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電子書籍の中で今一番元気がよいのがケータイ読書だ。われらのスーパー・コンテンツ・マシン「携帯電話」で本を読んでしまうのだ。
一度だまされたと思って携帯電話で本を読んでみて欲しい。無料コンテンツ、立ち読みコンテンツを揃えているサイトも多い。実際に携帯電話で本を読んでみれば、小説など読み物なら充分に楽しめることに驚くはずだ。最初は少々違和感を感じながら、それでも読み進んでいくうちに、いつしか小説に没頭している自分に気づく。こんな経験をしたあなたはもう立派なケータイ読書派。携帯電話はあなたの「本を読む道具」のひとつになっているはずだ。
ケータイ読書で始めるユビキタス読書
ケータイ読書のもっとも優れた点は気楽さだろう。かつてジーンズのポケットに文庫本をねじ込んで旅に、という広告があった。ケータイ読書はそんな文庫の世界をもっと軽やかに広げてしまう。
旅ばかりではない。通勤・通学の車内、駅で電車を待つほんの数分の間、昼時にレストランで注文が出てくる数分の間、もちろん息抜きに入った喫茶店の片隅でも携帯なら気軽に読書可能だ。
大昔から本好きにとって本と切り離された時間などはあってはならない。豆本や小型本から現在の文庫本まで、本と共に行動を共にするのが本好きというものだ。一方で我々が常に持ち歩くアイテムは携帯電話だ。うっかり携帯を家に置いてきてしまった日は何とも不安で落ち着かない。この感覚、文庫本をカバンに入れずに旅に出てしまった時と似ている。だから携帯電話と読書は一種の必然的出会いなんだ。
ケータイ読書を始めるとこんな時にでも本が読めると嬉しくなる場面に出会う。たとえば銀行ATMの長蛇の列。銀行に行くのに文庫本を持っていくことはないが携帯電話は持ち歩いている。そこでおもむろに今朝の続きを読むのだ。
もちろん文庫だってそんなに荷物にはならない。でもケータイ読書は文庫ではやれない技をたくさん持っている。もっともありがたいのは思いついたときに好きな本にアクセスできることだろう。ケータイの書店は年中無休、真夜中だって営業中、電波さえ入ればどんなところに居ようとも自分のところに書店がやってきてくれる。
もう旅行カバンに文庫を入れて来なかったと悔やむことはない。携帯を取り出してこれから行く地の関連本をゆっくりと探してみようではないか。
考えてみれば携帯電話は現時点唯一の実用的ユビキタス媒体。だから電子書籍のもっともよいところが携帯電話では100パーセント活かせるのだ。
《ポータブル図書館》
17~18世紀のヨーロッパの有産階級は旅行には必ず写真のような携帯用図書館を馬車に積んでいった。もちろん特注品だったろう。今や誰でも持てる携帯電話でより膨大なコンテンツにアクセスできるようになったわけだ。図版は17世紀初頭、イギリスの貴族サー・トマス・エジャントンの旅行用図書館。揃いに製本された神学、哲学、歴史、文学の本が詰まっている。[『本と人の歴史事典』(高宮利行・原田範行著 柏書房 1997)より転載]
ケータイ読書のいろいろなサービス
それ以外にもいろいろなサービスが用意されている。今回はざっとその全貌を眺めてみよう。
○ 配信型サービス
携帯電話のサービスの代表的な方式が配信型だ。これはたとえれば新聞小説のようなものだ。毎日、書き下ろしの新作が届く。配信はメールの形でも届くし、専用ソフトからアクセスすることでも読むことが可能だ。連載の途中で読み始めてもバックナンバーが完備しているから最初から読み始めることができる。
連載だけではなく読み切り型のコンテンツも用意されている。これも定期的に入れ換えられるのが普通だ。いわば配信型サービスはネットワーク上の小説雑誌と考えると分かりやすい。
《配信型サービスの草分け的存在である「新潮社ケータイ文庫」》(※図版消失)
○ ダウンロード型サービス
配信型が毎日届く雑誌ならダウンロード型はネット書店だ。携帯サイトから読みたい本を指定してダウンロードして閲覧する。まだ新しいサービスなのでPC用の電子書籍書店よりは品数が揃っていないが、今後どんどん充実してくるだろう。
ダウンロード型は電子書籍のスタンダードなサービスだが、携帯電話に取り込めるファイルには限りがあるし、取り込んだファイルをPCなどに転送ができない。この点がPCとは異なるので注意が必要だ。
《電子書店「パピレス」の携帯版サイト》(※図版消失)
○ PC用の電子書籍を携帯で読む
電子書籍のヘビーユーザーなら携帯で通常の電子書籍も読みたいと思われるかも知れない。そういった場合には機種が限定されるがSDカード経由でXMDF形式のコンテンツを読むことができる。使われている文庫ビュアはXMDFばかりでなくPC版と同じようにテキスト・ビュアにもなるから読書好きには強力なツールだろう。
PC用電子書籍を読める携帯電話一覧
- DoCoMo シャープ SH506iC
- Vorderfone シャープ V801SH/V601SH/ V401SH/V602SH/V402SH/J-SH53
《PCでダウンロードした電子書籍やテキストファイルをSDカード経由で携帯で読める。》(※図版消失)
○ マンガもケータイ読書に挑戦中
マンガの世界もにぎやかだ。単純な4コママンガから長編のストーリーマンガまでいろいろな方式がトライされている。紙のマンガを携帯で快適に読もうというサイトもあれば、携帯向けに書き下ろしを提供しようというサイトもある。
ただしマンガはどうしてもデータ量が大きくなるからパケット定額性などを利用していると有利だろう。
《Handyブックショップでは手塚治虫など著名マンガを携帯向けに配信している》(※図版消失)
縦書きもできる読書ビュア
それぞれのケータイ読書サービスは独自の読書ビュアを提供している。それぞれ特色ある機能を提供しているが、縦書き横書きの切り換え、文字の大きさの切り換え、ルビ表示の有無の切り換え、続きのダウンロード、新規のダウンロード支援機能などが大きな機能だ。
たいていのケータイ読書サイトではサイトで直接読むことも可能だ。でも専用ビュアを使えば、縦書きかつページめくりでとより快適な読書が可能になる。
《縦書き横書きの切り換え》(※図版消失)
この機能はほとんどの書籍ビュアが備えている。好みによって切り換えよう
《文字の大小切り換え》(※図版消失)
大きな文字にすればお父さんでもすらすら読めます
《ルビ表示あり》
ルビの表示を切り換えられるタイプのビュアもある。原則的にルビ表示は欲しいが、ルビ無しなら画面に多くの行が入るなどのメリットも
《ルビ表示なし》
※画面写真はモアレを防ぐため少しぼかしている。実際にはクリアな文字が表示される
課金とパケット代金
各サービスの料金は各キャリアの公式サイトでは電話代と一緒に請求される。独立サービスの場合はクレジットカード決済やWebマネーを利用する。クレジットカード決済は最初に登録してしまえば以降は面倒な手続きは必要ない。
料金は月額固定のサービスとダウンロード毎に個別に課金される方式、月額固定と個別の混合型に分かれる。たとえば配信型サービスの「新潮ケータイ文庫」は月105円(au、ボーダフォン NTTドコモは月210円 税込)で配信中のすべてのコンテンツが楽しめる方式、ダウンロード型の「よむよむ@パピレス」は月の固定料金は不要で本毎に数百円の料金がかかる通常の電子書籍の方式、「どこでも読書」はその混合型だ。
もちろんサービス料金以外にも各キャリアのパケット代金がかかる。書籍は基本的にテキストデータがほとんどなので読書量にもよるがそんなに心配する必要はないだろう。しかしマンガサイトはデータ量がとても大きい。定額性の料金でないと数万円のパケット代が請求されることもあり得る。注意が必要だ。