トルコのリラ急落で版権の支払いにも影響か

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 エルドアン大統領政権下の海外債券の膨張、経済理論に合わない金利対策などが原因となってトルコリラ安が加速し、今年に入って米ドルに対し40%も為替が急落したことから、経済破綻への懸念が増す中、トルコの出版業も深刻な打撃を受けている、と米業界誌パブリッシャーズ・ウィークリーが伝えている。

 出版コンサルタントのRuediger Wschenbartによる2017年のBookMap Projectでは世界11位だったトルコは、2014年に年間30億ドルの売り上げが報告されているが、ヨーロッパ言語への翻訳による売り上げが全体の35%に当たるなど、海外翻訳権のウェイトが高い。

 一方、版権の輸入額も多い。国内有数のエージェンシーであるKalem AgencyのNermin Mollaogluは、今回の外為危機のせいで印税の支払いが遅れるなどの影響があるかもしれないが、言論規制が激しくなる一方のトルコで奮闘する出版社の味方でいてほしいとパブリッシャーズ・ウィークリー誌を通じて訴えた。トルコ出版社協会のKenan Kocatürk会長に至っては「海外の出版社は、困難に陥っているトルコの出版社との団結を示すため、高額なアドバンス(印税の前払い金)を取るのをしばらく控えて欲しいとまで言っている。

 2016年には年間5万5000タイトルを出版し、一般書の約半分が外国語からの翻訳書だったが、翻訳書に力を入れていた小規模出版社がつぶれたり、大手が国内の本に力を入れるなど、エルドアン政権の言語統制の影響も出始めているようだ。

参考リンク

パブリッシャーズ・ウィークリーの記事
https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/international/international-book-news/article/77760-turkish-agent-issues-warning-requests-patience.html
英ブックセラー紙の記事

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著者について

About 大原ケイ 289 Articles
NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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