正アクセスなぜ急増 原因はAIか、それとも…… 専門家の見解は〈ITmedia NEWS(2026年10月6日)〉

「異常な事態」、AI悪用は「否定する方が難しい状況」──多発する情報漏えいにセキュリティ専門家が合同で見解 攻撃の特徴と対策方法は〈ITmedia AI+(2026年10月8日)〉

止まらない不正アクセス、背景にAIの“超高速攻撃”か 識者「使われていない方が不自然」〈ITmedia NEWS(2026年10月8日)〉

不正アクセスが世界で急増、9月以降に情報漏洩3億人 攻撃にAIの影〈日本経済新聞(2026年10月9日)〉

当然、なぜこれほど急増しているのか? という話に。真面目な専門家ほど、確証がないと「断定できない」と言いますよね。というか、うかつなことを言えない。でもセキュリティ企業って立場的に「危機意識を煽った方が儲かる」だけあって、いささか煽り気味な気がします。仮にAIが原因だったとして、我々一般ユーザーに打てる手は限られているのが歯がゆい。

Google AI Overviewsでサイトへのクリックが約4割減、満足度は変わらず〈海外SEO情報ブログ(2026年10月6日)〉

「AIによる概要」が出るのがGoogle検索全体の4割なので、「Google検索全体でサイトへのクリックが4割減った」わけではなく、約18.5%の減少になるそうです。以前、意味や方法を調べるKnowクエリでは「AIによる概要」の影響が出ているという話があったので、むしろ「その程度か」という印象を受けました。

「WordPress 7.1.3」が公開、7件の脆弱性と4件の不具合を修正〈窓の杜(2026年10月7日)〉

朝起きたら管理中のサイトすべて WordPress 7.1.3 に自動更新されていたので、朝飯前にプラグインの更新作業をしておきました。Anthropicから報告された脆弱性の更新も含まれているのですね。良い貢献だ!(たまには褒めておく)

Amazon、「Fire」に代わる新タブレット「Amazon Alexa Tablet」発表 「Amazonキッズタブレット」は日本でも発売へ〈ITmedia NEWS(2026年10月9日)〉

Amazonのタブレット「Fire」シリーズ、終了する方針であることが明らかに。新タブレットも発表【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2026年10月9日)〉

日本向けのプレスリリースには「Amazonのタブレット史上初、Google Playストア対応」の「Amazon キッズ タブレットシリーズ」が発売とあり、Fireタブレットがどうなるかは書かれていませんでした。Android端末向けのAmazonアプリストアは2025年8月にサービス終了していますが、FireタブレットなどのAmazonアプリストアはまだ継続してるんですよね。

ちょっと考えて、キッズ向け限定であれば競合他社の電子書店系アプリは年齢制限で弾かれるから問題ないのかも? と思ったのですが、結局、終了方針との報道がありました。新タブレット「Amazon Alexa Tablet」は日本向けの発売予定がまだ出ていない(日本にはキッズ向けしか発表されていない)のはなぜだろう……。

お知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

HON.jp「Readers」について

HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。

日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

メルマガについて

本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。

雑記

文学フリマ福岡には当日朝、飛行機で行きました。乗り慣れていないこともあり、大失敗。羽田空港に着いてから、予約したチケットが成田空港発であることに気がつきました。ぎゃあああ。慌てて羽田発のチケットを取り直し、なんとか開催には間に合いました。成田発のチケットはキャンセルが間に合わず……トホホ(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

noteで書く

広告

新刊『出版とフリー』のご案内バナー画像

著者について

About 鷹野凌 974 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事(出版産業研究部会 部会長) / 明星大学 デジタル出版論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / 著書『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』(2026年・HON.jp Books)、『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)、共著『電子書籍ビジネス調査報告書2026』(インプレス)など。

0 コメント
高評価順
最新順 古い順