「Search ConsoleでAI検索への利用除外設定が可能に」「Anthropic上場目論見書の訴訟リスク詳細」など、週刊出版ニュースまとめ&コラム #739(2026年11月1日~7日)

【写真】三省堂書店 神保町本店小川町仮店舗(photo by TAKANO Ryou)
noteで書く

《この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です(1分600字計算)》

2026年11月1日~7日は「Search ConsoleでAI検索への利用除外設定が可能に」「Anthropic上場目論見書の訴訟リスク詳細」などが話題に。広い意味での出版に関連する最新ニュースから編集長 鷹野が気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントしてあります。メルマガでもほぼ同じ内容を配信していますので、最新情報をプッシュ型で入手したい場合はぜひ登録してください。無料です。クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)でライセンスしています(ISSN 2436-8237)。

お知らせ

恒例の出版ニュース振り返り番組は12月19日(土)13時30分から渋谷&オンラインで開催します。3部制で登壇者9名! リアル会場では終了後に懇親会もあります。今年1年をこの番組で振り返りましょう!

政治

裁判の経過に関する報道のジャンルを[政治]と[社会]どちらにするかに迷いがありブレが生じていたのですが、今後はなるべく[政治]ジャンルで扱うことにします。

The Wikimedia Foundation files to protect open knowledge in New York Times v OpenAI case(ウィキメディア財団、ニューヨーク・タイムズ対オープンエーアイ訴訟においてオープンナレッジの保護を求める意見書を提出)〈Wikimedia Foundation(2026年10月30日)〉

この訴訟、たくさんの意見書が提出されていますが、中でもこれは面白い。AAPの意見書はいわゆる「希釈化理論」に立脚し、学習でのフェアユースも否定しています。しかしウィキメディア財団は、学習(training)と参照(RAG)を分けて考えるべきだと主張しています。つまり、学習はフェアユースでいいけど、RAGでの利用(つまり参照)はフェアユースではない、という意見です。これは私も同意見。以前から言ってることですが、「学習」と「参照」は混同しないほうがいいです。

これを日本の話に転換すると、AIによる「学習」は著作権法第30条の4(非享受目的利用)が該当しますが、AIによる「参照」は著作権法第47条の5(軽微付随利用)の権利制限が該当します(詳細は文化庁による解説を参照)。OpenAI ChatGPT、Anthropic Claude、Google Geminiなどのチャットボットがウェブを検索して回答を出力するのは、拡張検索生成(RAG)と呼ばれる利用で、「学習」ではなく「参照」です。ふつうの検索結果にスニペットを表示する利用に近い。

個人的には、RAGでの利用は軽微利用に該当しないという方向で攻めたほうが、まだ勝ち目があるように思うのですよね。というのは、実際にそれで「ゼロクリック」が発生して収益が減少しているなら「権利者の利益を不当に害することとなる場合」に該当するわけですから。AI学習を正当化する著作権法第30条の4方面で攻めるのは、ちょっと無理がある。

グーグルAIの記事利用は著作権侵害の可能性、EU裁判所法務官が意見〈ロイター(2026年11月4日)〉

EUは著作権法の枠組みで戦うのですね。イギリスは著作権法ではなくデジタル市場・競争・消費者法という新法の枠組みでの規制で、AIによる概要への利用だけ拒否して通常の検索結果(10 Blue Links)はそのまま表示する機能の試験導入を6月から始めました(後述しますがこの機能は既に全世界へ展開されています)。Googleの「ジェミニはコンテンツを複製するのではなく、言語パターンを学習して独自の回答を生成している」という抗弁はつまり「AIの要約で表現は借用しておらず、事実だけを用いている」ということでしょう。これにどこまで対抗できるか。なお、EU裁判所法務官による意見に法的拘束力はないのですが、EU司法裁判所の判決は7~8割くらい一致するそうです。

「有料記事を無断収集・販売」NYTが新興提訴、アンソロピック向けか〈日本経済新聞(2026年11月4日)〉

うわー、これは真っ黒だ。訴えられたのはAnthropicではなくBrave Softwareです。つまり、プライバシー保護がウリのブラウザ「Brave」の開発・提供元。ユーザー向けにはいい顔をしておいて、裏では真っ黒なことをやってたってことになるでしょうか。この記事の段階では、Braveからコメントは得られていないそうです。

GMOインターネットの情報漏えい事案で総務省が業界団体に「ブロッキング要請」との報道 NTTは動いた?〈ITmedia Mobile(2026年11月5日)〉

総務省から要請があったか否かについては「ノーコメント」とのこと。「ブロッキングは法整備してから」というのは、「漫画村」事件のころから私も主張していることなので同意します。刑法の緊急避難に基づくブロッキングというのは、いろんな意味で危なっかしい。しかも政府が「命令」ではなく「要請」で民間企業を従わせようとしているわけですから。

社会

「文学フリマU25東京1」を開催します!〈文学フリマ(2026年11月3日)〉

おお、これは面白い試み。サポーター枠だと出店料が高く、U25枠だと安いというちょっといままでとは違った開催方式。入場料もU25は無料です。従来の文フリはそのまま開催されるわけですし、良いと思います。応援する側で出ようかな。「U25割」とかどうだろう? U25限定25%割引セール。ちなみにうちもNovelJamで、法人協賛・クラファンのご支援により「学生無償」をやっています。

Google、学校でAIと検索機能を禁止可能に 提供拡大から一転〈日本経済新聞(2026年11月4日)〉

学校側がAI利用を禁じると、通常のグーグル検索も使えなくなる。現在の検索機能には対話式の「AIモード」が標準搭載されており、同モードだけを制限することが難しいことが理由とみられる。

これはひどい。URLパラメータ &udm=14 で出てこなくなりますし、CSSで非表示化する拡張機能もあります。Googleがその気になれば簡単に分離できるはずなのに、セットじゃないとダメだとかあまりにひどい。Don’t be evil!

経済

Anthropic上場申請書類 書籍スキャンについての言及はわずか Publidia #280〈Publidia(2026年11月2日)〉

うおー! これは素晴らしい! Anthropicが上場目論見書で「人類滅亡リスク」について長々と語っているという報道は私も見たんですが、あまりのバカバカしさに詳細を確認する気が起きなかったんですよね。考えてみれば、あちこちから著作権侵害で訴えられているわけですし、訴訟リスクについて触れないはずがない(二重否定)。気づきませんでした。脱帽です。「theLetter」の「読者限定」は無料登録だけで読めます。みんな読むべし!

NielsenIQ BookData Report Emphasizes Metadata as a Key ‘Strategic Asset’(ニールセン・アイキューのブックデータレポートはメタデータを重要な「戦略的資産」として強調)〈Publishing Perspectives(2026年11月6日)〉

いわゆる「ディスカバラビリティ(発見されやすさ)」の効果が数字で示されています。

Books with a long description sold 119% more on average than those without.(詳細な説明文が掲載されている書籍は、そうでない書籍に比べて平均で119%多く売れた)

「詳細な説明文がない書籍」ってどういうことだろう? と思い、レポートをダウンロードして確認しました。NielsenIQの拡張サービスではメタデータに「短い説明、長い説明、レビュー情報、著者の略歴、キーワード」が追加できるそうです。長い説明の「遵守率は全体で87%」とあるので、残りの13%は長い説明を入力していないのでしょう。情報発信が怠惰だと、そのぶんだけ売れなくなる。分かりやすい。

技術

AI学習への利用拒否をrobots.txtで一括指定へ OpenAIやGoogleなどが対応表明〈ITmedia NEWS(2026年11月1日)〉

この対応をまるっきり否定するわけではないのですが、あくまで「AI学習への利用拒否」だから、拒否してもRAGには使われます。これでは、「AIによる概要」や「AIモード」で利用されるのは防げない。だって何度も言うようですが、拡張検索生成(RAG)は学習(training)ではないので。でも、後述しますが、防ぐ機能はすでにあります。

「作品の78.3%がAI生成」と判定された作家も、出版中止騒動が突きつけた文章の真贋と検出技術の限界 【生成AI事件簿】AI検出サービス「Pangram」をめぐる出版界の騒動、AIの癖を避ける書き手たちの苦悩〈JBpress(2026年11月2日)〉

Pangramは私も無料の範囲で試してみたことがありますが、どうも日本語の判定は苦手な印象を受けました。100%AI出力の文章でも、100%人間って判定しましたし。逆の、人間が書いた文章を誤ってAIが書いたと判定してしまうという「偽陽性」を避ける方向に調整されているって話ですが、正直、どこまで信用できるやら。ちなみに個人的には、べつになにを使おうと「面白い」文章なら構わないと思っています。ただし、AIポン出しで「面白い」文章にはなかなか遭遇しませんけどね。目が滑る。

ドコモに不正アクセス、最大約30万件の個人情報が漏えい〈ケータイ Watch(2026年11月5日)〉

ドコモの契約件数って9000万件以上ありますから、「最大約30万件」というのはむしろ妙に少ないという印象です。なにか特定のサービスだけやられたんでしょうか? 会見では「システム連携の隙」を狙われたという説明があったようですが、「システム連携の隙」ってなんのこっちゃ。My docomoが止まってますので、その周辺であることは間違いないはずですが……。

AI Overviews・AI ModeのCTRは検索全体の2倍以上、28日間のオプトアウト実験で推定〈海外SEO情報ブログ(2026年11月6日)〉

実験に使ったのは、2026年8月に全世界で提供が始まった生成AI検索からのオプトアウト機能です。

実験そのものより、こっちの記述にびっくりしました。いつのまに! 調べてみましたが、海外でもまだSEO専門メディアくらいしか報道していないようです。私含め、ほとんど誰も気づいてなかったのでは。

このオプトアウト機能があるのとないのとでは、批判側の声の妥当性が大きく変わってくるはず。Googleに「だから『権利者が利用を拒否できる仕組みを提供している』って言いましたよね?」と言われてしまいそうです。この設定の存在を知らずにそう言われたら、robots.txtの話をしていると勘違いしますよね。

ちなみに、Search Consoleのヘルプには「この設定は、特定の検索の生成AI機能にお客様のコンテンツを表示するかどうかにのみ影響します。Google検索の他の部分に影響を与えるランキングや掲載可否のシグナルとしては使用されません」と明記されていました。つまり「除外」に設定しても従来の自然検索には影響しないんですって!

その他のお知らせ

新刊『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』について

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

HON.jp「Readers」について

HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、週に1回届くHONꓸjpメールマガジンのほか、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。

日刊出版ニュースまとめ

伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。
https://hon.jp/news/daily-news-summary

メルマガについて

本稿は、HON.jpメールマガジン(ISSN 2436-8245)に掲載されている内容を同時に配信しています。最新情報をプッシュ型で入手したい場合は、ぜひメルマガを購読してください。無料です。なお、本稿タイトルのナンバーは鷹野凌個人ブログ時代からの通算号数、メルマガのナンバーはHON.jpでの発行号数です。

雑記

いまこれを書いているのは文学フリマ東京43の前日です。いつもメルマガの原稿は日曜日に書いているのですが、日曜日に用事があって身動きできない場合は土曜日に書くようにしています。土日両方潰れる場合は……臨時休刊かな(鷹野)

CC BY-NC-SA 4.0
CC BY-NC-SA 4.0
※本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

広告

本で寄付するチャリボンのご案内バナー画像
新刊『出版とフリー』のご案内バナー画像

著者について

About 鷹野凌 979 Articles
NPO法人HON.jp 理事長 / HON.jp News Blog 編集長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事(出版産業研究部会 部会長) / 明星大学 デジタル出版論 非常勤講師 / 二松学舍大学 編集デザイン特殊研究・ITリテラシー 非常勤講師 / 著書『出版とフリー 〈無料〉との競争の果てに起きたこと』(2026年・HON.jp Books)、『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)、共著『電子書籍ビジネス調査報告書2026』(インプレス)など。

0 コメント
高評価順
最新順 古い順