ブレグジット前のロンドン・ブックフェアで仏出版社がとばっちり

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 3月29日の期限ギリギリまで揉めそうなイギリスのEU脱退(ブレグジット)を目前に、3月12日から14日にロンドンで開催されるブックフェアには、ヨーロッパ大陸の出版社がこぞって出展する。中でもフランスでは、国際フランス語出版局(Bureau International de l’édition Française)が、参加国中最大の2500冊の本を置ける400平方メートル分の大掛かりなブースを運び込む。だが3月8日時点までトラックが北端のカレー港で丸一日足止めとなり、金曜夜までに到着するかどうかが危ぶまれていると、国際出版ニュースサイトの Publishing Perspectives が伝えている。

 これまでブレグジットがヨーロッパの出版産業に与えるダメージといえば、イギリスの出版社全体で生産する本の売上の6割が輸出によるもので、その中でも36%がヨーロッパ向けに輸出される本の関税がかかるようになるという問題だが、輸出手続きも複雑になることからくる混乱が懸念されている。ブックフェア開催期間中、夜な夜な行われるパーティーでもブレグジットの話題は避けられまい。

 さらに、パリとロンドンを結ぶユーロスターも、ブレグジット後の手続きを想定した保安検査の試験実施の影響でダイヤに乱れが出ており、下手をすると荷物も人も間に合わない可能性がある。労働者に負担がかかるとすぐストになるのがフランスなので、既にカレーとダンカークで検査をする保安員を増やせと労働組合が抗議を始め、事態を悪化させている。

参考リンク

欧州出版にブレグジットが与える影響を伝える Publishing Perspectives の記事
https://www.nytimes.com/reuters/2019/03/06/world/europe/06reuters-britain-eu-france-eurostar.htmlhttps://publishingperspectives.com/2019/03/france-bief-hit-by-london-book-fair-transit-delays-calais-brexit-protests/
フランスのストによる混乱を伝えるロイター通信の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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