英図書館で本の貸し出し数が落ち込み、原因はITか蔵書の劣化か?

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 イギリスの図書館における1人当たりの貸し出し図書数が、2009/2010年度から2017/2018年度にかけ、5.7冊から3.1冊へと46%の減少となったことを、元ウォーターストーンズ書店のティム・コーツ氏が突き止め、蔵書数削減のせいだと警鐘を鳴らしていると、英業界誌ザ・ブックセラーが伝えている。

 この調査は Institute of Museums and Library Services(博物館・図書館サービス機構)が行ったもので、同時期アメリカでは2006/2007年度が7.4冊、2009/2010年度に8.3冊でピークを迎え、2016/2017年度には7.1冊となっている。一方で、オーストラリアでも同時期に8.2冊から6.6冊に減少しているが、イギリスほどではない。
[編注:読者指摘に基づき一節削除。IMLSの調査はアメリカだけ、イギリスはCIPFAと、ティム・コーツ氏はさまざまなソースを元に分析している模様]

 貸し出し数が減った原因として、図書館が本の貸し出しだけでなく、他のサービスも始めたからだという分析もあるが、それよりもこの25〜30年で、政府主導の元、意図的に蔵書数を制限し始めたからだと、コーツ氏は指摘する。「全英の蔵書数が9000万冊から6000万冊に減り、残っている本の質が悪くなっている。アメリカやオーストラリアでも、本の貸し出し以外のサービスを充実させようという動きはあるが、蔵書数が減らされているわけではない」という。

 英デジタル・文化・メディア・スポーツ省の報道官は「図書館の利用の仕方そのものが変わってきており、新しいテクノロジーに対応してこちらも変化していかなければならない。全英の4分の1の図書館では訪問数や貸し出し数は増えている。地元の利用者がコンピューターにアクセスしたり、個人の潜在力を高め、生活を向上させるための情報やアドバイスを提供するという部分は変わっていない」とコメントしている。

参考リンク

ザ・ブックセラーの記事 
https://www.thebookseller.com/news/uk-library-borrowing-plummets-while-us-remains-stable-1036141
米パブリッシャーズ・ウィークリーの記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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3 コメント
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加藤信哉
加藤信哉
2019年7月12日 11:05

興味深い記事の紹介ありがとうございます。
記事の第二段落の「この調査はInstitute of Musemus and Library Services(博物館・図書館サービス機構)が行ったもので」は、やや誤解を招く表現だと思います。というのは、公共図書館の貸出データについて、アメリカのInstitute of Musemums and Libraray Serviceの統計、イギリスについてはCIPFAのデータ、オーストラリアについてはNational and State Libraries of Australiaのデータに基づいて、コーツ自身が調査・分析を行っているからです。また、visit(s)を「訪問数」と訳されていますが、「入館者数」の方がわかりやすいと思います。更にバランスから言うと、元記事の最後にあるCLIPのニック・ムーアのコメントも紹介していただきたかったと思います。

鷹野凌
Editor
鷹野凌
2019年7月14日 08:40
に返信  加藤信哉

ご指摘のIMLSのについての箇所を削除、編注を入れておきました。ご指摘ありがとうございます。

加藤信哉
加藤信哉
2019年7月14日 10:27
に返信  鷹野凌

会話に参加する…修正を確認しました。ありがとうございます。