「DLmarketサービス終了」「iWork日本語縦書きに対応」「Apple News+北米で開始」など、出版業界気になるニュースまとめ #367(2019年3月26日~31日)

出版業界気になるニュースまとめ

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 2019年3月26日~31日は「DLmarketサービス終了」「iWork日本語縦書きに対応」「Apple News+北米で開始」などが話題に。編集長 鷹野が気になった出版業界のニュースをまとめ、独自の視点でコメントしてあります。

国内

デジタル商品販売サイト「DLmarket」がサービス終了へ ~ 不正アクセスの再発防止策には抜本的な作り直しが必要で再開断念〈HON.jp News Blog(2019年3月25日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21918
 昨年10月22日の不正アクセス発表以降、今回の再開断念まで会員へのお知らせはとくにありませんでした。そのため、サイト上でのお知らせのみだった11月12日以降のサービス停止も、12月25日発表のクレジットカード情報を含めた個人情報流出の報告とお詫びにも、気づけませんでした。10月22日の時点では、クレジットカード情報は含まれていないとのことだったので、そういう記事を配信(↓)したのですが……3月25日にサービス終了のメールを受け取って、慌てて当時の記事へ追記することに。とほほ。

 ちなみに、同社が運営している別サービス「ビズクリ」も同時にサービス終了することが発表されています。

電子専門出版社の成功事例 ~ 返本ゼロと絶版復刻〈HON.jp News Blog(2019年3月26日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21927
 出版ニュース最終号が届いたので、最後に寄稿した原稿を転載しました。ジョン・オークスのORブックスと、井手邦俊氏のアドレナライズという2つの「成功事例」で、明るく締めたつもりです。

Squareが日本市場に本腰、7980円の新決済端末はFeliCaも対応へ〈Engadget 日本版(2019年3月26日)〉

https://japanese.engadget.com/2019/03/26/square-7980-felica/
 Squareから「3月26日」という日付だけ予告するメールが届いていたのですが、新決済端末でした。NFCを搭載しており、FeliCaの決済規格にも準拠しているとのこと。クレジットカードだけでなく、Suicaや楽天Edyなどが使えるようになるかも。これは中小小売店向けの決済端末として、ブレイクしそうな予感。QRコード決済には見向きもしないところが堅実?

「DAYS NEO」に講談社全マンガ媒体編集部員が参加 ~ 21誌250人以上の編集者と出逢えるマッチング型マンガ投稿サイトに〈HON.jp News Blog(2019年3月28日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21956
 ついに講談社の全マンガ媒体編集部員が参加。外から見ていると正直なところ、同じ社内でも1年がかりなのか、という感覚があります。他社にも呼びかけ続けていますが、壁を越えられる日は来るのでしょうか。「作家が編集者を選べる」というのは画期的なことなので、「DAYS NEO」に参加という形じゃなくても、やり方は追随して欲しいと思うのですが。

紀伊國屋書店の学術電子図書館サービス「KinoDen」が、クラウド型電子書籍リーダー「bREADER Cloud」と連携〈HON.jp News Blog(2019年3月28日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21959
 KinoDenに採用ということより、bREADER Cloudという新サービスに着目したい。クラウドストレージ付きの、優秀なEPUB / PDFビューアです。「Kinoppyとほぼ同等」と書きましたが、同じエンジンとのこと。ブラウザビューアがちょっと弱いのが不満ですが、Android版はGoogle Playブックスよりはるかに高機能なのでおすすめです。

4月1日、YouTube番組「ツッカム正剛」スタート〈セイゴオちゃんねる(2019年3月29日)〉

https://seigowchannel-neo.com/publishing/2765
 あの松岡正剛氏が、なんとブックチューバーに。毎回、お題にちなんだ本を紹介していくようですが、どんな番組になるのでしょう?

「海賊版サイト」対策強化見送り 早急な対策求める声次々と〈NHKニュース(2019年3月29日)〉

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190329/k10011866021000.html
 昨年のインターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)では、法整備が必要なダウンロードの違法化・リーチサイト規制・ブロッキング法制化以外に、正規版サイトの流通促進、海賊版サイト管理者の刑事告訴、配信代行業者への民事手続き(差し止め請求、損害賠償請求など)、検索結果表示の抑止、海賊版サイトへの広告出稿規制、フィルタリング、教育・啓発活動が挙げられており(↓参照)、なにも対策が行われていないわけではない、ということは指摘しておく必要があるように思いました。

新事実が発覚、「ダウンロード違法化潰し」は漫画家の総意ではなかった | 岸博幸の政策ウォッチ〈ダイヤモンド・オンライン(2019年3月29日)〉

https://diamond.jp/articles/-/198241
 2012年の違法録音録画ダウンロード刑事罰化に尽力した岸博幸氏による、酷い論考。赤松健氏や森川ジョージ氏が、かなり怒っています。炎上商法に乗るのは嫌なのですが、これだけ拡散してるともう言及しないわけにもいかないので、私からは1点だけ。「ダウンロード規制に反対する日本漫画家協会の声明」とありますが、日本漫画家協会も、共同声明を出した知的財産法・情報法研究者たちも、ダウンロード違法範囲拡大はなにがなんでも反対、というわけではありません。違法となる範囲がちょっと広すぎるからもう少し狭めて欲しいという、言ってみれば“条件付き賛成派”です。それを「反対派」とレッテルを貼り攻撃するのは、ちょっとフェアではない。

 柴山文科大臣が「もしそうなら、色々考えないといけません」なんて反応している……。

ついに日本語縦書きへ対応、iWork macOSとiOSのアップデート版が配信開始 ~ Pagesは縦書きのEPUB書き出しにも対応〈HON.jp News Blog(2019年3月29日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21997
 ついにというか、やっとというか。日本での普及度からすると、iPhoneのアップル公式無料アプリで縦書き執筆ができるようになった、という点が最も大きいかも。縦書き用テンプレートの初期設定が、“A4縦”なのが「おいおい」という感じではあります。

「GAFA」の規制強化策検討へ 政府が準備室立ち上げ〈NHKニュース(2019年3月31日)〉

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190331/k10011867741000.html
 巨大IT企業に対する規制強化の法整備を検討するとのこと。欧州議会の方針を見習って、ということになるのでしょうか。

海外

いちから始めるアメコミ出版社に勝算はあるか?〈HON.jp News Blog(2019年3月26日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21936
 マーベルでCOO兼編集主幹を務めていた方が、新しい出版社で同じポジションに就くとのこと。第3勢力になれるでしょうか?

『嵐が丘』のモデルとなった家が売りに出される〈HON.jp News Blog(2019年3月26日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21939
 元記事の写真がいい雰囲気。16~17世紀に建てられた家が、まだ普通に使えるんですね。

英書店チェーンの従業員が最低限の生活賃金を求めて署名運動〈HON.jp News Blog(2019年3月27日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21951
 「生活賃金」とは最低賃金とは異なり、最低限必要な生活費から算定した賃金のこと。公益財団法人アジア成長研究所 周研究員のレポート(↓)によると、標準世帯・片働きで2380円、共働きで1360円とのこと。東京の最低賃金は985円ですから、ずいぶん開きがあります。

欧州議会が18年ぶりに大幅な著作権法改定採決〈HON.jp News Blog(2019年3月29日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21992
 GAFA狙い撃ちの法案がとうとう可決。欧州議会のサイトにQ&Aが載っていますが、「“スタートアップが死ぬ”というのは“ノー”だ」という回答が。発足から3年未満で、年間売上高が1000万ユーロ(約12億4500万円)未満、月間利用者500万人未満の中小規模プラットフォーマーは、大規模なプラットフォームよりはるかに軽い義務が課せられるとのことです。

Eブックよりも紙の本の方が子どもとの絆が深まるという研究結果〈HON.jp News Blog(2019年3月29日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/22007
 物議を醸しそうな研究結果。個人的には、慣れの問題が大きいとは思うのですが。まあ、紙の本が持つ「厚み」や「手触り」「ぬくもり」といった情報が、タブレットでは欠落しているのは間違いありません。ニューヨークタイムズの元記事は、“Reach Out and Read”という、家族が一緒に声を出して本を読むことを奨励している非営利団体の方が書いている、という点も考慮に入れた方がよさそう。

アップルの米定額読み放題サービスに参加した雑誌出版社、拒否した新聞社〈HON.jp News Blog(2019年3月29日)〉

https://hon.jp/news/1.0/0/21973
 アップルの読み放題サービス、まずはアメリカとカナダだけでスタート。雑誌は300誌なのに対し、新聞は3紙しか参加していないそうです。「Apple News+」というか「Apple Magazine」。もっとも、日本でも「dマガジン」や「楽天マガジン」といった読み放題サービスに、新聞は参加していません。ビジネスモデルの違いかな。

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著者について

About 鷹野凌 793 Articles
HON.jp News Blog 編集長 / NPO法人HON.jp 理事長 / 日本電子出版協会 理事 / 日本出版学会理事 / 明星大学 デジタル編集論 非常勤講師 / 二松学舍大学 エディティング・リテラシー演習 非常勤講師 / デジタルアーカイブ学会 会員 / 著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(2015年・インプレス)など
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