「国旗損壊罪法成立」「教科書の形態に関する意向調査結果公表」「アメリカでロマンス小説専門書店が急増」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #724(2026年7月12日~18日)

【写真】日の出書店(photo by TAKANO Ryou)
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 2026年7月12日~18日は「国旗損壊罪法成立」「教科書の形態に関する意向調査結果公表」「アメリカでロマンス小説専門書店が急増」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

【目次】

お知らせ

9月19日(土)に世田谷文学館で開催される朗読フェスティバル「NovelRecital」のブース出店申込を開始しました。詳細は下記リンク先をご確認ください。早い者勝ちです。

政治

デジタル教育「先進国」ノルウェーの教育相、日本への助言「私たちが犯した過ちを繰り返さないように」〈読売新聞(2026年7月12日)〉

「理科の実験せずに動画で」懸念…「デジタル正式教科書」見据えた検定ルール議論始まる〈読売新聞(2026年7月14日)〉

「授業中に漫画や動画見続ける生徒」「手書き減少」…デジタル教科書に負の側面「立ち止まる勇気も必要」〈読売新聞(2026年7月15日)〉

読売新聞によるデジタル教科書へのネガティブキャンペーン。徹頭徹尾、デジタル教科書の「負の側面」しか語っていません。メリットについて言及している記事を、少なくとも私は見たことがない。他の大手紙はアクセシビリティについて触れていることを確認していますが、読売新聞はマジで皆無。知らんのか、興味がないのか、わざとなのか。

ノルウェーが紙に回帰したのは、スウェーデンと同様、政権交代がきっかけのようです。前政権の政策否定という側面。あと、ノルウェー政府のOECD向け報告書(2024-2025)によると「非EU圏・アフリカ・中東など出身の移民児童は平均して成績が低い」「2022~2024年に5年生の読解力が低下し、その傾向は移民児童で特に大きい」とされているそうです(4.1 教育セクション)。「だからPISAの点数が下がった」という結論ではないのですが、一考に値する事実でしょう。

デジタル教科書「ハイブリッド」希望、小中学校で約9割 文科省調査〈朝日新聞(2026年7月16日)〉

文部科学省が調査した教育委員会・学校の「教科書の形態に関する意向調査結果」がこちら。「小学校低学年・中学年では、全ての教科に渡って、ほぼ紙か紙の方が多いものを望む回答の割合が多い」とのことです。読売新聞のネガティブキャンペーンが効いたのか、文科相の答弁が効いたのか、はたまた、もともと教育委員会が保守的だからなのか、理由はわかりません。が、まあ、そうなる気はしていました……とほほ。

国旗損壊罪法が成立 「損壊、汚損」で拘禁刑や罰金も〈毎日新聞(2026年7月17日)〉

国旗・国歌法ができたのは1999年のことでした。それ以前は、国旗・国歌と呼べなかったので「日の丸」「君が代」だったんですよね。そういう歴史経緯と変化が起きていることを踏まえておきたい。いずれ、国旗に一礼が単なる儀礼ではなく、頭を下げないと「不敬」とか「あいつはアカ」みたいなことを言われてしまう時代になっていくのでしょうか。

現状、掲揚の法的義務はないはずですが、官庁や学校は条例・指導・儀礼で半ば強制されてるから、より慎重な扱いが求められるでしょう。一般市民にはむしろ、国旗の所持・掲揚がリスクになるので、敬遠されることになりそう。しかしこれ、違憲判決狙いでわざと汚損・逮捕される事案がきっと起きますよね(私はやりません)。

国民民主が性的ネット広告規制する法案提出 青少年の目に触れない措置を業者に義務付け〈産経ニュース(2026年7月17日)〉

総務省の「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループ」での議論がもうすぐ第一次報告書として公開されるはずですが、待てぬとばかりに議員提出法律案(議員立法)が出ました。25日まで延長されたとはいえ、会期末ギリギリに提出ってほんとうにやる気があるのか疑ってしまう。国民民主党の衆院選公約だったから、有権者向けのポーズでしょうかね?

Appleが今秋リリースのiOS 27で、子ども向け安全機能(フィルタリング・ペアレンタルコントロール機能の強化)を発表してますから、同様の機能をMicrosoftとGoogleにも義務付ける方向性なら実現できそうな気がするんですけどね。

社会

『ジャンプ』売切続出、読者は怒りと嘆き 『アオのハコ』最終回の記念号買えず…原因は付録が転売ヤーの標的〈オリコンニュース(2026年7月13日)〉

通常より50万部増で発行したのに、それでも足らなくなってしまったようです。恐るべし、転売ヤー。総発行部数は非公開のようですが、印刷証明付き発行部数は2026年1月~3月でギリギリ100万部なので、今号は150万部発行したことになるのでしょう。150万個の付録って、転売して利益が出るものかしら? TSUTAYAが買取で1円査定と発表したそうですが。

出版物違法サイトの状況〈ABJ(2026年7月14日)〉

「今回から日本国内向けと英語翻訳世界向けの2本の折れ線グラフを掲載」とのこと。国内向けは持続的な抑制ができていますが、世界向けは高止まりしてますねぇ……現地の事業者に不利益が発生しているような状況じゃないと、現地の当局が動いてくれないというのはありそうです。

Update: Elsevier is Suing Meta For Whom? (And will we ever really know?): Some thoughts on copyright class actions claiming to represent authors(最新情報:エルゼビアはメタを誰のために訴えているのか? (そして、私たちは本当にそれを知ることができるのだろうか?) :著者を代表すると主張する著作権集団訴訟についての考察)〈Authors Alliance(2026年7月15日)〉

類似訴訟があるため、Elsevier対Metaの訴訟も集団訴訟へ移行(統合)する見通しです。その場合に予想される問題点がいくつか指摘されています。たとえば、Bartz対Anthropic訴訟の和解金分配で発生している問題について。申し立てのあった作品数を44万点、1件の処理に30分かかるとすると、22万時間、約1世紀のフルタイム労働に相当するそうです。読んでいて思わず「うわ!」と声が出てしまいました。確かに、その事務処理を行う人件費だけで大変なことになりそう。

経済

【重要】Kindleストアにおける一時的な販売停止と復旧のお知らせ(2026年7月10日更新)〈BCCKS Support Center(2026年7月10日)〉

一部作品の影響で、BCCKSのKDPアカウント全体が止められてしまいました。以前にも何度かありましたね……お疲れさまでした。

関係性開示:BCCKSには、HON.jpの法人会員として事業活動を賛助いただいています。しかし、本欄のコメント記述は筆者の自由意志であり、対価を伴ったものではありません。忖度もしていません。

出版社だって値上げしたい〈雨宮 有希(2026年7月11日)〉

同じジャンル、同じボリュームの本が並んでいれば、読者は価格も比較します。

このことについては何度か書いてる記憶がありますが改めて。これって、ジャンルによりますよね。実用書なんかには当てはまると思います。と、Facebookグループで書いたら「学習漫画」「図鑑」「ビジネス書」なども、というコメントをいただきました。ご指摘感謝。

まあ、柳の下で二匹目三匹目四匹目五匹目のドジョウを狙うようなやり方とか、類書がないと出版が難しいみたいな前例主義だと、代替性が高くなるのはわかります。それでも、まったく同じ内容の本というのはあり得ないから、まず内容を比較するのでは。

そもそも本来は「個々の出版物が他にとってかわることのできない内容(by書協)」なんですよね? 代替できないはずなのに、同時に「出版物の定価は、出版社間の激しい価格競争のため低めに決められています(by書協)」と言い切ってしまう矛盾もあります。

たとえば、村上春樹の新刊が買いたくて書店に行って、値段を見たら同じジャンル・同じボリュームの他の本よりちょっと高いから止めて他の作品を買った、みたいな行動はまず起きないはずです。また、シリーズの続刊が既刊より値段が上がったからといって、同じジャンル・同じボリュームの他の本に浮気をすることは考えづらいです。だって話の続きが読みたいのですから。代替性の高いコモディティ商品とは、価格に対する考え方がちょっと違うと思うのですよね。

AI時代、アナログのすすめ ぴあ社長 矢内廣〈日本経済新聞(2026年7月13日)〉

何か今週末におもしろい映画はないかと思っても、タイトルなしでは探せない。かつての雑誌「ぴあ」はページをペラペラ繰ることでそれを見つけることができた。グーグルではできない「曖昧検索」だ。

え? そういう認識で「とぶ!ぴあ」を復刊したんですか? そんな認識で大丈夫かしら。復刊前の「編集にAIを最大限活用」って報道にも不安を覚えましたが。たとえばGoogleは私の嗜好情報をたくさん持ってますから、私の好みに寄せたチョイスとかいまならぜんぜん可能だと思うんですよね。「Googleには曖昧検索ができない」というのは、思い込みじゃないかなあ。

オンライン書店はリアル書店を完全に代替するものではない、実店舗が閉店すると本の販売数は減少する〈GIGAZINE(2026年7月14日)〉

これはドイツの調査ですが、日本でも同様です。日販「出版物販売額の実態2025」によると、紙の本はまだ6割近くがリアル書店で売れてます。インターネット経由(紙のみ)は2割強。ぜんぜん代替できていないのです。

Romance Bookstores Are Surging Across the Country(ロマンス小説専門書店が全国的に急増している)〈Publishers Weekly(2026年7月17日)〉

ほぼ全員が女性の書店員で、客も女性。愛、セックス、ロマンスについて率直に語り合う、地域のコミュニティスペースとして機能しているそうです。

“What is more subversive than women gathering to talk about books and sex?” she asks.(「女性たちが集まって本やセックスについて語り合うこと以上に、反体制的なことがあるでしょうか?」と彼女は問いかける)

かっこいい。

技術

【やじうまミニレビュー】3千円台で買える「Kobo Remote」、実はKindleアプリと相性抜群?〈PC Watch(2026年7月13日)〉

ただのページめくりデバイスなのですが、Kindleアプリでは動いて国産アプリでは動かないとの報告。なぜなんだろう? 確証はないのですが、欧米系はアクセシビリティ対応基準が厳しいのに対し日本は緩いから、という違いのような気がします。Voiceover(iOS系)やTalkBack(Android)といった標準搭載の読み上げが国産アプリでは機能しない傾向と似ているから。楽天Koboは国内向けだけグローバルとは別なんですよね。記事内には名前が挙がってないのですが、もしApple BooksやGoogle Playブックスで動いたら、この推測の疑いがより濃くなる。試してみたいな。買おうかな。

Google画像検索、ホーム画面を大胆リニューアル。大量の写真で埋め尽くされたデザインに批判の声も【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2026年7月15日)〉

ホーム画面のデザインはともかく「検索画面で直接、新しい画像を作成できる機能」はちょっと物議を醸しそう。デモを見る限り、X(旧Twitter)やMetaみたいな、他人の画像を勝手に加工できるようにする機能ではなさそうですが。最初、Google画像検索で出てきた画像を勝手に加工する機能だと勘違いして「Googleよ、お前もか!」と書きかけたのですが、そうではなく「AIによる概要」に組み込まれるようです。

お知らせ

NovelJam 2026開催!

今年もやります! 即興で小説を書いて本にして販売するまで3日間でやりきる出版創作イベント「NovelJam 2026」クラウドファンディング実施中!

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

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日刊出版ニュースまとめ

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雑記

今年もとうとう35度超えの猛暑日が記録され始めました。気象庁のデータによると、先週は14(火)と16(木)の2回あったそうです。しかし、本稿執筆時点でまだ「梅雨明け」は発表されていないのですね。暑さより湿気がキツイ……(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
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著者について

About 鷹野凌 957 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など。

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