インターネット・アーカイブのEブック貸し出しに英著者団体が抗議

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 著作をデジタル保存する目的で設立されたインターネット・アーカイブの「オープン・ライブラリー」では、絶版になっている著作品だけでなく、数万タイトルもの作品にアクセスできるようになっている。

 インターネット・アーカイブは、1996年にサンフランシスコで設立された。オープン・ライブラリーは、「誰もが公共図書館に足を運べる環境にいるわけではないので、デジタル版を世界中に開放する」目的で2005年に設立された。このサービスを使えば、ユーザーは1人5冊まで、2週間閲覧することができる。

 これに異議申し立てをしているのは、イギリスで1万人の会員を有する the Society of Authors(SoA)で、著者の許可なしにスキャンした本を貸し出すのなら訴訟も辞さないとしている。現行のイギリスの法律ではスキャンや貸し出しは著者の許諾が必要で、公共貸与権(PLR)が認められているので1冊貸し出しがある度に8.52ペンスが著者に支払われる。だが、オープン・ライブラリーでは著者への還元なしにイギリスのユーザーがヒラリー・マンテルやケイト・アトキンソンの作品を借りることができる。

 SoAの抗議書に署名した著者は「著者の許可を取った作品に限るオプト・イン方式にするべき」「これは図書館の名を借りた海賊版合法化ではないか」などとコメントしている。

 インターネット・アーカイブ側は、オープン・ライブラリーはフェア・ユース法に則ったサービスで、デジタル化される前の蔵書の数に限り、デジタル版で貸し出すことができるなど、課せられた制限は忠実に守っているとしており、アメリカに本拠地を置く著者団体 Authors Alliance の賛同を得ているという。

参考リンク

英ガーディアン紙の記事
https://www.theguardian.com/books/2019/jan/22/internet-archives-ebook-loans-face-uk-copyright-challenge
フォーブス誌の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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