HON.jp メールマガジン #364 2026年3月2日版 Subject: HON.jp メールマガジン #364 2026年3月2日版 From: HONjp 編集部 Date: 2026/03/02 6:00 To: honjp@aiajp.org HON.jp メールマガジン #364 2026年3月2日版 📙週刊出版ニュースまとめ&コラムやHON.jpからのお知らせなどをお届けします。 鷹野 凌 2026.03.02 自社広告   HON.jpメールマガジンでサポートメンバーの募集を開始しました。毎週月曜日に配信するメールマガジンは誰でも無料で閲覧できますが、それとは別に、サポートメンバー限定記事を月2回くらい配信していく予定です。ぜひご支援ください。   https://honjp.theletter.jp/payment/plan 週刊出版ニュースまとめ&コラム #704(2026年2月22日~28日)   【写真】岩森書店 (photo by TAKANO Ryou) 【写真】岩森書店 (photo by TAKANO Ryou)    編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。HON.jp News Blog のウェブサイトでも同時に公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。   https://hon.jp/news/1.0/0/58543 【政治】 ◆ 図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議(第10回)配付資料〈文部科学省(2026年2月25日)〉   https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/050/siryo/mext_00011.html   「【資料2】意見募集の結果」を確認してがっくり。私の送った意見は「主な意見(要約)」に存在しませんでした。そうか「主な」には入れてもらえなかったか。とほほ。改訂後の報告書案を見る限り「『年間』の数字で間違いないか」という確認については、反映してくれたようですが。 ◆ 誰でも自分の小説やイラストの権利登録 国の新システムが始動へ〈朝日新聞(2026年2月25日)〉   https://www.asahi.com/articles/ASV2S4FKRV2SUCVL051M.html   自己申告に基づいており、「基本的には性善説の制度」(文化庁担当者)となっている。   上記引用箇所を読んで、思わず「は?」と声が出てしまいました。 断言しますが、虚偽の登録は必ず発生します。そんなことは容易に予想できるはずなのですが、発生したあとにどうするつもりなんだろう?   ……まあ、マイナンバーカードと紐付いた虚偽情報が自分では消せない形で公開情報として登録されるというリスクを考えたら、ふつうの人はやらない……と思いたい。ソーシャルDRMみたいな抑止力が働くはず。でも、世の中にはふつうじゃない人もゴロゴロしているからなあ。 ◇ 「分野横断権利情報検索システム」及び「個人クリエイター等権利情報登録システム」が運用を開始します〈文化庁(2026年2月24日)〉   https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/94333101.html   ひとまず「個人クリエイター等権利情報登録システム」の「検索システム」だけ使ってみました。検索・閲覧にもアカウント登録が必要ですが、マイナンバーカードは不要でした。「詳細項目別検索」でなにも入力せず検索すると、全件が出てきます。   詳細情報をいくつか見てみましたが、コンテンツ掲載先URLにはX(旧Twitter)のプロフィールページを設定している方が多いようです。AI生成画像をポンポン投稿している人もいて、うーむとうなり声が出てしまいました。   とりあえず、3月5日(木)19時~21時に日本ネットクリエイター協会(JNCA)の協力でニコニコ生放送を配信するようなので、どういう活用法を想定しているのか、視聴・確認してみたいと思います。 【社会】 ◆ Polymarketなどの予測市場の有害性とニュースレター大手のSubstackからの離脱〈YAMDAS現更新履歴(2026年2月24日)〉   https://yamdas.hatenablog.com/entry/20260224/polymarket-and-substack   著名な書き手が、Substackから離脱し始めているそうです。一般論ですが、「過激な言動で耳目を集める層」や「モラルの欠如した儲け至上主義層」などの流入って、プラットフォームが大きくなると必ず発生します。不可避。実際そうなってしまったとき、そのプラットフォームがどう対処するか(あるいは対処しないか)が問われることになります。 ◆ 大学生の書籍代、初めて月1千円下回る 読書時間0分が51% 大学生協連調査〈高校生新聞(2026年2月24日)〉   https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/16970   大学生協連の元記事を確認しましたが、過去10年間で読書時間0分が半数を超えているのは2017年、2021年に次ぐ3回目でした。50%前後で推移していて、それほど変わっていない印象です。問題は「書籍代」のほう。2010年にはまだ2000円を超えていたのが、毎年のように漸減してついに1000円未満です。書籍も雑誌もこの期間の値上がり幅は総合物価指数以上ですから、金額もさることながら購入冊数も激減していることが予想できます。ちなみに、教科書代は「勉学費」として扱われているようです。 ◆ 自発的に本を読む「読書好きな子」が急減 読書の根本が瓦解の深刻さ〈日経ビジネス電子版(2026年2月25日)〉   https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00461/011900552/   学校読書調査とこのデータで結果に食い違いが生じる原因は、「1か月間に読んだ本の冊数」と「1日の平均的な読書時間」という質問の違いもありますが、おそらくはこのデータでは「余暇読書」に限っているためではないかと思います。   「このデータ」は、ベネッセ教育総合研究所の調査です。つまり、そもそも学校読書調査とは母集団が違う。以前にも指摘しましたが、ベネッセの調査パネルは少し偏っています。余暇読書に限っているかどうか以前に、そういう集団に出ている傾向ということをまず念頭に置くべきでしょう。まあ、「おそらくは」「思います」とも書かれているので、単なる仮説であるとも言えますが。 ◆ マンガワン編集部が『常人仮面』めぐり謝罪「本来起用すべきでなかった」、原作者は刑事罰受けた『堕天作戦』執筆者〈弁護士ドットコム(2026年2月27日)〉   https://www.bengo4.com/c_23/n_20057/   SNSで関係者の名前は挙げずに小学館とマンガワン編集部を批判する声が散見されるな……なんだなんだと思っていたら、マンガワンで連載中のマンガ家・江野朱美氏による「整理と意見」(※性加害の内容が具体的に記述されているため閲覧注意)を読んで、あまりの酷さに絶句してしまいました。私が本件について具体的なことを知ったのは、このタイミングが初めてでした。 ◇ マンガワンでの配信を停止します──漫画家からの宣言相次ぐ 小学館の声明に非難〈ITmedia NEWS(2026年2月27日)〉   https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2602/27/news139.html   小学館の媒体で連載している・いた他のマンガ家の方々も状況を知ってかなり憤っており、連載を止める、作品を引き上げるなどの行動に移しているのを相当数確認しています。マンガワンではすでに大御所の作品も止まっているようです。また、離脱していない作家に対する「正義の暴走」攻撃も起きてしまっています。まさに地獄絵図。奇しくも、Substackからの離脱について言及した直後に、こういう事態が起きてしまいました。 ◇ マンガワンにおける原作者起用について小学館から声明〈コミックナタリー(2026年2月28日)〉   https://natalie.mu/comic/news/662076   小学館としての公式見解も出ました。しかし反響を見ていると「遅い」と言われてしまってます。時系列で整理すると、札幌地裁の判決が2月20日で、この時点の報道では被告の名前は出ていませんでした。2月24日の夜にX(旧Twitter)で「漫画家 山本章一です」というリークがあって、そこから急速に批判の声が広がったようです。2月27日の夕方に編集部からの謝罪文、2月28日の夕方に小学館からの謝罪文という流れ。2月24日は夜なのでさすがに無理だとしても、2月25日から26日の2日間が空費されたように見えます。 ◆ 「18歳未満の画像をAIで性的加工」2025年に114件 被害者は中高生が9割 警察庁〈ITmedia NEWS(2026年2月27日)〉   https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2602/27/news136.html   「加害者は約6割が同級生や同じ学校の生徒」とのこと。生成AIで容易にコラージュできるようになってしまいましたからねぇ……仮に自分だけが使う、いわゆる「オカズにする」だけでも、バレたら「児童ポルノ所持」で捕まります。すでに昨年、性的ディープフェイクは児童ポルノに当たるという判断で起訴された事例があります。 【経済】 ◆ 「重版こわい」の謎…うれしいはずの重版出来が中小出版社を悩ませている金銭的カラクリ〈集英社オンライン(2026年2月23日)〉   https://shueisha.online/articles/-/256587   重版する際に需要を読み違えて刷りすぎてしまい、大量返品に頭を抱える――というのは昔からよく聞く話です。ただし具体的な事例はあまり表に出てこないことも多い。以前、アルファポリスが「ゲート」アニメ終了後に想定以上の返本で収益が圧迫されたことが公表されましたが、これは上場企業だから情報が公開されたという、非上場企業の多い出版業界では珍しい事例だと思います。   最近はこの「重版こわい」に対し、デジタル・ショート・ラン(DSR)が解決策として提唱されています。「出版業界でのデジタル印刷活用を推進する共同宣言」がまさにそれ。初版はどうしても数千部単位になるからオフセット印刷でいいとして、重版時には少ない部数で増刷できるDSRを使ってリスクを軽減しましょう、という話です。   そういうやり方なら、いわゆる「重版倒産」みたいな悲劇は起きないはず。ただし、デジタル印刷にも使える標準仕様に則った印刷用データを用意する必要があり、色や用紙選択の幅も狭くなります。要するに、あんまり凝ったことはできなくなるということ。それが許容できるかどうかでしょう。 ◆ 「100ページで分かる古典」シリーズが出版界のトレンドに……ルソーもアーレントも〈読売新聞(2026年2月23日)〉   https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20260216-GYT1T00207/   稲田豊史氏著『本を読めなくなった人たち: コスパとテキストメディアをめぐる現在形』(中公新書ラクレ)を読んで思ったのが、長文が読めるのはある種の特殊技能であるという現状を踏まえたうえで「ではどうすればいいのか?」でした。こういう方向性が、ひとつの解なのでしょうか。   朝読向けの「5分で読書」「5分後に意外な結末」シリーズみたいなのもそうで、要するに「長いコンテンツが読めないなら短いコンテンツを提供すればいい」というやり方です。しかし前掲書によると、朝読は読書習慣の定着にはあまり役立っていないという声も強いみたいなんですよね。   結局、成人以上になると半数超が本を読まなくなる。ならば、本というパッケージにはこだわらず、同じ内容を音声や映像で伝えていく、というのも解のひとつなのでしょう。死語と化した「マルチメディア」という言葉に、当時とは違う意味を与えたい気がしてきました。 ◆ 2025年コミック市場は6925億円 前年比1.7%減と8年ぶりのマイナス成長 ~ 出版科学研究所調べ〈HON.jp News Blog(2026年2月25日)〉   https://hon.jp/news/1.0/0/58504   ついにコミック市場もマイナス成長に。前回マイナス成長だった2017年は、電子コミック市場がまだ1747億円でした。同じ年に紙のコミックス(単行本)市場1666億円を逆転しています。そのころはまだ「電子書籍の購入は作家の応援にならない」という意見も強く、反論記事を書いたりしたものでした。懐かしい。その後の電子コミック市場の急成長で、そういう声はすっかり消えました。記事の末尾には比率の推移グラフを付けてあります。ここ10年ですっかり様相が変わってしまったことがよく分かるでしょう。   さて、電子コミック国内市場はそろそろ頭打ち。数年前からそれはもう見えていて「次は海外だ!」という動きも活発だったわけですが、数字がなかなか明らかになりません。つい先日、MANGA総研から第2回「マンガIP市場調査報告書」が出ていますが、「マンガ」の海外数字は変動していません。中の人に確認したところ、参照しているヒューマン・メディア社による調査の時点で変動がないそうです。海外市場の調査は想像以上に難しい模様。ぐぬぬ。 ◆ AI検索のPerplexity、広告モデルを全面撤回—AIは広告かサブスクか〈Media Innovation(2026年2月26日)〉   https://media-innovation.jp/article/2026/02/26/143130.html   既報(2月18日)ですが、言及しそびれていたので改めて。AI検索サービス提供企業の中では真っ先に広告モデルを試していたPerplexityが、早々に広告モデルを断念しました。Anthropicも「広告モデルはやらない」と宣言していますので、これから広告モデルへ参入していくOpenAIとは対照的です。   Perplexityが広告モデルを断念する理由には挙げられていませんが、個人的に広告分野ではGoogleが圧倒的に強すぎて勝てないというのが一番大きいのではないかと想像しています。広告モデルだと、ユーザーの利便性を考慮しつつ、お金を出す広告主のメリットも追求する必要がある。つまり両面作戦になってしまい、難易度が高いわけです。 ◆ 雑誌出版社、動画を収益源に 「タイアップ広告」ノウハウ生かす〈日本経済新聞(2026年2月27日)〉   https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94672870X20C26A2BZ0000/   この記事では光文社とマガジンハウスの事例が紹介されています。昨年、文藝春秋PLUSのYouTube公式チャンネルが話題になったときも、ビジネスモデルはタイアップ広告だということが明かされていました。若者にもアプローチできるし良いですよね。   そういえば、年始の展望記事で、2021年には「映像コンテンツの需要がより高まる」、2022年には「映像を活用したマーケティング活動が広がる」と書いたことを思い出しました。当時自分で書いたことをあらためて読み返してみたのですが、良いこと書いてるなあ……我ながら感心する。自画自賛しちゃう。 【技術】 ◆ Internet Archiveをメディア企業が次々ブロック、NYTやガーディアンも・・・AI対策で失われるアーカイブ〈Media Innovation(2026年2月19日)〉   https://media-innovation.jp/article/2026/02/19/143116.html   AI企業のクローラーをブロックしたら、Wayback Machineにアーカイブされた記事をスクレイピングするようになった(ことが疑われている)ため、Internet Archiveのクローラーもブロックするようになったと。要するにとばっちりです。結果、後世にアーカイブが残されないことに。   本件で思い出したのは、noteもInternet Archiveのクローラーをブロックしていること。Google-ExtendedやGPTBotはブロックしていないので、AI企業対策ではなく、2020年に発覚した「ソースコードからIPアドレスが確認できた事態」の余波だと思われます。Wayback Machineでrobots.txtのログは、2019年までしか確認できなくなっています。   つまり、noteに書かれた記事は現状、誰かが明示的にSave Pageしない限りどこにもアーカイブされない状態になっています。noteから消えた記事をWayback Machineで掘り出すことは、ほぼできないと思っていいでしょう。ウェブ考古学的に憂慮すべき事態。まあ、noteが存続している限りは問題ないのですが。 ◆ 「買ったはずの作品」がプラットフォーム側の判断によって視聴不能になる時代 “所有の不在”という構造的リスク アクセス・ベース時代の所有の行方〈TBS CROSS DIG with Bloomberg(2026年2月22日)〉   https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2463815   Rakuten TVの所業から、後半はKindleに飛び火しています。昔からよく言われている「消える電子書籍」問題です。あえて「直営ストアで配信している立場」で言わせてもらうと、NFTによる疑似所有権も試したし、DRMフリーに切り替えての配信もやっていますが、そのことについてなにか言及してくれたユーザーを残念ながらほとんど見たことがありません。   あるいは、文フリなどの即売会では紙本購入特典で電子版無料ダウンロードカードを配布していますが、実際に使われる率はとても低いです(0円販売の通知が来るから使われたらすぐわかる)。なにか事件が起きたときに騒ぐ層がいるのは間違いないのですが、その要求に応えたところであまりメリットを感じてもらえていないのが現状、というのがいまのところの実感です。   ところで、映像ソフト市場って最近はあまりウォッチしていなかったんですが、推移グラフがコミック市場とほぼ同じ形なのですね。面白い。タイミングもよく似ています。どちらも2020年コロナ禍を境に、急に配信が伸びている。コンテンツ消費の手段が根本的に変わってしまった感がありますね。   ***   本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。   https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja   *** その他のお知らせ Readers   HONꓸjp News Blog をもっと楽しく便利に活用するための登録ユーザー制度「Readers」を開始しました。ユーザー登録すると、HONꓸjp News Blogの記事にコメントできるようになったり、更新通知が届いたり、広告が非表示になったりします。詳しくは、こちらの案内ページをご確認ください。   https://hon.jp/news/readers 日刊出版ニュースまとめ   伝統的な取次&書店流通の商業出版からインターネットを活用したデジタルパブリッシングまで、広い意味での出版に関連する最新ニュースをメディアを問わずキュレーション。FacebookページやX(旧Twitter)などでは随時配信、このコーナーでは1日1回ヘッドラインをお届けします。   https://hon.jp/news/daily-news-summary   *** HON.jpについて   NPO法人HON.jpは、本(HON)のつくり手をエンパワーする非営利団体です。「HON.jp 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