ハリウッド流海賊版対策は読んだら消える脚本

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 米ケーブル局HBO制作の人気ファンタジー番組『ゲーム・オブ・スローンズ』は現在ラストシーズンを撮影中だが、あらすじなどが漏洩しないよう、脚本に自動的に破壊するファイルや、映画のタイトルにコードネームを使うなど、まるでスパイ映画並みの手段を講じている、と英タイムズ紙が伝えている。

 『ゲーム・オブ・スローンズ』は来年放映予定のシーズン7で「死の軍団」と人間が戦う大団円を迎えるが、撮影前にデジタル配信される脚本は、シーンごとに配信され、そのシーンを撮り終えるやいなや自動的に消えるのだという。

 デジタル時代になってハリウッド(映画産業界)における海賊版や漏洩による被害は年間300億ドル近いといわれるが、大手スタジオは”知的財産”が漏洩しないよう、あれこれ手を尽くしている。例えばディズニーは『スター・ウォーズ』シリーズのキャストに配られる脚本は濃い赤の紙を使い、コピーできなくしている上に番号を振り、1部たりとも紛失しないよう記録している。『キャプテン・アメリカ』では撮影後に脚本が回収され、シュレッダーにかけられる。

 『ハンガー・ゲーム』3部作が映画化された時は、それぞれの脚本の文字列が微妙に替えられ、漏洩したときは誰の脚本かわかるようにしている。『アベンジャーズ』は制作初期段階で『グループ・ハグ』という題名になっていたと、ウォールストリート・ジャーナルは報じている。

 大手スタジオで構成されるアメリカ映画協会(MPAA)のチャールズ・リヴキン氏は「コンテンツは業界の命。クリエイターから盗む、という行為は職を奪うことでもある。戦わない、という選択肢はなく、毎年新手がでてくるのでこちらも戦い方を変えなければならない」という。MPAAはアメリカの映画スタジオばかりでなく、アマゾン、ネットフリックス、BBC、SkyとAlliance for Creativity and Entertainmentという団体を作り、海賊版対策をする。インドやナイジェリアのように作るそばから盗まれるのを防ぐのが目的で、世界中の海賊版映画のサイトをブロックする傍ら、映画業界にも変換をもたらすであろうブロックチェーン技術にも注目している。

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英The Times “This script will now self-destruct: how Hollywood fights piracy”

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著者について

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NPO法人HON.jpファウンダー。日米で育ち、バイリンガルとして日本とアメリカで本に親しんできたバックグランドから、講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わる。2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。主に日本の著作を欧米の編集者の元に持ち込む仕事をしていたところ、グーグルのブックスキャンプロジェクトやアマゾンのキンドル発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。
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