コソボ紛争戦犯の著書を発表したセルビア防衛省に非難

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 コソボ紛争の指揮官として国連裁判所において起訴され有罪判決を受けた2人の元将軍の回想録を出版し、宣伝したとして、セルビア政府自衛省が民権団体から批判されているとAP通信が報じた。

 バルカン半島を中心に異なる民族の若者の交流を支援する非営利団体、Youth Initiative for Human Rights(以下YIHR)は、アナ・ブルナビッチ首相に宛てた公開文書の中で、セルビア防衛省がこの本を出版することは戦犯の片棒を担ぐ行為であると訴えたが、これに対し防衛省は「彼らが自ら体験した歴史についての意見を表明する」権利はあるという見解を示した。

 1998年から99年にかけてネボイシャ・パヴコヴィッチ(Nebojša Pavković)、ヴラディミル・ラザレヴィッチ(Vladimir Lazarević)の両名はセルビア軍を率いてコソボに侵攻し、1万人以上の市民が殺され、100万人近い難民を出した。2人の指揮官の下、殺人、レイプ、強制連行などが行われたとし、有罪判決を受けた。パヴコヴィッチはまだ服役中で、ラザレヴィッチは14年服役した後、セルビアに戻った。

 先週開催されたベルグラード・ブックフェアで、セルビア防衛省は1999年にNATO軍によってセルビア軍がコソボから撤退した史実を中心に書かれた7冊の一部としてこの2人の戦争証言を本にまとめた。コソボは2008年にセルビアからの独立を宣言したが、ベルグラードはこれを認めていない。EUに加盟したいセルビアは国交正常化のために協議を続けている。

 YIHRは「セルビア政府と国家は、コソボ紛争の戦犯がかつて語った旧い世界観に人々を回帰させたいようだが、そうではなく、バルカン半島における未来の外交関係のために尽くすべきである」と声明を発表している。

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About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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